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1がつ

20010121
22日にISDNの工事、23日からフレッツだ。信じられないかもしれないが、TAを購入してから1年が過ぎているのである。TAの箱が酔っ払って吐き出した吐瀉物や埃で汚れている。人間というものは自動的に知恵が付き、アナログがデジタルに無意識に自然になるんじゃないかというような生活を送っていた。

TAが散乱した本や屑で埋まっている間なにをしていたかというと、髪を振り乱して「裏切らないで、逃げないで」と男にしがみついていた。精神的裏切りなんてしょっちゅうやっているんだから、手前が裏切られるのを極度に恐れることはないのにね。

「なんて無駄な時間を遣ってしまったんだ、消し去りたいわ」「だから何度も云うけど、そういうエネルギーってなかなか湧かないのよ、その頃に書いた日記ってもう書けないでしょ?」「まあ、そうだけどさ」とわたしの要求通りの返事をしてくれるHさんに愚痴る。下手すりゃこんな確認作業に丸1日かかるのだ。要領の悪さ、鈍さを、「真剣に考えているからだ」と崇高なことでもあるかのように納得させちゃうところが平和というか、危機感がないというか……。

説教臭いことを云っているときは、大抵自分に言い聞かせている。最近では中学生のななちゃんが標的になっていた。「吉本ばななって、つまらなくなったわ」「ばななの読者層って若い女性だったのよね、彼女はある日自分の文章の未熟さに気付くのよ、それで努力して文章力を磨いたわけ、つまらなくなったのは、彼女が今連載している雑誌の読者層が中年のおじさんというのもあるけど、今までの読者が付いていけなくなったんじゃないのかなあ」。これって、読者がばななを見捨てたのかもしれないが、今の自分には、ばななが読者を見捨てたという解釈の方が都合がいいのだろう。

20010116
某氏より三島由紀夫の「豊饒の海」を送ってもらった。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の四巻。その彼と文学の話をするのは楽しい。話をするといっても、わたしの目まぐるしく変わる趣向に合わせてくれているので、申し訳ないような気もする。感想を伝えるのは、彼の反応が知りたいのもあるのだけど、反復すると忘れないからじゃんじゃん聞いてもらうのだ。

日本航空勤務時代の安部譲二をモデルに描かれた「複雑な彼」の話。「安部譲二、背中の秘密、この二つのキーワードで直ぐに最後が解ってしまったわよ。三島にしては物足りない小説だったなあ」「三島由紀夫ってプライバシーの侵害で告訴されているんだよ」「うん、不倫相手の女性がこの小説で離婚になったら責任を取ってくれ、と安部に怒鳴り込んできたんだって。で、笑えるのが「複雑な彼」って「楯の会」の資金のために書かれたのよ」「うはははは」「でも、三島が自決する前日、あるクラブにキープしているお酒を自由に飲んでもいい、と安部に電話したそうだから可愛がってもらっていたんだろうね」

とまあ、こんな話をしているのです。

えーっと。好きな人に本をプレゼントしてみよう。その本を読んでる時間は「あの人はここで笑ったんだろうなあ」「あ、こいつとわたしをシンクロさせているんじゃないか」と、あなたとわたしと本という空間になります。ただし、趣味を間違えるとこの上なく逆効果になるので慎重に。

「豊饒の海」は今晩から読みます。

20010112
当たり前のように「ここ」にいると思われていたみたいです。「ずっと家にいて何をしているのかと思った」だって。誰のために早く家に帰ってきていたのか、誰のために本を読み続けていたのか、誰のために頑張っていたのか……。なんてことを書くことが女々しくてやり切れないわなあ。「自分のため」と云えないんだもの。

バカヤロ。

振り向いてくれるのなら、女に嫌がらせをした方がいいんじゃないか、と真剣に云っている男がいるから困ったものだ。勘違いしているとまずいので云うけど、嫌がらせ行為をしても許されるのは、かなり惚れられた者だけなんだよ。で、そういう奴は傲慢で冷酷で相手の気持ちなんてこれっぽっちも解ろうとしないし、「人を愛するということは、その人を好きでいる自分を愛することだ」と平気で云えちゃうんですよ。果たして君にそんなことができる?似合わないと思うよ。

20010108
年明けから喧嘩ばかりしていた。ほとほと嫌になる。「うじうじしているのは恋愛だけなのよ」と言い訳をしても、恋愛がそうだと何事もうじうじするようだ。

「君のことはなんでも受け止めるよ」という言葉に甘えて本当になんでも告白するのはやめようと思う。というのは、どんな人間でも真実の姿というものは醜くて愛せないものだから。「こんなに尽くしているのに何よその態度、信じられない」「わたしを馬鹿にしているのね、復讐してやる」「わたしが嫌な女になるのも、元はといえばあなたが嗾けてきたからじゃない」「死んでやる!死んでやる!ねえ、一緒に死んでくれるんだよね?」……。告白癖がつくと次から次ぎへと不安材料で溢れさせたくなる。

自分のことを「狂ってる」というのは嫌なのだが、相手から「君は狂ってる」と云われた場合はどうすればいいのだろう。「わたしは狂ってない、あなたがわたしを狂わす、もしくはあなたが狂っている」という堂々巡りの会話が続く。

「君のことはなんでも受け止めるよ」と云われても、余計な告白はぐっと辛抱して自分の中にしまっておく方がいい。「云いたいことは云いたいのよ、欲しいものは欲しいのよ、恋愛の駆け引きなんか糞食らえ」というのは近い内に息が詰まる。駆け引きのある方がよっぽど新鮮で可愛いものだ。

20010101
山田詠美の「ハーレムワールド」を読んだ。サユリという女王気取りの女は男に「殺される」つまり、男から去られたことがなかった。去られたことがないというよりも、「殺される」を「追放」という形にして自尊心が傷付いたことを男にみせない。その内、サユリの前から皆が去っていく。しかし、カッコのいい終わりをすれば、カッコのいいはじまりがやってくるものだ。

29日のつぶやきで自意識の垂れ流しが恥ずかしくてなってしまったと書いたが、一人に集中して垂れ流しをやっているだけだった。「いいたいことをいう」「やりたいことをやる」「すすみたいからすすむ」「なきたいからなく」と「ハーレムワールド」でいうとティエンのような「腹心」になる人に欲求や不安を乱暴にぶちまけていた。

以前、「気が狂いそうだ」「苦しい」「お前を憎むことになるから切ってくれ」「他の女と付き合う」とヒステリックに怒鳴っていた男がいた。本当に気が狂いそうで、苦しいのだろうけど、ヒステリは些細な言葉の食い違いからはじまり、何時間も続くものだからお互いに身体がもたない。落ちつこう、落ちつかせようと取り繕うほど、「俺が苦しんでるのになんでお前は平然としてるんだ!馬鹿にしやがって!」と相手を逆撫ですることになった。逃げざるをえない。なぜこんなにカッコの悪いところをみせるんだろう、とその時は不思議でたまらなかった。

しかし、自分がこのヒステリ状態になると、「頑張ってるからヒステリになるのだ」と、ヒステリの言い訳をするから呆れたものだ。

Kさんに相談した。Kさんには迷惑な話であるがKさんのことは「最後の相談相手」と勝手に決めていた。これ以上他人を巻き込みたくない。「お互いの言い分はあるでしょうが、大切なのは思いやりの心」とKさんが云った。思いやりか……。「頑張ってるから」ということを利用して相手の気持ちを無視しても許されると勘違いしていた。

カッコのいいはじまりがしたい。2001年1月1日。これからもよろしく。

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