孫たちに贈る森の科学

森林インストラクタ− 大森 孟            
[99/10/26 西会津の森も水も清らかな渓谷を撮す。]

===================================================================== 孫たちに贈る森の科学 Z           筆者:大森 孟 =====================================================================

人のつくった「スギやヒノキ」の森 その2

目次

                       
(1)はじめに
(2)「スギ・ヒノキの人工林」について
(3)「スギ・ヒノキ人工林」の手入れ 1 「枝打ち」
   (1) スギやヒノキの特徴
   (2) どうして枝打ちするの?
   (3)「枝打ち」の効果 
   (4) 枝打ちの終わった後の森
   (5) 枝打ちのタイミング
(4)「スギ・ヒノキ人工林」の手入れ 2 「間伐」
   (a)間伐のしかた
   (b)間伐を開始する時期は
   (c)間伐対象の樹木を選定する
(5)おわりに

(1)はじめに


 前回は、人のつくった森の中の「スギ・ヒノキ人工林」のお話をしました。
スギやヒノキの森の仕立て方のうち、植林とその前後の手入れについてお話し
ましたがむずかしかったろうな、と気にしております。山仕事をしたことのな
いみなさんにとっては「雲をつかむような」お話だろうなと思うからです。
 今回は、その、「雲をつかむような」お話の続きで、スギやヒノキの森から、
建築に使うよい材を育てる方法をお話していこうと思います。だんだん、みな
さんが見たことも、聞いたこともないようなお話になっていくので、最後まで
読んでいただけるのかどうか心配です。
 もうしばらくの間、森についてのお話に耳を傾けていただこうと思っていま
す。それから、おいおい、みなさんにもわかっていただけるような、こまかな
お話に移りたい、と考えています。

(2)「スギ・ヒノキの人工林」について

 よい木材とは?

 人の作った森は手を入れずに放っておくと、だんだん荒れはてた森になって いきます。太い幹の木、細い幹の木、背の高い木、背の低い木など、とても同 じ日に植えたとは考えられないような違いが出てきます。また、根元は太く、 上のほうは細い幹にもなってしまいます。  それだけではありません。いらなくなった下のほうの枝は枯れ、上の方は枝 と枝が重なり合い、地面には光が全く差さなくなってしまいます。そうなると 草や丈の低い木々はすっかり枯れてしまいます。  このような森では、困ったことがつぎつぎと起ってくることになります。こ のような森からの木材は枯れた節だらけで使いようがなくなりますし、森の中 に草木がなくなってしまえば、昆虫も、ネズミやウサギなどの小動物も餌(え さ)がないので生きていくことができなくなってしまいます。  もっと困るのは、雨が降れば、雨水が肥料分の多い土を押し流し、水は土の 中へしみ込まなくなります。そのために、ちょっと日照りが続けば、すぐ渇水 (かっすい:水がかれてしまう)騒ぎとなり、おお雨が降れば、すぐ洪水(こ うずい:大水)が起ることになってしまいます。  では、よい木材を育てるということはどういうことなのでしょうか。先にも お話しましたが、人の作った森では、人が使いたい木材を育てるのが目的でし たね。いったい、使いたい木材とは、どういう木材のことなのでしょうか。  林業家が目的にしている木材は、   (a) 元の方の直径と末の方の直径がほぼ同じであるような材であること。   (b) できるだけ丸く、まっすぐな幹の木材であること。   (c) 年輪の間隔(かんかく)が等しいこと。   (d) 年輪の中心が木材の幹の中心と同じであること。   (e) 節がないか、あっても小さな節であること。 という条件に合ったものです。これが全部そろった木材を「良材」(りょうざ い:よい材木)といいます。  「良材」を育てるために行う大切な作業に、「枝打ち(えだうち)」と「間 伐(かんばつ)」という作業があります。「枝打ち」は余分な枝を切り落とす ことで、「間伐」は木と木の間を空けるために、いらない木を切り倒す仕事で す。野菜などを育てるときには、「間引き」といっています。この二つの作業 をじょうずに組み合わせて、良材を育てるのです。  「枝打ち」と「間伐」は森をつくるお仕事の中で、いちばん大切で、いちば ん難しい作業なのです。この二つの作業を間違ってしまうと、40年も80年 も続けてきたことが無駄になってしまいます。

、 (3)「スギ・ヒノキ人工林」の手入れ 1 「枝打ち」

(1) スギやヒノキの特徴

(a) 節のでき方


  スギやヒノキのような針葉樹では幹の先端に成長点(上へ上へと伸び上がっ
ていく部分:ほさき)があり、盛んに細胞分裂(生き物が体をつくるからくり)
を行い、上方へと成長します。また、幹には、樹皮(じゅひ:木の皮)と材の
間に「形成層(けいせいそう:幹が太くなる部分)」があり、ここでは内側と
外側に向かって細胞分裂しながら「肥大成長(ひだいせいちょう:太くなるこ
と)」をしています。
 枝や葉は、成長点近くにある「葉原基(ようげんき)」とよばれる組織から
発生します。そのため、枝の随(ずい)は幹の随とつながっているのです。幹
が太くなる(肥大成長をする)と切り落とされた枝のあとは元の方から幹に包
み込まれてしまい、節となります。

                       

 【参考】枝が生きているうちに切り落とされ、そのあとが幹に包みこまれて
   できる節を「生き節(いきぶし)」と呼び、枝が死んで(枯れて)から
   切り落とされ、そのあとが包み込まれてできる節が「死に節」です。こ
   れは木材の欠点となります。

(b) 幹の成長と枝の役割


 樹木は葉の部分でおこなわれる「光合成」で生産された物質(有機質)を幹・
根・枝に蓄えながら成長します。したがって、樹木の幹を管理することは木材
の生産では大切な技術なのです。
 樹木の場合、幹の直径方向への成長(肥大成長)は樹冠(先端の生きた枝の
着いている部分)の方が大きく、特に、スギよりもヒノキの方がその傾向が強
いといわれています。
 枝打ちの強さ(どのくらいの枝を切り落とすのか)は幹の成長に大きく影響
し、「葉の量が減ると上へ伸びる成長は減退(げんたい:へること)」します。
その場合、成長のおとろえる割合はスギよりヒノキが大きいようです。
 枝打ちの効果は「枝打ちの強さ」と「樹冠(木の天辺)からどのくらいの距
離まで枝を切り落としたか」によって左右され、それによりちがう結果が見ら
れます。ふつう、年輪の幅は樹冠の一番下に残る枝の下のあたりで広くなり、
それより下では狭くなります。
 林業では、上の性質を使って、枝打ちを何回も繰り返して、勢いよく成長す
る部分を幹の上部へと移行させます。この性質を使って、「元口(もとくち:
幹の元の方)と末口(すえくち:幹の上のほう)の太さの差」をちじめること
ができます。また、年輪の幅をそろえることもできます。

(c) 傷をつけると変色する!


 スギやヒノキでは、その幹に傷を付けるとその周りの材の色がかわるという
性質があります。
 スギの場合は、黒褐色、灰褐色、茶褐色などの色になり、その色が濃くて、
不規則になるので「腐れ(くされ)]のできたような感じになります。ヒノキ
の場合は、変色の色が淡くあまり目立たちません。

(2) どうして枝打ちするの?


 森をつくるとき、どうして枝打ちが必要なのでしょうか。先にもお話しした
ように、林業の目的は「使いたい材を」を育てることでした。その「使いたい
材」をできるだけ良い材として生産するために「枝打ち」作業を欠かすことが
できないのです。
 「枝打ち」をする時期を間違えずに作業をすすめることで、
  ・節(ふし)の少ない良い木材の生産
  ・元と末(うら)の直径がほぼひとしい木材の生産
  ・病気にかからず、虫にも荒らされにくい森づくり
  ・台風や雪などの害を受けにくい森づくり
  ・その地方の気象の具合や土壌にあった森づくり
  ・元気のよい、いきいきとした森林づくり
  ・高い値段で売れる木材の生産
といったことが期待されることになります。
 そのため、「枝打ち」作業にでは
  ・生き枝打ち(生きている枝を切り落とす。)
  ・枯れ枝打ち(枯れた枝を切り落とす。)
のうち、「生き枝打ち」に力をいれることになります。当たり前のことですが、
管理の悪い人工林や作業の遅れている人工林では、「枯れ枝打ち」も自然に多
くなります。
 しかし、普通は、「枝打ち」といえば、「生き枝打ち」のことを指します。

(3)「枝打ち」の効果

 

 「枝打ち」をしたことにより、光が根元まで通るようになり、また、森の中
の風の通りもよくなるので、次ぎのような効果が出てきます。そうはいっても
枝の落とし方は人により違うので、効果もさまざまです。また、当然のことで
すが、生産される木材の性質にも違いが現れてきます。つまり、森をつくる人
の考え方の違いにより、いろいろな木材を生産する森ができることになるので
す。

 (ア)  木材として使う部分の節を少なくしたり、また、節を小さくしたりし
    ます。
 (イ)  枝が枯れてできる「死に節」(枯れた節)ができるのを防ぎます。
     また、同じ森の1本1本の木の節の大きさの違いを少なくします。
  (ウ) 木材ごとの節の大きさをそろえます。
  (エ)  木材の年輪の幅を揃えることができます。
 (オ) 「枝打ち」は生きた枝を打ち落としますが、一本一本の木の枝を打ち
     落とす量を変えることにより、その森全体の木の年輪の幅のばらつき
     を小さくする事ができます。(どの木材の年輪も同じような幅に揃っ
     た材になります。)
 (カ)  森の中ヘ差し込む光の具合を変えることができます。その結果、
    [1]複層林(後でお話しましょう。)を育てるときに、後から植えた木の
    生育を助けることができます。
    [2]林床の草木が光の量がたりず、枯れてしまうのを防ぎます。
 (キ)病気や虫の害からの木を守ります。
    [1]枯れ枝に卵を生み、幹に穴をあけて入り込むスギノアカネトラカミキ
    リの害(トビグサレのもとになります。)を防ぎます。
    [2]スギの場合には溝腐病(みぞぐされびょう)という病気を防ぎます。
    [3]雪で倒れ伏すのを防ぎ、また、雪どけの後の立ち上がりを早めます。

(4) 枝打ちの終わった後の森


 枝打ち作業の終わった森では、枝打ち前と光の差し込む具合、風通し、水分
の量などが変わり、森はいきいきとしてきます。とりわけ、草や丈の低い木々
は元気を取りもどし、一面にはびこります。
 こうなると、強い雨が降っても、水は土の中にしみこむようになり、表面を
流れる水は少なく、土や砂が流れ出ることもなくなります。土のなかにしみこ
んだ水は長い長い時間をかけてゆっくりと沢へしみ出していくようになります。
 こうなると森はますます元気になっていくのです。そういう森の変化につい
てお話しましょう。

 (ア)  森の管理について。
    [1]植えて間もない森では、枝打ちに似た、枯れ枝などを除く「裾(すそ)
    払い」をします。こうすると森の中の見通しがよくなり、作業がしや
    すくなり、安全に仕事ができるようになります。
    [2]山火事が発生した時には、林床に火の広がるのを防ぐことができます。
 (イ)  枝打ちののちの成長
    [1]樹高(木の高さ)は伸びなくなります。その代わり、根元の直径と末
    の方の直径が同じような大きさになります。これを「完満化(かんま
    んか)する」といいます。
    [2]節の数は変わらりませんが、節の長さや大きさは減少します。
    [3]森の中の環境
       枝打ちの終わった森の中は、日の光がよく通るようになり、明るくな
    ります。その結果、地面近くの草木も元気になり、それらの枯れたも
    の、打ち落とされた、枝や葉などが、これも元気になった土の中の微
    生物がよく働き、養分をどんどん供給します。
     森は、ますます元気になり、昆虫や小動物などもふえ、生き物の世
    界(生態系といいます。)が活気づくことになります。枝が少なくな
    ったので、樹冠でさえぎられる雨水がへり、また、葉から蒸散する水
    の量が減ります。
 (ウ)  枝打ちの強さ
    [1]枯れ枝は木の生長には関係がないし、むしろ死に節のもとになるので
    早めに切り落とします。生長には無関係で、残しておくとむしろ害を
    なします。
    [2]力枝(ちからえだ:ところどころに出ている、太くて、大きく張り出
    している枝)より下にある枝を取り除きます。生長にはあまり役に立
    っていないからです。
    [3]伐採するときに必要な材の寸法(末口の径)を考えて、枝打ちの強さ
    (どのくらいの量の枝をきりおとすのか)を決めます。この時には次
    の枝打ちまでに幹がどのぐらい生長すればよいのかを考え、力枝より
    上の枝を切ることもあります。幹の生長への影響は当然おおきくなり
    ます。
    [4]一般的な木材の生産では、丸太1本(1玉といいます)の長さを4m、
    1本の木から丸太を1玉か、2玉とるのが普通です。つまり、利用す
    る部分が4mから8mの長さになります。
    何本とるのか、それにより、枝打ちする高さがきまることになります。
    手入れの行き届いたスギやヒノキの森ではすらりと伸びた幹が美くし
    くならんだ森の姿を目にすることになるのはこのためです。 

(5) 枝打ちのタイミング


  枝打ちは、何よりも枝が生きているうちに、つまり葉が青々としている枝を
打ち落とすことが大切です。葉が落ちてから1、2年の間は枝はなお生きつづ
けているのですが、4〜5年後には枯れてしまいます。
 枝打ちは
  スギでは植林の後、8年から10年たったころ 
   ヒノキでは植林の後、10年前後たったころ
に1回目の作業をします。
  1回目の枝打ちのときは、高さ1.5mから2mほどの高さまでの枝を下ろします。
さらに、それから2年から4、5年たったころ、1回目に下ろした部分より上の
1.5mから2mの間の枝をおろします。
  枝打ちの目安としては、次ぎのように考えればよいでしう。
      3mの材がほしいのならば、4mの高さまでの枝をおろします。
      6mの材を採りたいのなら、7mの高さまでの枝をおろします。
 立派な森林を作るためには、枝打ちや間伐などの作業を組み合わせて、自然
の条件や経済的な条件も考え、森を正しく管理することが大切なのです。

                       

 【参考】 枝打ちをはじめる時期
    枝打ちと間伐の組み合わせは、よい材を得るためのだいじな作業です。
   そのため、作業の仕方は地方により、家により、生産目標により異なり
   ます。下のような目安もあります。
    枝打ちは
        第1回めの間伐の前後(これは植林後20年前後です。)
        無節材の生産では胸高直径10cmに達する前
   に行うというものです。

                       

 【注意】枝打ちと次の作業とは区別します。つまり、これらの作業は枝打ち
  とは目的が違うのです。ですから、枝打ちとはいわないのです。
  ・雪害の回避のために積雪地帯で実施されている裾払い
  ・園芸用樹木の剪定

[3] 森の手入れと公益的機能


 森の手入れをするときには、作業をする人たちは、「環境への影響」などに
ついてはほとんど意識してはいません。しかし、森の手入れを正しく行うこと
によって、結果として、下に述べるような、効果が現れてきます。
 こうい森の働きを近ごろでは「森の公益的機能(こうえきてききのう)」と
呼んでいます。
  (ア)表面の土や砂の流れ出すのをおさえる。
  (イ)山腹の土や砂の崩壊するのを防ぐ。
  (ウ)伐採した後ササしか生えないような山にはしない。
  (エ)栄養のある土をつくる。その結果、川にいる植物プランクトンの生活
    によい変化が起る
  (オ)林床の草木が元気になりいきいきとする。
  (カ)洪水や水不足を防ぐ。
などといった「環境を保全する効果」です。
 森の正しい手入れは「森林の持つ公益的機能」を向上させたり強化する働き
があると言うことができます。

(4)「スギ・ヒノキ人工林」の手入れ 2 「間伐」

「間伐」について


 森をつくるために植林したときには、普通、1ヘクタ−ルの面積に300
0本の苗を植えたのですが、木材をとして伐採するころには、40年目ごろ
で1500本、80年目では1200本ぐらいに木の数を減らして育ててい
くのが通例です。つまり、大きくなるにしたがい、育てる樹木の本数を減ら
しているのです。このときに要らない木を伐採するのですが、これは、育て
ようとする木と木の間の、要らない木を伐採するので「間伐」といいます。
 上の例は、柱とする木材の場合ですが、化粧材(けしょうざい)と呼ばれ
る特別な材を育てる場合には、柱材とは違う本数を収穫するように育てます。
 いうまでもないのですが、どのような木材を育てるのかにより、間伐も、
その目的に合わせて行います。これも林業家によってかなり違いがあります。
良材を育てるためには、「間伐」と「枝打ち」の作業をじょうずに組み合わ
せて樹木を育てるようにします。ですから、その方法は「家伝」(かでん:
その家の者だけの知る秘密)といってもよいと思います。
 「間伐」も「枝打ち」もほぼ植林後20年目ぐらいから、作業が本格化し
てきます。熱心な林業家は、この「間伐」や「枝打ち」の作業は、大切な仕
事ですから、これを森林ボランティアの人たちにお願いすようなことはしな
いでしょう。良材を育てることができるかどうかという重要な作業だからで
す。失敗すれば、何十年にもわたる手入れが無駄になってしまいます。

  (a)間伐のしかた

 間伐のしかたはいろいろあるのですが、間伐することによって樹木の生長
をおさえることができます。間伐の作業は「どのような性質の材を生産する
のか」という目的にしたがって実施されます。
 間伐のしかたは、育てようとする材によるのですが、優良な大きな直径の
材やお酒や味噌の樽の材の生産では、はじめに、1ヘクタ−ルあたり300
0本の苗を植え、少しずつ間伐して長い期間をかけて樹木を育てていきます。
山陰の「智頭林業」などがその例です。
 旧国有林などでは、はじめに1ヘクタ−ルあたり3000本の苗を植え、
直径のおおきな一般材の生産を行っており、1本の樹木から、長さ4メ−ト
ルの材を1玉か、2玉生産することを目標としていました。この場合は、し
ばしば保育間伐を行い、長い生産期間をかけて育林につとめてきました。
 間伐は、開始する時の立木の本数、開始する時期、間伐する量、間伐の対
象を選ぶ方法、間伐を繰り返す期間などを考え、それに経営(生産)の目標
にしたがって行われます。苗を植えたときから伐採の時期までの間にどのよ
うな間伐をおこなうのか林業家が考えることになります。

  (b)間伐を開始する時期は
 
 普通、植えた樹木の樹冠が混み合って、樹木どうしの間の競争が激しくな
り、それぞれの樹木の生長に支障が出ると考えられるようになってきたとき
に、森林ないの樹木の本数、生産の目標、植えられている樹木の特性、植え
られている環境などを考え、間伐や搬出の費用や間伐した木材の販売価格も
考えたの上で、間伐を開始する時期が決定されます。
 自然の条件の厳しいと森林ではとりわけ適切に管理することが大切で、年
数だけでは開始時期を決められないこともあります。

  経験的な間伐林齢(目安)

(c) 間伐対象の樹木を選定する
  もうお分かりになったと思いますが、人工林では間伐の方法も選木(ど
 の木を間伐の対象にするかをきめる)の方法も一つではありません、ここ
 では、極めて一般的な間伐のときの対象となる樹木を選定する仕方をお話
 したいと思います。
  普通、間伐の対象に選ばれる樹木は次ぎのような木です。
   競争に負けて育ち遅れた木、
   病虫害にかかっている木、
   衰弱している木、
   雪や風などで折れたり傷ついた木、
   倒れたり傾いている木、
   曲ったり二またとなっている木
   片側にばかり枝の出ている木
   枯れている木
 などで、これらは欠点があり育てても仕方のない樹木ということができま
 す。 

(5)おわりに

 人工林、すなわち人の作った森では、つねに人の手で「手入れ」を行ってい
かないと、森は壊れてしまいます。森が壊れてしまうと、そこに住んでいた生
き物は死に絶えることになるのです。その死に絶えた生き物を食べて生きてい
た他の生き物も同じように生きては行けなくなります。
 生き物の世界を壊さないようにするためには、私たち「人間」は、先祖が行
ってきたように森林の手入れをすること、森を減らさないようにすることが大
切です。今まで、町にはいなかった生き物が、いつのまにか町に住み着いてい
ることなども森の中に変化が起きているからかも知れません。たとえば、オオ
タカやキジバトなどがそのよい例です。森に餌がないから、餌を探して人の住
むところまで出てきてしまったのでしょう。
 しかし、今日お話した、「枝打ち」も「間伐」もたいへん危ない仕事です。
うっかりすると、枝打ちのために上った木から転落したり、間伐作業で伐った
木の下敷きになったり、裂けた幹に跳ね飛ばされて、「命を落とす」こともあ
ります。誰にでもできるという仕事ではありません。
 これもあとでお話しますが、材木は森の木々が毎日毎日太陽の光と大気の中
の二酸化炭素を使い、根から送られてくる水と養分を使って「光合成」という
不思議な働きをして、長い、長い年月をかけて作り出したものです。私たちは、
この木材を木が育ってきた以上に長い期間大切に使っていく必要がありそうで
す。
(2000/09/10)

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