イカのワタ焼き

この季節には、イカが大量に市場に出ていて、安い。

安いのは旬だからで… と書こうと思って調べると、スルメイカの旬は夏と冬の二回あるらしい。回遊性もあるので、年中市場にある。ただ、夏のスルメイカは身が柔かだという違いがある。

旬のタコやイカは産卵期ということもあり、内臓が充実している(魚介類によって産卵期が逆に食えない季節なものも少なくないので注意)。特に肝臓の大きさは「腹の中ほとんど肝臓」という感じで、なかなか見事だ。流通のいいイカは新鮮なので、内臓を捨ててしまうのはもったいない。そこで料理ができないか思案する。

だいたいに肝臓は塩辛を作る時の味付けに使われるものだが、塩辛は作るのに時間がかかるので、今回はなし。塩辛も作ればおいしいのだが、甘塩にすると腐りやすいので、忙しい私には不向き。それに私は家で飯を炊くことがほとんどないし、酒もあまり飲まないので、食べる時がない。辛塩にすると、さらに御飯が必要なので、何にせよ塩辛という解決はない。

まぁそこで下足もあることなので、ワタ焼きにすることにする。

やることは簡単で、適当に掃除をしながら、内臓を刻む。あまり小さくしてもしょうがないし、大きいと食べにくいので、程々の大きさにする。下足も、他に使う予定になかったら、一緒に刻んで混ぜ込むといい。ワタ焼きは味が濃厚過ぎるきらいがあるので、下足を入れるくらいがちょうどいい。イカスミがあれば、これも一緒に入れてしまう。腸は除いておく方がいい。私は目玉が嫌いなので、これも除く。耳は下足と同じ扱いだ。

「ワタ」も刻むのであるが、これはまた板の上で刻むと汁が流れてしまうので、「器の上でハサミで切る」のがいい。台所によく切れるハサミを用意しておくのは、いろいろ応用ができるのでお勧めだ。

軽く混ぜて味見をする。ここで「ちょっと味が薄いかなぁ」と思ったらちょっと塩を入れてみてもいいが、その必要性は多分ない。焼くと水分が飛ぶので、その分味が濃くなる。また、海産物は元々が相当の塩分があるものなので、それを割り引かなければならないし、焼きものは水分が飛ぶということを計算しないといけないので、慣れないうちは余計なことをしない方がいい。

あとは適当に耐熱性のある器に入れて、グリルで焼く。そのまま焼くと焦げつくので、器にはアルミフォイルを敷くとか、油を塗っておくとかの工夫をするのがいい。

焼く時間は適当。元々、ワタが食えるようなイカは新しいわけなので、生でも問題ないくらいだ。だから、焼き過ぎは風味を落とすだけなので、避けた方がいい。見たところ「焼けた」という感じになっていればそれで十分だ。

出来たものは、イカワタの濃厚な味がして、酒飲みにはたまらんだろう。味が濃い過ぎると思えば、適当な野菜を混ぜて焼くのも良いが、野菜は火が通りにくいので、あらかじめ火を通しておくのが間違いがない。そうやって小細工するよりは、胡瓜のように味を薄める野菜を添えておく方が料理らしい。卵白で和らげるという手もあるが、それも余計な小細工だろう。

イカの身をどうしたかは、また明日。