無闇にGoogleを勧める愚かさ

Googleにネガティブなことを書くとアンチが湧いてウザいんではあるが。

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もう盆と正月とクリスマスが一緒に来たかのようなおめでたさだ。

私がGoogleを使うのは、検索と地図くらい。一応Gmailのアドレスは持っているけど、「使っている」という程じゃない。基本的には捨てアドよりちょっとマシな程度にしか思ってない。ストリートビューは最初は面白がっていたけどそれ程使いでがないし、ドキュメント関係はまるっきり使っていない。それには当然理由がある。

Googleのサービスのタチの悪いのは

こちらが客ではない

ということだ。利用するのに契約はないし、私がユーザであることそれ自体はGoogleにとっては何のメリットでもない。「来る者拒まず」ではあるけど「去るもの追わず」でもある。お互いに何の約束もないから、Googleはサービス永続性について何の責も負っていない。

これは初期のFLOSSとよく似ていて、いわゆる「無保証」なのだけど、GoogleとFLOSSには根本的な違いがある。それは、「Googleのサービスを補完する自助努力が事実上出来ない」ということだ。

たとえば、Gmailをメインのメール環境にしたとしよう。Gmailがいつまで続くかわからないし、事故で使えなくなったり(先日あったみたいね)、事故でメールが飛んだりする。これを回避しようと思えば、Gmailに来たメールを他のサービス、たとえば他のメールサービスや自前のメールサーバに転送したりということになる。ところが、それをしてしまうとGmailを使うメリットのかなりの部分がけし飛んでしまう。折角Gmailが便利なのに、わざわざ不便なサービスを併用することになって、結局他のサービスと同じ程度かそれ以下の便利さに終わってしまう。

これがFLOSSであれば、「自分でサポート」するコストをかけてもフルスクラッチでそれを作ることよりも楽だとか、売り物を買って来るより安いということになって、

メリット > 手間

にすることが出来るのだけど、Gmailはそうはなってくれない。代替のものを代替として機能させようとすると、代替のものの手間がそのまま加わってしまう。今やメールの処理のかなりの部分がspam処理になっていると思うんだけど、他のサービスがGmail並のspamフィルタを持っていてくれないから、手間がかなり増える。

これがGmailを主力としないで、「自分のところに来たメールのうち一部をGmailに転送する」という類の使い方をしていれば、Gmailのメリットは活かせる。でも、「Google原理主義者」はそれは好まないようだ。劇的に便利にはなるけど、劇的なコストダウンとは無縁だしね。

Gmailにもエンタープライズな契約はあって、そっちの方ならここで書いているような心配はないはずだ。「はずだ」と強調するのは、Googleってのはビジネスがダメダメで、ビジネスの常識が通用しないからだ。まぁそれはいずれ改善されるだろうから、そっちはそんなに心配しないんだが。

これは、Googleに限らず今流行りの「無料ファイル預りサービス」も同じで、結局バックアップは自己責任とかになってしまうと、代替手段を用意しなきゃいけなくなってしまって、あまりメリットが引き出せない。まぁ手元にしかないファイルをどこでもアクセス出来るようになるのは便利だから、そういった便利さは意味があるのだけど。

「安心して使える程度」の信頼性を他のものを使って確保しようと思うと、意外にコストがかかる。遊びのものであれば、多少の信頼性低下は我慢出来るからうんとコストダウン出来るけど、仕事となるとそうも行かない。手形が落ちないのをGoogleのせいにすることは出来ないだ。

FLOSSにも同じようなことがあったのだけど、それは前述のように自助努力のコストを下げることも出来たし、「サポート業者」なんてものを使う手もあった。ところが、Google(やそれに似たもの)のそれにはそういったことが出来ない。Gmailのように十分ビジネスになったものは「有料オプション」という手もあるのだが、ドキュメントサービスのようにいまだアルファバージョンみたいなものはそうも行かない。

そんなふうな「隠れコスト」はネットサービスには意外なほどある。遊びなら十分な信頼性があるものであっても、仕事には信頼性が足りないものは少なくない。その信頼性を確保するにはコストがかかるのだ。特に「有料オプション」で解決がつかなかったら、結局は何らかの代替サービスをバックアップとして必要としてしまったりしかねない。

そういった「隠れコスト」のことを抜きにして、「Googleマンセー」とやってしまうのは、無責任の謗りは免れないと思うのだが。

無闇にGoogleを勧める愚かさ” への8件のコメント

  1. Googleデスクトップが世に出た直後、職場でこれは便利と使っていたがすぐに社内の情シスから、「脆弱性が無いことを保証出来ないソフトウェア」として使用禁止になったのを思い出しました。
    Googleデスクトップに穴があって、機密情報が第三者に渡っても誰も責任を取ってくれる訳でもないですし、言われてみれば当然ですね。
    確かに、Googleを盲目的に信仰するのは危険と思います。

  2. その理由もどうかと思うのですが、「保証」はなくても「検証」くらい出来ても良いと思うのです。タダなだけじゃダメで、オープンソースでなきゃ困る。そうでなかったら、「サポート契約」をGoogleとの間で結べなきゃ困る。

  3. 大学でGoole Mailを使っているところがあって、とても心配です(人ごとながら)。

  4. あれは「契約」してるんで大丈夫じゃないんですかね。今はダメでも、きっとそのうち良くなる。

    個人ベースでも「契約」することが出来ればいいんですがね。

  5. > Googleってのはビジネスがダメダメで、ビジネスの常識が通用しないからだ。まぁそれはいずれ改善されるだろうから、そっちはそんなに心配しないんだが。

    これ、ほんとかなあ、と疑ってます。
    もう何年もやってるはずのGoogle miniとかびっくりするくらいのダメダメな出来と契約内容ですし。

  6. でも、いつまでもビジネスがダメダメだったら沈没するしかないわけで。それはそれで困ったことです。

    現状ダメダメというのは、同意する人多数だとは思います。

  7. > 大学でGoole Mailを使っているところ

    私の常駐先ですが…
    担当者が打ち合わせに行くとき、関係ないミーハーなエライ人がGoogle本社見たさに何人もついていったのにはあきれましたが、さすがに「契約」はちゃんとしてます。
    契約を結ぶにあたって「Googleがつぶれたとき」のこともいろいろ想定している様子です。
    マスコミがもちあげてるのを鵜呑みにしている人なんて、実はそんなにいないのでは。

  8. 書いてるように「契約」のあるものであれば、まぁ問題はないだろうし、あっても解決可能なわけです。

    > マスコミがもちあげてるのを鵜呑みにしている人なんて、実はそんなにいない

    そんな人のことを、「グーグル・フォビア」と呼んだりするわけですね。

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