「人権団体」を弁護してみる

チベットの騒動はいろいろ気になるところ。

ただ、マスメディアとは別にネット、特に2ちゃんあたりから嫌中的チベット支持ばかり聞こえて来ると、ちょっと食傷してしまう。

なので、槍玉に上げられている「人権団体」を弁護してみる。

まず、これはあくまでもこれは「メディア」を通して見たことでしかないから、起きている騒動やその周辺の声もそれなりに眉にツバつけながら解釈しなきゃいけないことだ。人は伝えたいことを伝える性質があるので、情報の量や詳しさと実態が一致しているとは限らない。そして、もちろん伝えたいように情報は変質する。

とは言えあの騒動は、私の目には「中国によるチベット族の虐殺」のように見える。また、その見方は多分正しいんじゃないかとは思う。「民族自決」が現代の民族紛争を解決する基本だと信じるなら、漢民族はいらんことするなという考えは正しい。また、それを支持する人は少なくないだろう。

とは言え、

「正義」とは紛争の数の倍以上ある

ものなのだ。中国には中国の正義があり、ソフトバンクには孫の正義がある。

中国にとっての「正義」とは、「あれはチベット族の起こした内乱である」ということだろう。「国家」という考えで見れば、その見方に間違いはない。国家の安泰を考えるなら、その国家を構成する民族が独立するということは、不法行為に間違いはない。もしかしたら、チベット族が中国の政府を転覆させるかも知れない。「内乱」というのはそういった危険のあることなのだ。だから、中国の国家としての主張は、それはそれで筋が通っているわけだ。

そういった見方をする限り、「チベット支持」というのは「一つの考え方」に過ぎないことであって、絶対の正義じゃない。まぁそもそも何事も絶対の正義なんて存在しないわけなんだが。「デカい国なんだからちょっとぐらい見逃してやれよ」的な心情もあるだろうが、それは「宝くじに当たると親戚が増える」と似たようなサモしい根性と大差ない。「持てるものは減ってもいい」わけじゃない。持っているからこそ守らなきゃいけないのだ。

この「内乱」が拡大して、中国国家が転覆した時に出るであろう儀牲者の数を考えれば、チベット族が全部消えてしまった方が損害が小さい。つまり、チベット虐殺というのは、犠牲となる人権の数から言えば、肯定されてもおかしくない。

また、この「内乱」が中国全土に広まった時、それはチベットだけの武力による鎮圧と比べれば、はるかに大きな「戦い」になる。だから、防がれる戦いの数を考えれば、チベット虐殺は反戦的なのだ。

だから、人権団体や反戦団体が沈黙しているというのは、そんなに間違っていることでもない。守られる人権の数、防がれる戦いの数を考えれば、チベットが犠牲になる方が良かったりする。何しろこれは「内乱」なんだから。内乱はすみやかに鎮圧した方が犠牲が局所化出来るのだ。最近の人権団体は昔の批判で反省したのだろう。局所的な人権を守って全体的な人権を侵害してしまう結果になるような行動はしなくなったのだ。

とまぁ私が何が言いたいか察しのいい人にはこれだけでいいところなんだけど、つまらんことで騒がれても面白くないので、解答編。

以上の考察は、件の騒動を「中国の立場」から単なる「内乱」として見た時の話だ。「内乱」に過ぎなければ、とっとと収拾するのは国家の務めだ。しかし、これが「民族自決の権利行使」だとするなら、鎮圧してしまうのは「人権侵害」なのだ。どっちの立場で見るかは、どっちの立場に近い立場にいるかで決まる。つまり、「あれで黙っている人権団体」というのは、要するに「中国の立場にいる」ということになるわけだ。「いや、別に中国の立場にいるわけじゃない」と言うのであれば、そうでない立場を表明すべきだ。

まぁそうは言いつつもう1つだけ弁護しておくと、いわゆる反戦人権団体というのは、基本的に反米的活動をして来た。それはアメリカが好戦的反人権的な国の代表だったからだ。ところがいつの間にか「好戦的反人権的な国」に中国も含まれるようになってしまった。ところが、反米には歴史と伝統がある反戦人権団体は、反中に慣れていない。そもそも反米活動してどんな目にあうかとかは経験して来ているのだが、反中活動してどうなるかは未知なのだ。日本で反米活動しても何事もないが、反中活動したら謎の中国人に刺されるかも知れない。

そう考えれば、「慣れていないこと」はしない方が無難ではある。要するに、方針転換がうまく出来ない硬直化した組織であり、新しいことにはチャレンジ出来ないということになる。「いや、そうじゃない」と言うのであれば、そうでない行動をすべきだ。

あれ? 弁護してたはずなんだが…

「人権団体」を弁護してみる” への4件のコメント

  1. まぁあの国にはよくあること。

    日本人1人に10人の刺客がいても、まだ人が余る国だしなぁ。

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