どうせ大勢つっこんでるんだろうけど。

「食糧危機」をあおってはいけない

言いたい趣旨には賛同するのがけど、

地球が温暖化すれば、食糧生産は増える。

この一言で全てがどっちらけだ。自ら妄言吐きだと白状したようなものだから。

「地球温暖化」と「局地的温暖化」がイコールでないことは、自然科学のイロハがわかった人にとっては当たり前のことだろうと思う。「地球温暖化」というのは地球レベルでのエネルギー収支の変化であり、局地的な気候の変化のことじゃない。たとえば、日本で暖冬にだからと言って、それは地球温暖化と関係があるかと言えば、そうとは限らない。地球が温暖化したことにより、局地的な気候がどうなるかということは、計算してみなけりゃわからない。局地的な気候というのは、太陽エネルギーそのものではなく、いろいろな物理現象が複合した結果だからだ。太陽エネルギーを元に風や海流が起き、その量や向きによって気候が変化する。「地球温暖化」はヤカンを火にかけるのとはまるで違う現象なのだ。ヤカンに氷の塊でも入れると、もうちょっと近くなるけど。

「食糧生産」となると、もっと複雑になる。気温が高くなれば生産性が上がるという単純なものじゃない。降水量が変化したらどうなるか、風向風速が変化したらどうなるか、また温暖化すれば日照も変化する。小麦なんぞは収穫期に雨が降るとそれだけでダメになる。「気候」に関係があることだけでも、すぐこれだけのものが挙げられる。気候のトレンドが変化すれば、当然農業は変化する。

さらにそこに「人の思惑」が絡むともっと複雑になる。「トウモロコシの値段」のことは記憶に新しい。そういったことがあるからこそ、「食糧危機をあおってはいけない」のだ。実際、食糧はカロリーベースでは既に十分で、今や分配の問題だけだという話もあるくらい(ググってみて下さい)。

この手のことは、ちょっと数字を引っぱって来て、ちょっと論理的に考えてみればすぐわかることだ。そういった「ちょっとした論理性」すら欠如している人が、マトモなことが言えるかと言えば、少なくとも「科学」としては否定的に思える。まぁ「下手な鉄砲」的に好き勝手な妄言を重ねれば、いくつか当たることもあるだろうが。

ちょっと前に、小飼氏が

こら!たまには実証しろ!!

とか書いてたんだけど、件の一言はこういった「実証」以前だ。

小飼氏のエントリを見ても思ったのだけど、日本の経済学者という人種は、数理モデルを組み立ててシミュレーションしてみるとか、それ以前の「論理的な構成」ということを考察したり検証したりする習慣はないんだろうか？ そういったことなしに、「理論っぽいもの」を吐かれても、それは疑似科学とか妄言の類と大差ないと思うんだが。どうも、実験や模擬実験が当たり前の世界にいた人間からすると、「なんだそりゃ」なことが多過ぎる。小飼氏のエントリのコメントにも、「(マクロ)経済学は実証が困難」で思考停止してる人ばかり。「実証が困難」なら、基礎方程式を立ててその正当性を評価して… ってやればいいのにと思うんだが。「ビッグバン」や「銀河衝突」あるいはそれこそ「地球温暖化」なんてのは、「実証が困難」だからこそ、いろいろモデルを検討して研究してるわけなんだけど。それとも、それはとんでもなく難しいからということで、その勢いで論理的思考を停止してるんだろうか？

もっとも、私が直接関わったことのある「経済学者」達は、見事なくらい数学や論理を駆使して結論を導き出していた。残念なことに、そういった論理的に素晴しい研究も、「妄言系」の学者達にいろいろいじめられていたようだけど。

PS.

小飼氏のTBでわかったのだけど、件の「妄言」は単なる受け売りなのね。

本の方の「降水がわからない」ってのも、かなり致命的なことなのだが。その辺が問題だからこそ「地球シミュレータ」みたいなのが必要なわけで。

PS2.

「増えるよ」という反論があるようだけど、それ↑の反論にはなってない。それはあくまでも「仮説」に過ぎないからだ。「現状はどうとも結論づけられない」というのが、誠実な答えのはずだ。

1度の上昇と2度の上昇は、単なる単調増加でもない。気候変化や、それに影響を受けた農業の変化は、非線形現象そのものだからだ。もちろん「考えてもムダ」的な思考停止も勘弁だが。