「インターネット自由宣言」

しばらく前、「図書館の自由宣言」が話題になった頃、ちょうどインターネット的にもいろいろあるなーと思って、

そろそろ「インターネット自由宣言」が必要ではないか

と言っていたんだけど、draftが出た模様。

Declaration of Internet Freedom

内容に対する当否賛否は置いておくとして、こういったものが出て来ることは大切なことなので、一応賛意を表明しておく。

原文

We stand for a free and open Internet.

We support transparent and participatory processes for making Internet policy and the establishment of five basic principles:

  • Expression: Don’t censor the Internet.
  • Access: Promote universal access to fast and affordable networks.
  • Openness: Keep the Internet an open network where everyone is free to connect, communicate, write, read, watch, speak, listen, learn, create and innovate.
  • Innovation: Protect the freedom to innovate and create without permission. Don’t block new technologies, and don’t punish innovators for their users’ actions.
  • Privacy: Protect privacy and defend everyone’s ability to control how their data and devices are used.

まぁこれはこれでいいんだけど、微妙にひっかかる点がある。

まず、全部命令文になっていて、

主語がない

ということだ。命令文の主語は暗黙にyouってことになってて… という中学英語の知識を持って来るわけなんだけど、日本人的に読めば、これは

強いお願い

にしか読めなくって、「我々はこのために頑張る」的なものがちょっと弱い。箇条書きでない部分に「We support…」とあるので、まぁそういったつもりなんだろうなぁとわからんでもないけど、そもそも「我々」の対象は誰? 俺? インターネットプロバイダ? データセンタ事業者? サービス事業者? つまり、

誰が誰に向けた宣言か

ということが、よくわからない。これは「なんとか擁護団体」とかじゃなくて、実効性を持った実行者でないと、意味がない。そうでなかったら、単なる「強いお願い」だ。まぁ、「お願いリスト」が存在しても良いとは思うけど。

ちなみに、「図書館の自由に関する宣言」は、

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

となっていて、日本語にしては結構強い調子で「図書館」としての役割を強調している。まー、英語のニュアンスまでわからんので、これは「ちょっとなぁ」に留めておく。

内容そのものについても、微妙にひっかかるものがあって、2つ目の「Access」に「to fast」なんてのがあるのは、

大事なのは自由であって、
ユーティリティは別問題だよ

とか思う。これは「自由の宣言」であって、プロバイダの努力目標集じゃないんだから。速いかどうかよりも、速いものを提供出来るかどうかよりも、「誰もが自由に使える」ってことの方がずっと大事だし、そこに力点を置くべき。

4つ目の「Innovation」も同じで、「自由の宣言」としてはどうなのかなーと思う。確かに、

許可を求めるな謝罪せよ。(Don’t ask for permission, beg for forgiveness )

ってのは、インターネットの発展とかにはとても大事な考え方だし、個人的には賛成なんだけど(禁止されてないものは許されていることだ)、元の文章が「誰が」という部分を微妙にあいまいにしていることとも相まって、なんとなく違和感がある。これは「自由の宣言」なんだから、微妙にどさくさ紛れのように思える。もう少し「誰が」の部分を具体的にしてあるのであれば、あるいは意味があると思うのだけど。たとえば、これが「インターネットプロバイダの自由宣言」であれば、大いに結構だと思う。

と言うことで、件の宣言は「Expression」「Openness」「Privacy」だけあればいいんじゃないかなーとゆーのが、個人的な感想だ。他がダメなんじゃなくて、ここで言うものとは違うだろうと。