あるあるー

第8回 「Microsoftのバグ」との戦い

あるあるー。こんなエンジニアいっぱいいるー。

エンジニアでなくても、アンチMSな人達にはいっぱいいる。

まぁなんでMSがこんなことを言われるようになったかは、要するに日頃の行動のせいなので、ある意味自業自得ではあるんだけど。でも、なんでもかんでも「MSのせい」にしちゃう人っていっぱいる。「お前が言うな」って言われそうだけど、こういったのってダサいなーと思う。

件の記事はエンジニアについてなんだけど、エンジニアに限らずMSのことを悪く言いたがる人は少なくない。そりゃまぁこれもかなり自業自得ではあるんだけど、何でもかんでも「MSのせい」にしちゃってると、「実はそうではない」って証拠が出て来たり、MSが登場しないシーンの時に困っちゃうよ。

かなり前、私がまだLinux協会の会長だった頃。あるパネルに呼ばれた。文教ユーザが多いところだったと思う。他に誰がいたか覚えてないんだけど、MSの人と一緒だったことは覚えてる。で、会場にマイクが回った時に、まるで集中砲火としか言いようがないくらい、MSの悪口を言う人達が続くわけ。でも聞いてると、

「それ別にMSのせいじゃねーじゃん」

なつっこみが続くの。で、MSの人がいろいろ答えるんだけど、「お前が言うな」状態なわけ。しょうがないんで、私が「それ別にMSのせいじゃないですし」「悪いのMSばかりじゃないですし」とかって弁護させられるハメに。

確かにMSっていろいろアンフェアなことをやってシェア伸ばした部分はある。だけど、たとえばOSに関して言えばWindowsに代わるPC用のOSがあったかと言えば、そんなもん事実上存在してない。あるいはExcelに代わるような優秀なスプレッドシートがあったかと言えば、そんなもん事実上存在してない。Lotusはどーしたって? あんな低品質なソフトじゃ話にならんでしょ。

確かにMSのプロダクトよりも「もうちょっとマシ」なものとか「もうちょっとでマシになる」ものはないわけじゃない。だけど、「もうちょっとマシ」なものは馬鹿高いし、「もうちょっとでマシになる」ものは今は使いものにならない。消費者が価格と仕様に納得出来て、妥当だと思うものってのは、あの当時は事実上MS製品しかなかったのだ。つまり、MSの独占ってのは、MSが良くないことをしたとかよりは、

他社がふがいない

結果だったと理解している。「独占」だって、そりゃ市場を取れば独占する方向に流れるのはどこの会社でもあること。別にMSばかりがやっているわけでもないし、少なくとも経営としてはそっちに行くのはある意味当然だ。むしろ、独占独占と騒ぎ立てることで、MSをATM代わりにしているEUの態度の方がどうかと思う。

というのが私のMSに対する見方。だから、件のパネルの時にいろいろあった、「独占が悪い」だの「品質がどーのこーの」だのってのは、別にそれはMSに文句言うべきもんじゃないのと思ったわけ。あげくに、「だからいろんなソフト会社が潰れた」みたいなことを言われると、

蒸気機関車のせいで馬車が失業した

みたいなことを言われているような気がする。だって、たいていの潰れたソフト会社ってのは、もう企業として寿命が来てたところが少なくないんだから。「寿命って?」と言われるかも知れないけれど、それは経営者が製品よりも自分の生活の方を優先しちゃうようになった時点で寿命でしょう。従業員はまだしも、経営者が慢心して会社がいつまでも続くほど甘い業界じゃないんだから。

まーそんなわけで、別にMSは生き残るべくして生き残って来たんだし、市場を取るべくして市場を取って来た。安かろう悪かろう的なところとか、約束を守らなかったとか、いろいろな問題があってその結果「MSのせい」にしちゃえばOKみたいな風潮を作ってしまったけど、MS自身はちゃんとやって来たいい会社だと思う。

もし、「MSのせい」にしたいことがあったら、そこで「もしMSがなかったら」って思考実験してみるといい。案外MSがあるとかってのは関係なく、「なるべくしてなった」ことも少なくないから。そうやってどんどん「なるべくしてなった」ことを除いた先にこそ、本当の「MSのせい」があるはずだし、そこに(あるとすれば)本当の病巣がある。「MSのせい」で思考停止しちゃうと、本当の問題が見えなくなっちゃうよ。

ついでに加えれば、これは「MS」でなくても、「誰でも納得しやすい言い訳の対象」は何でも同じ危険性がある。たとえば今時の「原油高」とかでもそうだ。わかりやすく納得しやすい言い訳を使って思考停止しちゃうと、問題の本質が見えなくなる。そりゃ「諦めるための言い訳」を探したいだったら「原油高」でも「北京五輪」でもいいんだけど、解決するべき問題がそれじゃあダメ。