Wiiの広告

秋葉の駅にWiiの広告ポスターがいっぱい貼ってある。

あのポスターを見ていると、ゲームにあまり興味のない私も「Wii買ってもいいかな」という気にさせる。と言うのも、あのポスターを見ると、

ゲームしている人達が楽しそう

だからだ。実際にどうだか知らないが、あのコントローラを握ってアクションしている様を見ると、十字キーが苦手な私でもコントローラの操作が簡単にできそうだし、ゲームのリアリティも高そうだ。そんなことを、あのポスターはイメージさせてくれる。

PS3の広告は残念ながらあまり見たことがない。まぁ私がテレビを見ないせいでもあるが、秋葉の駅でも見掛けた記憶がないので、あまり大々的ではなかったのかも知れない。その代わり、メディア上のPS3の広告はたくさん見た。

PS3の広告は、たいてい「ものすごいスペック」の列挙、あるいはその「成果」の列挙である。「どーだこんなに凄いんだぞ」というメッセージばかりで、「PS3はこんなに楽しいよ」というメッセージは皆無だ。

久多良木氏は、「PS3は単なるゲーム機ではない」「PS3の高いパワーは生活をこう変える」というメッセージを送り続けていた。しかし、「PS3の広告」ではそれは皆無だ。「ゲームじゃない」「リアリティが大事だ」というのであれば、そういったメッセージを含んだ広告、たとえば「画面上の波を見ていたら、お茶の間が波で水びたしになった」みたいな広告があっても良いと思う。

この傾向は他の世界にもあって、白物家電メーカの広告というのは、総じて「商品のスペック」は付け足しで、「その商品があると、こんなに生活が楽しくなります」的なものがほとんどだ。逆にAV機器の広告は「こいつのスペックはこんなに凄いんだぜ」がほとんどである。

マスメディアの広告では、だいたいに「こんなに楽しくなります」の方が、潜在顧客へのウケがいい。レストランであっても、「こんなに凄い食材の料理です」とやるよりは、「こんな楽しい一時が過せます」とやる方がいいのだ。それを「つかみ」として、「じゃあ考えようか」という段階になったところに、「スペック」の意味がある。まー、その時には「広告」ではなくて「カタログ」を取り寄せているはずだが。

白物家電は成熟してしまっているので、「スペック」で競うことは難しい。もちろんスペックも大事であるし、技術者は日々それを向上させるべく頑張っているはずであるが、スペックそれ自身で競うことは難しい。「デカい冷蔵庫」というスペックを出しても、「うちそんなにデカいのいらんし」と言われればそれまでであるし、「電気食いません」と言われても、よく考えてみれば(=スペックを気にする段階になれば)大した違いではない。

逆に白物でない家電は、いまだ成熟していない。だから、スペックは「良ければ良い程いい」ものである。HDDレコーダが容量を競ったり、デジカメが解像度を競ったりするのは、そういったことだ。

と言った事情があるので、白物とそうでないものとの広告手法は違う。SONYは非白物の家電メーカだから、その手法を使っただけだろう。

とは言え、Wiiの方は「買ってもいいかな」と思わせるものがあった。「スペックなんかゲーム機にとってどうでも良くって、楽しさが一番大事だよな」と思わせられた。逆にPS3の方は「で?」としか思わなかった。長期的にはどうなるかわからないし、ゲーム機は白物ではないわけではあるが、「つかみ」としてはWiiの圧勝と言っても良いだろう。