佐藤弁護士の「犯人は悪魔」発言について

遠隔操作裁判の諸々の総括については、もうちょっと暇になったら書くとして(月末までクソ忙しく、この週は2度徹夜している)、産経新聞の「捏造記事」のせいで、極東爺まで的外れなことを書いていたので、このことについて説明しておく。

「悪魔が仮面を被っていた」「見破れなかった」

この記事だが、これは「捏造」と言っていいレベルの記事だ。もちろん、佐藤先生の発言を切り取ったものなので、「言ったかどうか」という点では、「言った」に間違いはないのだが。

また、今後、彼の精神鑑定を求めるという話もあるのだけど、法律関係者の中でも「責任能力を争点にするつもりだ」的なことを言ってたりする。

いずれも

ミスリードや勘違い

に過ぎない。

当日の記者会見の様子はこっちにノーカット版がある。

これを見てから、件の産経の記事を見ると、随分と印象は違うと思う。ついでに、余裕のある人なら、「シャッター音」に注意するといい。マスコミがどんな「画」を求めているか。

この会見は5月22日。つまり、片山氏が逃亡して再び事務所に現れて、佐藤さんと片山氏は十分に話をした後。また、一度は解任という話のあった後、最後まで付き合うという話になった後なので、佐藤さんが何をどう考えていたかは別にして、もう彼を本来の意味で

悪魔呼ばわりする必要はない

はずである。彼の諸々を全て背負う覚悟をした後なのだから、今さら彼の悪口的なことを言う必要はないのだから。この会見でも、彼のことをいろいろ気遣っているのがわかると思う。

この「悪魔」は言うまでもなく、

悪魔の弁護人

で言うところの「悪魔」である。だから、そこの実在の「悪魔」は必要がない。そこに存在するのは「悪魔の弁護人」だけだ。

佐藤先生の立場から言えば、この時点では

なぜだ?

という思いが多いと思う。あれだけ無実を信じていた被告にいきなり「裏切られた」ようなものだから、その「種明し」を知りたいと思うはずで、それは会見の時の言葉の端々から感じられると思う。それゆえに、「あまのじゃく」なことを言って話をより鮮明にして行く「悪魔の弁護人」が必要だということだ(「悪魔の弁護人」とはそういう意味の言葉)。

つまり、件の産経の記事は、どういう理由からかは知らないけれど、「片山に裏切られた佐藤の怒り」的な話に持って行こうという誘導になっていることがわかると思う。そして、件のノーカット版を見れば、その誘導は間違いであることもわかると思う。

「精神鑑定」については、この会見でもわかるように、いわゆる「精神的にアレなせいで責任能力がない」的な展開にするためのものとしての要求ではない。これも「悪魔の弁護人」の仕事としての依頼に過ぎない。そもそも、精神的にアレなせいで云々という展開に出来るような話ではないことも説明されている。

「弁護方針」についてちょっと補足しておくと、今回の罪状はかなり無理筋なものが含まれている。たとえば、「脅迫メール」が「ハイジャック防止法違反」になっているとかいうことである。これは、Dropboxのログをもらうために、FBIに協力依頼を出すために必要だったわけなのだけど、いかにも無理筋だと思う。また、「4人の誤認逮捕」にしても、それは彼が意図してやったわけではない。いずれにしても、

事を荒立てたのは警察

だったりするので、そういったもが落ちつくべきところに落ちついてしまうと、

騒ぎの割には微罪

みたいな結果になってしまう。とは言え、彼の様子や佐藤先生の受けているイメージからすれば、彼には全く当事者意識が欠如しているために、その程度の罰であれば

反省なぞしない

ということになりかねない。いや、「騒いだ割には微罪」ベースでの罰じゃなくて、仮に死刑になったところで、事の重大さには気がつかないのではないかとさえ考えられる。それでは、彼も不幸だし、騙された佐藤先生も納得は出来ないだろう。そこで「優しい佐藤先生」は、彼に罪の認識をさせるために、そういった方針で弁護するということになった模様である。罪の意識なく死刑になるより、罪の重さを感じつつ妥当な期間の懲役になった方が、ずっと反省するはずだ。

まぁ、私も「冤罪の心証があるから」と言うよりは、「真相を知りたいから」という好奇心で関わって来たこともあるので、全てのことがわかるまでは、付き合って行こうと思っている。

PS.

江川さんもそうらしいw

PC遠隔操作事件を巡る自己検証

この事件は、サイバー犯罪という新しい事象を裁く裁判から、片山祐輔という今を生きる1人の青年の心の問題を問う事件になりました。これが彼特有の問題なのか、そうでないのかも含めて、真相に近づいていくためには、ますます多様な視点が必要になっていると思います。私も自分なりの視点で今後もこの事件を見ていき、折々で、またご報告もしたいと思っています。

多分、「片山氏側」でこの事件に関わった人達は、みんなこんな思いだろうと思う。