SIに限らず、「技術的な客商売」をやっていると、時として打合せの時に「簡単ですよね」という「挑発」を受けることがある。
それが実際に簡単であるかどうか、また相手が本当に挑発しているのかは別にしてこれは一つの「挑発」だと受け取った方がいい。なぜなら、あいての意図はどうであれ、そこにはいわゆる「罠」があるからだ。
多くの時「簡単ですよね」と言われたことは、実は技術的にはそんなに難しいものではないことが多い。また実際に難しくても、その現場にはもっと難しい問題が転がっていたりする。また、このような発言がされるタイミングは、議論なり整理なりがある程度進んでいて、顧客が先行きにある程度の見通しが立った時でもある。だから、結局のところそんなに難しいものではない。「簡単ですよね」と言われたものの多くは、実際に簡単だ。
ではそこで「はい」と答えたらどうなるか? 多くの客はその「はい」は受諾の「はい」とみなす。つまり、「簡単だって答えたんだったら、やってくれるよね」という意味だ。あるいはそうでないという釘を刺しつつ言ったところで、「簡単なものは依頼してもそんなに高くない(時間がかからない)」という解釈をされてしまう。
ではそこで「いいえ」と答えたらどうなるか? その客に技術があろうとなかろうと、「自分が簡単だと思っているものが簡単でないレベルの低い技術者」とみなす。つまり、「こんな簡単な問題も解けないんですね」という解釈をされてしまう。
つまり、「はい」と答えようと、「いいえ」と答えようと、あまり良い結果をもたらさない。だから、相手の意図がどこにあるかは別にして、これは「挑発」だと解釈するべきだ。
冷静に考えれば、こういった問いがされるタイミングは、技術的にはそんなに難しい問題を「簡単ですよね」と言われることはない。たいていは実際に技術的には簡単な問題であることが多い。そこで、私は
「はい。簡単です」
と答えることにしている。しかし大事なのはこの後で、
「しかし…」
と続く。多くの場合、その「簡単」なことは言われたままにはやれない事情があるから、出来るだけ断わりたい。そこを「難しい」なんて答えると馬鹿にされたようで嫌だから、「簡単」であることは肯定しておきたい。
じゃあどうするかと言えば、「出来ない理由」を続ける。それもわかりやすい理由、技術的でない理由だ。
「問題は量なんですよ…」
「たとえばですね。皿に載せた大豆を割り箸で他の皿に移す。これ、簡単で誰でも出来ますよね。じゃ、大豆が1俵あったら難しくなりますか? 難しくはないけど出来ませんよね」という喩え話を続ける。実際「簡単な問題」というのは、こういったのが絡んでいるから簡単ではなくなるわけで、本当にこんなものがないのであれば、さっさとやっておいた方がたいていは楽だ(実装に1日で済むものを1週間かけて蹴るのはナンセンス)。それがわかっていても出来ないのは、たいていは「量」の問題だ。簡単な修正だって打ち合わせやハンドリングが絡めば、なかなかに時間を食う。悩みに悩んでも1日、ぼけーと待っても1日だ。
あるいは、
「問題はタイミングですよ…」
でもいい。ちょっとわかった客だと、技術的に本当に難しいわけでもなければ、作業量も知れているだろうと判断した上で言って来ることもある。そういった時はこれが有効だ。後に続くのは「既に作ったところへの影響」なり「予定のカットオーバーへの影響」などいろいろある。
他には、
「現場はどうなりますかね?」
と問い返すのもいい。だいたい「納期」の類は「決算前」とかのタイミングになっていることが多い。ココロは簡単で「新年度から新システム」だ。これは営業的な都合、経営的な都合、現場の都合など、いろいろな都合があって動かせないことが多い。ここでいくら「簡単」なものを追加されても、「たった1日の作業でも1日カットオーバが遅れる」ことになる。また、打合せしようにも、現場は決算の類でテンパっているので、打合せをする雰囲気になかったりする。そうなると、いかに「簡単」であっても手が出せない。
そんなわけで、「簡単ですよね」という問いに「はい」と答えつつその「陰謀」を蹴る方法はいくらでもある。大事なのは、こういった問いは「挑発」の一種であり、必ず何か「余分な仕事」がついて来るということだ。その「余分な仕事」を避けるには、「技術的には簡単だけど実行するのは難しいと伝える」ことだ。
「技術的な製品」での問題は実は「技術的」でないところに多くあるのだ。技術的に簡単なものであっても、実行困難なものは少なくない。それを理解させるのも仕事のうち。
「簡単」なのは「質」なのか「量」なのかをとらえそこねて失敗するのはどの業界でもありがちさ。(-ω-)
確かに、1日でできる事は簡単ではあるけど、1日カットオーバーが遅れれば、大変な事態ですよね
最初の方だと、作業量が1日増えようが減ろうが大差ないんですけど、この手の言葉が出る頃の1日な1日ですからね。
発注側から言わせて貰うと、この手の言葉って作業後半で言った場合、おごちゃんの言うような言い方で返されるのが一番楽です。
「では作業日程以内でできるのはどの辺までですか?」とか「何日オーバーしたら実現できますか?」とか聞けるじゃないですか。
本来は途中でこの手の事を言うのは不本意なんですが、どちらかと言うと間に立って双方の言っている事を翻訳するような仕事につくことが多いんで……
「作るのは確かに簡単だけど、テストがこれの場合難しいんですよね」とかもよく使います
ピンバック: T/O
ていうか、現場を知らない上の人間にこれを言われるのが一番困る
難色を示すと能力が足りないだけだろうと言われる
実際それもあるかもしれないが、明らかに不可能なものまで何で出来ないんだと言ってくる
それでもやるしかないんだよなぁorz
だって睡眠時間削って就業時間延ばせば出来ない事は無いんだもの
でも十数時間休み無しで働いて睡眠2~3時間で毎日働かされて、1年に休日が10日も無い状況で簡単と言われるのってどうよ
俺の職場だけじゃなくて他にも沢山あるんだろうけどさ
あ、因みに立ち仕事で動きっぱなしでだぜ
申し訳ない
注意書きを読まずに名無しにしてしまった
確かに挑発ですね。
発注者としての立場で故意に何度か似たようなことを言ったことがあります。
その場合、こちらとしてはちゃんと切り返してもらった方が安心できるし、楽ですね。結構上との板挟みにされるのでそれが理由にできる。
あと、本当に技術的に簡単だと思ってるケースでも結構想定外の回答が帰ってきます。
足下見られているのならまだ良いんですが、先方に実は技術力が無いのが透けて見えるケースもあります。そういうところに依頼ださないのが最良なんで、次回以降の目をつぶすためにあえて・・・ってことはありました。