自然エネルギーをちょっとフェルミってみる

原発があーだこーだってことで、「反原発厨」やら「自然エネルギー厨」がわいてる。

原発云々については、ここではあんまり言いたくない。事情は察することが出来る人はわかってちょうだい。

ただ、「原発止めて自然エネルギー」とかってのは無邪気だなーと思う。計算してみりゃそう簡単じゃないことはすぐにわかる。「節約すれば」とか言うのも、なんつーか

欲しがりません勝間勝つまでは

的なものを感じて嫌だ。

でも、ふと気がついたことがある。

自然エネルギーの問題は不安定であること。また、電力は容易に貯められないから、その不安定さを吸収するのは容易ではないということだ。だから、自然エネルギーにすればいいんだ的な意見は、ちょっとなぁと思う。

でもあることに気がついた。何に気がついたかと言えば、

ダム湖はデッドスペース

だってことだ。もちろんこれにはいろんな見方があるけど、産業的には何も使われてないってことで。だったら、

ダム湖に太陽電池並べちゃって太陽光発電

したらどうなんだ? とゆーことだ。ちょっと計算してみる。

太陽光のエネルギーが1m^2あたり1kWで、太陽電池の効率が15%くらいらしい。ここでは簡単のために、1m^2あたり100Wってことにする。

黒部ダムの黒部湖の面積が、349ha。349ha = 3.49km^2 = 3.49 x 10^6 m^2

とゆーことは、ここにびっしり太陽電池を並べたとすると、

349 x 10^6 W = 349 MW

の発電が期待出来る。

ちなみに、黒部第四発電所の最大出力は33万5000kWらしい。つまり、335MW。ってことは、実は

ダムの水力発電量と、ダム湖に太陽電池を並べたのは、
だいたい同じくらい

って計算になる。まぁもちろん全面びっしりなんて無理だけど。

で、なんでこんな計算を思いついたかと言えば、

発生した電力を揚水に使ったらどう?

ということから。

揚水に使うのであれば、「不安定さ」は問題にならないし、「電気が貯められない」って問題にはならない。また、既に発電所があるんだから、送電設備は新設しなくていい(太くするだけ)し、水力発電所として系統接続している… ってことで、とりあえず自然エネルギーにある問題は、効率のことを除けば全部解決出来る可能性が高い。

これはまぁ単にフェルミってみただけの話で、これでどうこうってことはないんだけど、まぁ一つの可能性ね。「砂漠に太陽電池並べて日本まで直流発電」とかよりは、ずっと現実的じゃね? 何しろ、今ある技術だけで実現出来るんだから。コストやら効率やらでつっこみどころは沢山あるだろうけど、

つっこめるだけのリアリティがある

わけで。

PS.

書いてる途中に教えてもらったんだけど、こんなことはやってるらしい。

山口県宇部丸山ダム・貯水池内

PS2.

つっこまれる前に書いとこう。

「黒部ダム」に関して言えば、「揚水発電」はそのままでは無理。そもそも、揚水発電に使える水車じゃないし、そんな設備にもなってない。だから、「今すぐ」なんてのは無理ね。もっと落差の少ないダムでないと実用的には難しい。

ただこれも、やれば出来るレベルの難しさであって、「軌道上で発電して」みたいないまだ実証実験すら出来ないものとか、「犬吠埼沖に風車」みたいな途方もないものとは、難しさのレベルが違う。

自然エネルギーをちょっとフェルミってみる” への11件のコメント

  1. 坂下です。お久しぶりです。
    ダム湖面を利用すると近くに送電網もあり、有効な気がします。あ、でも、既存の送電網を使うとなると直流-交流変換をしないと。大規模な太陽電池を利用した発電所は、どうしているんでしょうね。
    あと、辺野古などで検討された桟橋方式やメガフロート方式の滑走路では、水面下に届く太陽光が減る、そのためその下の生物に影響があるという問題があったと思います。
    この間どこかで見ましたが、休耕田に太陽電池を設置すれば?という話がありました。こちらは、電力送電網への接続が問題になるかも。

  2. どもども。送電網をそのまま使うんじゃなくって、太陽電池は揚水に使うのです。そしたら、変換もしなくていい。システムの効率は70%くらいになるようですが、どうせ直交変換も効率100%ではないし。
    ダム湖はいろんな意味でデッドスペース扱いで、「その下の生物」についても、オマケみたいなものだから、あんまり考えなくても良いかなと。逆にアオコの発生が減るとゆーメリットはあります。
    休耕田とかだと、一応それで生態系あるし、電力の設備はまだないし、そもそも電力会社の土地じゃないってことを考えると、まずはダム湖を有効利用することじゃないかなと。

  3. ちょっと考えました。
    湖面に浮かべると保守や故障時はそこだけ切り離して(そんなふうにできるかは知らないができそう)、どこかに引いていって整備ができるから意味があるなぁ。
    でも湖面が下がることで、面積が減ることもあるから、たとえば早明浦ダムみたいなところは、浮かべるのはむつかしそう。
    となると、湖面の上に構造物を使ってその上に設置するのがよい?
    となると、保守用のキャットウォークが設けられるからよいが、地面上に設置するときよりかなり費用がかかりそう。
    揚水用の設備の新規建設ってどれくらいの費用かかるんだろう…。

  4. 船とゆーか、筏みたいなのに乗せるってことになるのでしょうね。そうすれば、浚渫で邪魔になる時は避けとけばいい。
    別に湖底に乗ってるのでも構わないから、早明浦ダムみたいなところでも大丈夫かなーと。
    「揚水用の設備の新規建設ってどれくらいの費用かかるんだろう…。」
    とか考えられる程度には現実的ですよね。

  5. 揚水って夜間に水をあげてピーク時に落として発電しているアレですよね。
    太陽電池だと、暑くて電力が一番必要な時間帯に発電のピークを迎えるので、揚水に使おうとすると、発電が必要なタイミングとずれちゃいませんか? なんか頭が硬い?

  6. あれは深夜に電気が余るから、その分貯めてるわけです。太陽電池は昼間しか発電出来ないので、「いつも」を期待すると電気貯めとかないと困るから、揚水して貯めようと。もちろん一番の需要期の「夏の昼間」だけ期待するなら、別にそのまま流しちゃって構わない。
    まぁ要するに「自然エネルギーは密度が低く不安定で云々」の類への反論のための計算です。

  7. ダムはV字谷をせき止めて作りますので、日照時間がかなり短くなり、設置するには効率の点からいって適さないと思います。

  8. ちょっと計算してみれば、そんなことないし、日照時間があまり期待出来ないところ(定常的に木陰になる場所)には、最初から電池置かなきゃいいだけ。
    フェルミでいいから計算してごらん。「思います」じゃなくってさ。

  9. 微妙な立場の太陽光発電システム設計者(副業)です。初めまして。

    おごちゃんの提言は非常に有用ですが、ちょっと以下をお読みください。話を簡単にするために、この水力発電所は需要に対して100MW送電する必要があり、設置した太陽電池は10MWだとします。

    おごちゃん案は、水力で100MW発電して需要先へ送電し、太陽光で発電した分は揚水につかってその分、ダムの保有水量を確保しようと言うことだと思います。発電電力を水量で保存しようという考え方ですね。でも、揚水のための設備が必要になるし、電力→動力→位置エネルギー→動力→電力と変換が必要になります。各変換毎に効率というものが存在し、どんどん目減りします。また、新規に設置した設備にはメンテナンスがつきまとい、コストとして出て行ってしまいます。

    で、考え方を変えて、太陽光で発電したものは通常通り送電線へ連係して需要先へ送ってしまうものとすると、水力でまかなう分は90MWで良くなります。と言うことは、その分ダムの保有水量を確保できるので揚水して還元するのと同義になります。で、ここではややこしいエネルギーの変換をしなくても良いので損失は最小ですみます。実際には、太陽光の不安定な発電に対して水力で適時細かい容量制御は出来ないと思うので、現実的な案ではないですけどね。どっちみち送電はこの水力発電所で完結していることはあり得ないので、不安定にふらふらしてる分は他の火力発電で制御してもらうものとしましょう。

    と、ここまで考えると、実は太陽光発電はこの送電系統に繋がってさえいれば(つまりは管轄する電力会社のどこかの電線に繋がってさえいれば)どこに設置しても良いと言うことに気がつきます。要は水力を90MWに減らしさえすればいいのです。わざわざ設置しにくいダムの上に置くこともない。メンテもしにくい。と言うことです。おごちゃん案は「死地を有効活用する」という意味しか無くなりますね。ただ、それも非常に大事なことだと思いますけども。

    ちょっと否定的な結論にしてしまいましたが、大切なのはみんなで考えることなのかな?とは思います。専門家面してふんぞり返っていると大事なことに気づかなかったり、重要な事をスルーしたりしてしまうので、専門家以外の人がたまに鋭い突っ込みをして頂けるのは非常に有り難いですし、必要なことだと思います。これ書いててそう感じました。多分こんな案件有ったら真剣に検討しますよ。実施前提で。

  10. というつっこみが出来ることが、まず第一に大事なのです。
    世の中にあまたある「メガソーラー」の話は、「土地どうするんだ」という意味で、絵空事でしかないので、つっこみすら出来ません。でも、この話は「効率がどうとか」って部分でつっこめます。「休耕田」なんて話がありますが、それとて借地なんですから、賃貸料は原価になります。でも、ダム湖の上って賃貸料を考えなくてもいいし、用地の交渉をしなくていい。
    世の中の(日本の)「メガソーラー」話って、頭にお花畑のある人か、「ほーら無理でしょ」と言いたい人が言ってるものだと思ってます。だって、現実的な計算出来ないんだから。
    「水力の送電を減らせば同じこと」とありますが、揚水発電と違い日中の電力に使えます。また、ピーク時にはプラスに使えます。また、系統に繋げる必要がないので、いろんなことが自由に出来ます。
    こういったことには、「リアリティ」が必要なんです。リアルなことなんだから。

  11. こんにちわ。仰るとおりです。まず検討に値するかどうか、というところから始めないといけないのは太陽光発電固有の問題です。しかも所謂、「箸にも棒にもかからない」案件の多さは異常です。8割方そんな案件だと言っても言い過ぎではないですね。大規模な物件は産業用という分類をされて家庭用とは違う扱いをしているのですが、太陽電池を設置する架台はオーダーメイドになり、それ用の基礎なんかも作らないといけないので家庭用と比べると割高になります。家庭用が補助などの恩恵をうけて8-10年でペイできるのに対して、産業用はペイするのに50年とかのレベルになります。だから経済的な面ではそもそも成り立っていないのですね。土地の心配をしなくていい状況でそれなんですから、土地の確保なんかしてたら成り立つわけがないです。私個人の考え方ですが、上で書いたように電線に繋がってさえいればどこに置いてもいいわけですから「まとめて沢山置く」必要は全然無くて、分散していろんなところへ置けばいいわけです。家庭用は経済的にペイするようになってきたんですから、家庭用を増やせばいいと言うことです。細かい説明は省きますが、家庭用は電気を売るときに42円/kWhで売れますが、産業用は精々9-12円/kWhの価値しか有りません。産業用は経済性以外の価値があると思っているので存在を否定しているわけではありません。誤解無きよう。
    それと独立電源の自由度が高いという記述がありましたが、連系してしまった方がシステムとしての自由度は比べものにならないくらい高いです。長文になるのであまり書きませんが、100kWの太陽電池で100kWのポンプを動かすことは出来ません。ポンプは定格の2~3倍の突入電流が流れるからです。その分太陽電池の数を増やして対応したとしても動くかどうかやってみないと判りません。連系してしまえば起動時に突入が有ってもその分商用側から流れてくれるので、運転できます。天候に左右されることも有りませんし、太陽電池で発電された電力は100%利用することが出来ます。独立型だと精々30%位しか利用できません。

コメントは受け付けていません。