虫の泣き声

表題は誤字ではない。

ここのところ暖かかったもので、不忍池の周辺を夜に歩いていると、虫の声が聞こえる。

虫の声が聞こえるということは、声を出すことの出来る状態がいるということだし、声を出すということは声を出す積極的な理由があるということである。気候の加減で孵ってしまったわけではなく、死にぞこないの虫が声を出しているわけだ。

だいたいに、虫の声というのは、繁殖行動かそれに関係する喧嘩とか、そういった類の時にするものである。

ところで、私は昔「スズムシ」をいっぱい飼っていたことがある。昔は、そーゆー遊戯が流行ったことがあるのだ。親戚からちょっともらって来ると、翌年にはいっぱい増えたりする。夏過ぎると、鳴き始める。

そのスズムシも繁殖行動が終わるとだんだん死んで行き、秋が深まるといなくなってしまう。翌年また孵って… を繰り返すのだが。つまり、繁殖に成功した奴等から死んで行くのである。つまり「リア充」な虫は死んでしまうのだ。

今の時期に鳴く虫は、結局のところ秋のうちに繁殖出来なくて、それがこの暖かい気候で「ワンチャン」求めてそれなりの行動に出ている時に鳴いているのではないかと思う。つまり、鳴いている虫達はみな、

童貞

なのである。

そう考えると、季節外れの虫の鳴き声は、童貞が身の不幸を泣いているように聞こえなくもない。