おごちゃん的視点のページ99年分


出版社

1999年5月3日

日本Linux協会会長などという役職 についたこともあり、最近執筆の依頼が山のように来ている。しかも、最近は Linux雑誌がいっぱい出ているせいもあり、立場上お断わりすることは困難で ある。本当は本業がシャレにならないくらい忙しく、時間的にも原稿書いてい る暇なぞないので断わりたいのであるが、読者にしてみれば忙しくて断わった のか、嫌いだから断わったのかは判断出来ないので、出版社に迷惑をかけない ためにも、基本的に全部引き受けることにしている。

そこで思うのだが、どこの出版社も

原稿料が安い

のである。安いところだとページ5000円くらい。高くても私は20,000円くらい までしか経験がない。

昔は今と違って暇だったし、文章も下手だったし、それ程仕事が来る方ではな かったので、「まぁ私にそれくらいもらえるなら」と思っていたのであるが、 今のように大量に依頼が来るとなると、

ちょっと待てよ

という気になる。

と言うのも、私は今は本業がシャレにならない程忙しい。だから、生活基本行 動(つまり飯食うとか寝るとか)をしている時間以外は全部仕事時間にしている。 さらにその生活基本行動のための時間も削っているくらいなのだ。だから、そ こに執筆依頼が来ると、その分だけ本業の時間を削るか、徹夜でもして仕上げ るしかないのである。

実は人に見せる原稿を書くには、随分と時間も手間もかかる。私はそれ程文章 が上手ではないので、かなり苦労して書くことになる。つまりその分、本業は 遅れることになる。

これが時間に余裕のある時ならいい。しかし、納期が近いような時に飛び込み の原稿なんぞを書いていると、

こんなことやってて納期に遅れたら、それこそシャレにならん

という気になって来るのだ。原稿料は高々ページ数万円。本業の方は数100万 数1000万の仕事なのである。数万円の仕事のために数1000万の仕事が納品出来 なければ、シャレになるならんの話ではない。はっきり言えば、

やってらんない

のだ。せめて本業の方の時間単価と同じくらいの時間単価になるのなら、それ でもまだスケジュール調整する意味もあると思うのだが、たいていは比較にな らないくらい安い。そうなると本業を優先するのは、これは当然のことである。

この、原稿料が安いのは

致命的

なのである。私のように本業を持ってて、なおかつそれが暇でない人は、現状 提示される原稿料では、とても原稿を引き受けることは出来ない。なぜなら上 に書いたように、

本業をやる方がいい

からである。それでなくても本業忙しいところに向けて、さらに苦しい思いを して、なおかつ本業よりも安い金にしかならないのであれば、やってられない。

ところが本当に書いて欲しい人は、そのような本業をしっかりやって、実績や 蓄積のある人なのである。そのような人が書けないのであるから、安い原稿料 とゆーのは、結果的に

クズ本をのさばらせる原因

となる。

この安い原稿料、よく出版の人は「売れてない本なので」と言い訳をする。し かし、売れてる本だろうが売れてない本だろうが、書く時にはそれなりに手間 をかけて書くわけであるから、

原稿料に見合って手抜き

をして書くなんてことは、

常識あるライタなら絶対にしない

売れないのは営業が下手か、本がクズかのどちらかなわけだから、本来依頼対 象のライタには関係ない。そこを安い原稿料で書くと言うのは、

原稿料程度のことしか書けない

クソなライタでしかない。そーゆー本が信用されるわけはないのだから、そー ゆー本は売れない。その結果、原稿料を安くすることになり...というような、

悪循環

を起してしまう。

とは言え、内容によっては多少安くても引き受けないことはない。それは

書くことによる自己啓発

どうしても読んで欲しい

と思うようなネタの時である。しかし、既に私の書ける分野が出版社的に売れ 筋になってしまっている現在、何も私が無理して書かなくても他の人の方がずっ と良いものを書く。だから安い原稿料で無理して書く必要はもはやないのであ る。

この話は講演についても同じである。マトモな講演をするにはそれなりに準備 時間はかかるし、拘束もされる。それに見合わないようなギャラで依頼されて も、本業がある限り受けることは出来ない。そーゆーごくあたりまえのことく らいは理解していて欲しい。

この手のことで不愉快になった クライアントを吊るし上げ ておくので、吊るし上げられたところは反省するように。


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