日本の「IT技術」はまだまだ期待があるけど、「IT産業」はダメなんじゃないかって気がする

ひがさんのblogより。

モッチーの国際競争力という上から目線

いつもの通り、ひがさんの言うことには100%同意しちゃう。私が梅田氏に持っていた違和感ってのがわかった気がする。まーでも「評論家」って仕事はそんなものかなとも思うけど。

でも、やっぱりちょっと違うなって思うのが、「産業」についての期待。書いてある部分には同意するんだけど、「その向こう」にあるものがちょっと違うなと。

実際、ひがさんは頑張っていると思うし、羽生さんも頑張ってるなと思う。Matzも頑張ってると思うし、いろんな人達が頑張ってる。もちろん私も頑張ってる。だけど、それらの頑張りって、結局のところ

IT技術

への頑張りなんだよね。だから、私は「日本のIT技術」の未来については全く心配はしていない。どれだけ中国やインドのIT産業が栄えても、日本が我を忘れたりしないで自分たちの価値のことをはっきり意識していれば、日本のIT技術が衰退することなんて心配する必要はないと思う。

でも、正直なところ「日本のIT産業」は暗いんじゃないかって気がする。理由はいくつもあるのだけど、それをはっきりと感じるようになったのは、

Amazon EC2

だ。

身も蓋もない言い方をすれば、Amazon EC2なんて「単なる公開VM」に過ぎない。だから、サーバが余っているところだったら、「やろう」と決めるだけですぐ出来ることだ。いや、裏でいろいろ技術的なハードルがあることは想像に難くはないけど、「Googleの再実装」みたいなことと比べたらずっと簡単なはずだ。また、サーバが余っていなくても、それなりのタリフが書ければ、設備投資さえすれば出来ること。いずれにしても、「Amazon EC2」というサービスは

優れたコンピュータ技術の産物ではない

ものであって、「経営」とか「営業」に属する決断とか判断のものだ。何度も言うことになるけど、これは決して技術的にどうってことないじゃんって話じゃない。「経営判断」として「やる」と決める、あるいは「営業戦略」として「やる」と決めれば、後はちょっとした技術的ハードルを超えるだけの話でしかないということだ。つまり、技術的優劣が問題になるものではないのだ。

ニーズがあるかと言えば、あれだけ華々しい話を聞くんだから、多分あるんだろう。つーか、それを判断するのが「営業技術」って奴だろう。実際に既にサービス始めちゃったところがあるんだから、ニーズはあるはずだ。だから、「判断」するだけの商品だったはずだ。

こういった技術的にことさら高度でもない、それでいてある種の革命的なコンピュータサービスが日本のどこからも出て来てない。それどころか真似っこすら出ていない。それを思うと、「日本のIT産業」のどこに隙があるかということがわかるし、それは「日本のIT技術」のレベルの問題でないことがわかる。

ということを考えたら、もう「日本のIT産業の振興」とかってテーマで「日本のIT技術の育成」なんていらないんじゃないかとも思う。どうせ「IT技術」なんてのは遍在するもので、これからどんどん流通は活発になるだろうし、既に十分流通してる。個別の技術がどうしようもなく低いなんてことは既にない。でも、「日本のIT産業」に必要な「経営」とか「営業」の鋭さの欠如、あるいは「企画力」の低さは絶望的だし、「日本のIT産業」の振興の足を引っぱる一番の要素だ。だからIPAは「技術育成」なんてのはそれなりでいいから、「経営者育成」とか「営業企画育成」みたいなことをした方がずっと役に立つんじゃないか。

ダークスーツ着たヲヤジどもが「俺達の若い頃は」みたいなことを、未来ある若者相手に語ったりなんてのを思い出すにつけ、表題のようなことを思ってしまう。

じゃあお前はどうかって? 私は今はかなり本気で「Amazon EC2の向こう」について作業しているところ。

PS.

「経営」うんぬんと書いたけど、ここではもうちょっと遠くを見た「ビジョン」とか「理念」のレベルの話と言った方が良かったかな。一歩一歩進めて行くのも「経営」だったりするけど、「(遠くを指して)あそこにみんなで行こう」というのも「経営」で、ここの話はむしろそっちに近い。

PS.2

どうやらAmazon EC2は大赤字らしい。だったらなおのこと、問題点がはっきりしてしまう。それでも「やる」というのはまさしく「経営」の問題なんだから。

ついでに「書いてないことを読む」人が出た時の予防線として。いわゆる「ユーティリティコンピューティング」やら昔あった「腹貸し」はAmazon EC2とよく似ている側面があるけど、全く別物だ。そこは混同せぬように。

PS.3

ひがさんが期待通りの結論のエントリを書いてる。と言うか、それが当エントリの結論の一つ。だからわざわざ最後に自分のことを書いた。

NTTデータの黒船コンプレックス

ただ問題は、「世の中の9割はクズ」「淘汰されるものがなければ勝つものもいない」ということ。だから、同じ問題意識を持ってチャレンジする人がある程度以上いてくれないと、それが「業界」としては成功しないということ。「Google Amazon何するものぞ」という「馬鹿」が大量発生しないとね。