江湖赤衛隊(オペラ) hong(2)hu(2) chi(4)wei(4)dui(4)
   (張敬安・欧陽謙叔作曲 朱本和・張敬安・欧陽謙叔・楊会召・梅少山編劇)
   (1959年初演)

●あらすじ●
共産党軍の活躍を描いた六幕のオペラです。「赤衛隊」とは,1920-30年代に革命根拠地で組織された人民武装隊で, 生産活動にも従事したそうです。まあ,専門の軍人ではなく,民兵のような感じなんでしょうか?
革命根拠地とは,革命の発祥の地の井岡山(湖南〜江西省の山岳地帯)や,長征先の陝西省延安などがそうですが, 毛沢東はあちこちの農村に「革命根拠地」を設けたということだし,湖北も湖南に近いのでそういうのが組織されたのかもしれません。

時は満州事変前年の1930年,湖北省(ベン)陽県の委員会は, 紅軍(共産党軍)と行動を共にするため,赤衛隊を彭家トン(土+敦)に撤収させた。 彭家トンを根拠とする白極会の彭覇天はこの機に乗じて赤衛隊に報復せんとした。
そこで,郷党支部の書記であるヒロインの韓英と,隊長の劉闖に率いられた赤衛隊はこれを迎え撃つ。 彭は恐れおののき,赤衛隊に密偵をはなつ。これは劉闖がしかけた計略により喝破されるが, 軍が危うい状態に置かれてしまった。そこで韓英は撤退する部隊を援護するため,自ら分隊長の王金標と ともに的に捕縛された。王金標はのち味方を裏切るが,韓英は最後まで屈しない。 敵は彼女の母に韓英を説得させようとするが,母子ともに脅しに屈しないと誓い合う。 そこで,敵は既に寝返った王金標を赤衛隊の遊軍に放ち,伏兵のいるところまでおびき寄せようとする。 韓英は,実は隠れ共産党員であった彭の副官の助けを得て抜けだし,赤衛隊のもとに帰還するや 裏切り者の王金標を倒し,作戦を展開して彭を見事滅ぼすのであった。

●音楽要素●
音楽的には,湖北省天(テンベン tianmian)花鼓戯 ・天門市・陽・潜江市一帯の民間音楽を素材にしているそうです。

陽の名は今の地図には見あたりませんが, 昔はここに役所が置かれていました。のち,江湖県となり,今では江湖市という名になっています。行政的には荊州市の行政区画内に 区分されます。もちろん,ここに「江湖」があります。
で,地図からは消えた陽ですが, その名は「陽三蒸」などの料理の名として残っているとか。

劇中にはまた襄河民謡「襄河謡」をもとにした二重唱「洪湖水,浪打浪」もあるそうとか。襄河は,漢水(水とも)の 中・下流部分の呼び名です。漢水は省都武漢市のあたりで長江に合流します。音楽的には「漢劇」という地方劇の四大流派(襄河・荊河・府河・漢河)の 一つでもあり,その中心はいまの襄樊市にあるそうです。

襄樊,私は1995年にいきましたよ! 諸葛亮フェチ(私は違うが)はぜひココと,対岸の河南省南陽市におもむいてください。 どちらも自分とこが孔明の潜伏の地と主張してますが,そのどちらにも揮毫している郭沫若の節操のなさが笑えます。

ちなみに,彭家トン(土+敦)ではないですが,彭家場なら仙桃市のなかにあります。

●ここから取られた音楽●
「看天下労働人民都解放」(二胡ソロ曲)閔惠芬編曲
・「江湖人民的心願」「江湖主題随想曲」としても知られていますが,もともとの題名はこれのようです。 これはヒロインの韓英が牢屋で歌う感動的なメロディ。最初は「おかあさんの涙・・・」で歌い出し, 非常に寂寥感あふれ,聞く人の涙をそそる哀切な曲。しかし後半は革命のために決心をかためて, 雄々しく朗々と歌い上げ,感動を一層たかめる設定になっています。

ほぼ全ての検定教材に取り上げられていますが,グレード分けには八〜十級と幅があります。 たぶん,精神性がどれだけ表現されるのか,ということに重きを置くと,十級という評価になるのでしょう。の
「小曲好唱口難開」(二胡ソロ曲)
多くのグレード試験のテキストに載ってます。2級の曲。どういう場面で歌われているか わかりません。題意は,歌いやすい小曲,だけど(状況が許さないのか)なかなか歌えない,という意味です。

「洪湖水,浪打浪」(笛子ソロ曲)

※出典データ:
・上海音楽出版社編『中国音楽欣賞手冊』(上海音楽出版社 1981)456頁

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