地球環境問題って? 

        「地球の温暖化とは」
 (0) はじめに

  埼玉県所沢市で、私たちが地球環境問題についての勉強会(講座)を初め  
 て開いたのは平成4年のことです。予想したとおり、この講座の参加者はそ
 う多くはありませんでした。もっとも宣伝はほとんどしてしていなかったの
 ですから、参加者が少ないのは当たり前です。
  それでも今日まで、姿を少しづつ変えながら講座を続けてきました。一般
 には知られていないのですが、大事なことは、それに気付いた者が取り組ん
 でいかなければなりません。
  それゆえ、地味な講座をえんえんと続けてきました。その講座の中で、取
 り上げられたテ−マの一つが「地球温暖化の問題」です。ここでは、温暖化
 の問題をやさしく説明していきたいと思っております。

      

        地球の温暖化とは
 (1) 匂いやさしいヤマユリ
    

 所沢市下富で7月18日撮影:Nikon D70 ,AF-5 micro NIKKOR 100mm使用

        地球の温暖化とは
 (2) 環境問題のはじまり

   私たち人間はほかの生き物と一緒に地球という環境の中で生活をしていま  
  す。私たちが生活したり、活動していく上で必要となる資源や原材料は、す
  べてをこの地球の環境の中から手に入れております。
   エネルギー(熱)を使うための燃料や空気も、薬の原料も身の回りの環境
  の中から手に入れているのです。特に《漢方薬》の主成分は大半が植物です
  から、環境との関係がいちばんはっきりとわかります。
   私たちが美しい森や林の中へ出かけるとほっとしたり、気持ちがいいなと
  感じたり、穏やかな感情になるのも、みんな地球の持つ環境からの恵みなの
  です。
   地球の環境には、私たちの生活や活動から出てくる有害な物、いらなくな
  った物、危険な物を受け入れて同化する力があります。つまり有害な物を薄
  めたり、分解したりする特別な働きを持っているのです。
  前にお話ししたとおり、人がこの環境の働きを考えずに、活動のスケ−ル
 を大きくし過ぎ、また高度にしてしまい、環境の中からいろいろな物を資源
 としてどんどん取り出し、利用することになりました。その上有害な物、い
 らなくなった物や危険な物などを環境の中へどんどん捨てることになりまし
 た。
  これが環境問題の始まりなのです。

   

        地球の温暖化とは
 (3) 環境問題とは

   地球の大気はわずか12キロメ−トルほどの厚み、海洋の深さも最大で10キ  
  ロメ−トルほどしかないことは前回お話しました。この薄い層の中が人の活
  動で汚され、破壊され、好ましくない影響が出始めました。
   日光や微生物など自然界の働きでは分解されにくい物がつくられ、消費さ
  れ、いらなくなった物は片端から環境の中に捨てられ、それが大気や海洋の
  中にたまり、環境に悪い影響を及ぼしているのです。
  そのうえ機械や技術が進歩し、海を埋め立てたり、森林を根こそぎつぶし
 てしまうことができるようになり、今では、自然環境を破壊し変貌せしめる
 光景が何処においても日常普通に見られるようになってきました。
  これも環境に好ましくない結果をもたらしています。これらがみな環境問
 題です。これは、悲劇といえるのかもしれません。具体的な環境問題には砂
 漠化、オゾン層の破壊、地球の温暖化、酸性雨、熱帯林の減少、野生生物の
 多様性の減少、海洋汚染、環境ホルモン、有害廃棄物の越境移動、発展途上
 国の公害問題などがあります。これらの問題は相互に複雑に関係し合い、影
 響し合っ ていると考えられています。
  これも前回お話ししたとおりです。

           

        地球の温暖化とは
 (4) 何が問題なのか

   人類は、科学技術の進歩や経済活動の拡大によって、地球の歴史が始まっ  
  て以来、初めて経験する速度で自然環境に好ましくない影響を与えています。
  爆発的に増加する人口を支えるために、自然の持つ復元能力を越えた森林破
  壊を行ったり、農地の開発が行われています。それが、地球の砂漠化や地球
  の温暖化などの、いわゆる「地球環境問題」をひき起しているのです。
  
   (注)爆発的に増加する人口
     世界の人口は、1999年には60億人になり、それから5年後の2004年
    には64億人に増加しました。このまま増加し続けると2010年頃には70
    億人に達することになるでしょう。
     この結果、食糧を得るための大規模な森林破壊が行われ、食糧の生
    産が優先され、自然の有機物還元を越えた耕地の利用が行われること
    になるでしょう。ついには、それらの土地が不毛の地となり砂漠化し
    ていきます。
     破壊された森林の生き物は滅ぼされ、大気中の二酸化炭素の吸収源
    (森林)が失われ、その貯蔵源(森林および土壌)も失われてしまう
    でしょう。それは、大気中の二酸化炭素の増加を招きます。やがては、
    地球の温暖化を加速することになります。
   
  たとえば、農作物の収穫を増やそうとして、乾燥地帯に巨大なダムをつく
 り、無計画に農業用水を引いたりすると、水分が蒸発した後に塩分が残り、
 土地が不毛化して、作物が育たなくなり、これが元で砂漠化を促進すること
 にもなります。
  これからは、いかにして人間の活動を、自然の持つ復原力の範囲内に止め
 るのかが大きな課題であるということができます。これまで、環境への配慮
 がなされないままに、人間の活動が余りにも大規模となり、また高度になり
 すぎたのです。その結果、地球の環境からは多くの物質が資源として取り出
 され、利用され、それとともに活動の過程で発生する汚染物質、不用となっ
 た物質、あるいは危険性のある物質が環境の中へ大量に捨てられてきました。 

       

        地球の温暖化とは
 (5)  埼玉県ではめずらしいクロコノマチョウ

     


  2004/06/20  狭山丘陵の八国山の埼玉県側で Nikon D70使用    

        地球の温暖化とは
 (6)  温暖化と砂漠化

   ここでは、よく知られている、大きな環境問題を2つとりあげてみましょ  
  う。それは地球の温暖化と砂漠化です。この二つの問題は有機的な関連があ
  るようです。砂漠化に関しては、後に詳しく説明していくつまりなので、概
  略をお話ししておこうと思います。

 (1)  砂漠化

   砂漠化の原因としては、気候的要因と人為的要因とをあげることができま
  す。気候的要因には、地球規模での大気循環の変動などがあり、人為的要因
  には発展途上国における過放牧、過耕作など、その地域の生態系の再生・復
  活の限度(許容範囲)を超えた人間の活動があげられます。
  また発展途上国においては、貧困や人口増加といった社会的あるいは経済
 的な要因が人為的要因の背景にあり、砂漠化問題の解決を一層複雑にし、困
 難なものにしています。
   気候的要因、土地の生産性、農作物の種類、その生産性を上げるために用
  いられる手段に一定の土地が支えることのできる人口は、左右されます。
   砂漠化の原因は、一般には、その土地に居住する人口が、その土地の養う
  ことのできる人口よりも増えてしまうことによるのですが、もっと根本的な
  原因として、人々をやせた土地や厳しい労働へと追いやるような社会・経済
  的な問題にあります。
   砂漠化地域における急激な人口の増加は、食糧生産のための家畜頭数の増
  加および休耕期間の短縮、農地の拡大、さらに人口増加は薪や炭の需要増大
  につながり、人口増加が砂漠化を一層進行させ、その結果、飢えた人口が他
 の地へ移動せざるを得なくなります。
    砂漠化や熱帯雨林の破壊によって、植物の環境が悪化すると、そこをす
  み家としている多くの野生生物が棲みにくくなり、仕舞いには野生生物が絶
  滅したり、その数が少なくなってしまう可能性があります。
   わたしたちの生活は、農業や工業のほか、漁業や薬草の採取、あるいは、
 廃棄物の最終的な処理など、多くの動植物の食べたり食べられたりする関係
 による「輪」(食物連鎖)によって支えられています。
  砂漠化により、こうした「生態系」が破壊されると、最後はわたしたち人
 類の生存もおびやかされるようになってしまいます。
   ところで、世界の人口は1987年に50億人をこえ、21世紀をまたずに1999年
  には遂に60億に達しました。正に爆発的な人口増加です。
  予測では、21世紀にはさらに20%も増加するだろうといわれています。一
 方農地は1985年以前の30年間で15%しか増えず、1975年に比べ2000年には潅
 漑農地が22%増えるといわれています。しかし、砂漠化する面積が62%増加、
 塩類化する面積が3%増加、森林面積が17%減少しますので、トータルでは、
 農耕地は4%しか増えないと予測されています。
  アフリカなど発展途上国は人口急増地域であり、その耕地の多くはラトソ
 ルなどの不良土で農業には適さない土です。そのため、重大な食糧不足の発
 生する恐れがあります。
   砂漠化の進行を加速しているのは、地球温暖化など他の環境問題と同様に
  人間であるという点を忘れてはいけません。発展途上国の人々も生活のため
  に放牧をし耕作をしているのですから、砂漠化の原因をつくっていることに
  なります。しかし、周囲から代りの手段を提供しないで、砂漠化の元になる
  から、樹木を伐ってはいけない、放牧をしてはいけない、などとは絶対にい
  うわけにはいきません。彼らにもより豊かな生活を営む権利がありますし、
  先進国に生まれて、豊かに生活している者たちが、勝手に地球を支配して良
  いということはありません。
   そこに、砂漠化問題を初め、環境問題を解決していく上での難しい障害が
  あるのです。

      

        地球の温暖化とは
  (7)  温暖化

   地球レベルの気候の変動は地域の気象とは比較にならぬほどに、時間・空  
 間の概念が異なります。平均気温が上昇するということは、地球全体の大気
 の「平均気温」が上昇することをいうのであり、その気温の上昇はジグザグ
 であり、当然平均気温の年変化もジグザグに変動しながら上昇することにな
 ります。
  地球レベルでの気候の変動は、何十年か経ってはじめて結果として観測さ
 れるもので、一般な「人間の実感」として把握できるというものではありま
 せん。
   地球の「温暖化」や「氷河期」・間氷期といった地球レベルの気候変動で
 は、地球全体の平均的な気温などが、数百年から数万年といったスケールで
 徐々に変動する傾向をとらえて規定できるものです。
  地球上の地域ごとの気候の違い、あるいは数年単位の細かい変動にこだわ
 っていると、地球レベルの気候変動の大きな傾向をとらえることはできませ
 ん。
   地球の温暖化は、地球全体の年間の平均気温が、長期的に上昇するという
  ことで、具体的なある地点で「気温が刻々と上昇する」といった観測がされ
  るというようなものではありません。
   地球上のある地点で、ある瞬間に大幅に気温が下がったり、急激に気温が
  上昇したりする現象が観測されたとしても、それは地球の温暖化とは直接の
  関係はないでしょう。何十年も観測を続けて、その観測結果を統計的に処理
  してみて、はじめて気温の上昇傾向の有無などがわかるのです。
   ここ200万年くらいは、地球には氷河期と間氷期という約4万年周期の変動
  があり、最後の氷河期はヴェルム氷期で、現在は相対的に暖かい間氷期にあ
  るといわれています。
  この間氷期がはじまったのはおよそ1万年前で、この1万年で地球の温度
 は約1度上昇したと考えられています。もう少し細かい変動では、19世紀頃
 に特に北半球で気温が1〜2度ほど低い「小氷河期」と呼ばれる時期(*1)
 があり、アルプスの氷河の成長や氷山の南下などが見られました。
   今日問題になっている地球の温暖化の主たる原因は、先にも述べたとおり、
  人間の活発な活動により、排出される二酸化炭素をはじめとする、各種の温
  室効果ガスと呼ばれる物質が、大気圏に蓄積され、長期間滞留することによ
  って起こる現象であります。
  化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の消費などによる、二酸化炭素の排出
 量の増加と二酸化炭素を固定する森林やサンゴ礁の破壊などによる、二酸化
 炭素の吸収源および貯蔵源の減少との二重の原因から、温室効果ガスの蓄積
 が進行する、いわゆる「ダブル蓄積」と呼ばれる現象が起こっているのです。
   地球温暖化の最大の原因は、二酸化炭素をはじめとする、温室効果ガスの
  大気内濃度の上昇です。温室効果ガスは、太陽照射により暖められた地表か
  ら出る赤外線を吸収し、熱エネルギーとして大気中に蓄積する働きをもって
  います。
   この温室効果ガスが現在大気中に確実に増加しています。その大気中の濃
  度が減少すれば、地球はどんどん宇宙空間に熱を放出して冷え、逆に濃度が
  高くなれば気温は上昇するということになります。
 
    

        地球の温暖化とは
 (8)  地球を汚さないために
  
   地球の環境を悪化させないようにするためには、私たちはさまざまな分野  
  で、多彩な方法で温室効果ガス削減のために努力をしなければならないと思
  います。
   ここでは温暖化の原因である温室効果ガスの排出を制御するための方法の
  可能性と二酸化炭素の固定について考えてみたいと思います。
   排出抑制の方法としては、省エネルギーと代替エネルギーが考えられます。
  また、炭素固定の方法としては、植物の増加、海洋への貯蔵、再化石化をあ
  げることができます。

 (1)排出の抑制

  温室効果ガスの排出抑制の方法としては、省エネルギーと代替エネルギー
 が考えられるのですが、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。

 @  省エネルギー
   今日における人類の文明を今のレベルを維持・発展させながら、二酸化炭
  素の排出量を抑制するためには、第一にエネルギー消費のむだを省いて節約
  すること、機器類や設備・装置などのエネルギー変換効率の向上を図ること
  などがあげられます。
   同じ仕事をさせるのに、より少ない量の化石燃料や木材の消費で済むよう
  な工夫をすることが必要なのです。

 A  代替エネルギー
   太陽エネルギーを直接利用したり、水力、風力、波力、潮力、バイオマス
  などの太陽が起源のエネルギーの利用、あるいは原子力の利用等によって、
  化石燃料の消費を代替させることにより、二酸化炭素の排出量を抑制するこ
  とが可能です。
  この場合、代替エネルギー利用施設の建設から廃棄までのライフサイクル
 の中で消費するエネルギーの総量よりも、そこで生み出すエネルギーの総量
 の方が大きくないと効果はありません。
   単位発生熱量あたりの、二酸化炭素発生量の少ない燃料に切り替えること
  で、二酸化炭素の排出を抑制することができます。化石燃料では、天然ガス
  が最も二酸化炭素発生量が少ないのですが、採掘可能埋蔵量は少なく、需要
  のすべてをまかなうとすれば、わずか14年で枯渇してしまうといわれていま
  す。
  バイオマスや植物起源のメタノールの利用は、代替エネルギーともみなせ
 るものですが、消費と同量以上の植物の生長が確保される必要があります。
 この状況が達成できれば、正味の二酸化炭素の増加には、寄与しないことに
 なります。

      

        地球の温暖化とは
 (9) ハイビスカスの花
     
  2004/06/13 ハワイのオアフ島ワイキキで Nikon D70使用  

        地球の温暖化とは


 (2)炭素の固定

 @植物増加

  森林などの地上の植物は、炭素の短期的な貯蔵庫の働きをしております。  
 植物が光合成で固定する炭素の量と、腐敗・分解によって放出される炭素の
 量とは、時間的な差がありますが、ほぼ均衡がとれているといわれています。
  従って、大気中の二酸化炭素を減らし、正味の二酸化炭素貯蔵量を増加さ
 せるためには、植物の量そのものを増加させる必要があります。ところが、
 新たに緑化可能な面積で固定できる炭素の量は、人類の化石燃料の消費量と
 比べると極めて少ないものということになります。

 A海洋貯蔵

  大気中より回収・固定した二酸化炭素を、深海底に長期的に固定すること、
 すなわち、深海底に貯蔵することは、論理的には可能ですが、難しい問題が
 あります。
  低温高圧の深海底の海水に溶けた二酸化炭素は、容易には海面まで拡散せ
 ず、これは炭素の長期貯蔵とみなすことができるのですが、大気中の二酸化
 炭素を回収し、固定するためにはエネルギ−が必要であり、そのためのエネ
 ルギー消費により発生する二酸化炭素の量が、そこで固定される二酸化炭素
 の量よりも多くならないように注意することが重要です。
   もう一つ、深海底貯蔵については未知の分野であり、どのようなリスクが
  あるのかはっきりしておらず、思わぬリスクが発生しないとは言い切れませ
  ん。

 B再化石化

   大気中の二酸化炭素を原料として、石炭・石油や石灰岩といった炭素の長
  期貯蔵庫となっている物質を、人為的に大量につくり出すことができれば、
  温暖化問題は解決できると考えられますが、現在の技術的水準ではこの実現
  の可能性は、まだまだ低いものと言ってよいと思います。
  今日でも枯死した植物が分解されずに泥炭となるということがありますが、
 これを人為的に石炭化する、特殊な微生物で廃プラスチックから石油のよう
 なものをつくる、あるいは人工的にサンゴ礁を大量に成長させて石灰岩のよ
 うなものとする、といったプロセスなどが考えられています。
  しかし、具体化されているわけではありません。
  

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  編集・管理:大森孟(森林インストラクタ−/環境カウンセラ−)      
  2004/07/16