牧羊姑娘 muyang guniang モンゴル民謡・黎俊平編曲

もともと,羊飼いの女の子がいつも主人からいじめられている自分の状況を 別の女の子に置き換えて歌っているモンゴル族の民謡をもとにしています。その歌詞は以下:


 対面山上的姑娘,ni為誰放着群羊?
 涙水湿透了ni的衣裳,ni為什麼這様悲傷?

 山上為什麼這様的荒涼? 草児是這様枯黄,羊児再没有食糧,
 主人的鞭児挙起了抽在我身上。

 対面山上的姑娘,黄昏風吹的好凄涼,
 穿的是薄薄的衣裳,ni為什麼還不回村荘?
 北風吹得我氷涼,我願在羊児身旁,再也不願回村荘。
 主人的屠刀亮閃閃要宰我的羊。


これに訳をつけてみました・・・かなりアヤシイけど。

 向かいの山にいる(?)女の子,あなたは誰のために羊の群れを放牧してるの?
 涙があなたの服を濡らしている。あなたはどうしてそんなに悲しいの?
 山はどうしてそんなに荒涼としているの? 草は枯れてしなび,羊のえさもなく,
 主人の鞭が私を叩くから。

 向かいの山にいる(?)女の子,黄昏時に吹きすさぶ風がとても寒々しいけど,
 来ているのはぺらぺらの服。あなたはなぜ村に帰らないの?
 北風が私を凍らせるけど,私は羊のそばにいたいの,もう村に帰りたいとは思わない,
 (自分が帰ると?)主人の冷たく光る刀が私の羊を屠るから。


というように,とても悲しい光景です。自分が耐え難いまでに辛い状況におちいったとき, それは自分ではなく,自分ではない可哀想な子がそういう目にあっているという 発想で乗り切る・・・ということがあると思いますが(それが甚だしいとビリー・ミリガンのように 精神疾患にまでいたってしまいますが),この子もそうやって必死に 耐えて居るんだろうな,と可哀想になります。

ただ,定演で演奏するときは上のようなことはあまり詳しく紹介せず, モンゴルの雄大な草原を想像してもらうようにしました。 だってあまりにも悲しいので・・・。


●曲の構成(合奏版)
黎俊平編曲の合奏バージョンは,初級者でもできる非常に簡素なつくりで, 譜面はパートは管・弦・弾撥・低音・打楽器の5パートで構成 (じつは八尾で演奏した「アラムハン」や「太湖船」も同じ人編曲の譜面)。

ただ,天昇バージョンでは,本来はG調だったのをF調にして, やや高めだったのを落ち着かせ,また2回繰り返しだったのを, 中間に二胡をソロを入れて,変化を付けました。

この譜面は3段構成で,第1段と第3段の擦弦メロディに,第2段で 付点をきかせた弾撥メロディ(これは黎俊平オリジナル?)が入っています。


合奏曲としては,もうひとつ東初編曲のものがあり,これは完全に「二胡独奏+楽隊」に なっています。参考までにこの人の「解説」を以下に掲載しておきましょう。

 牧羊姑娘は様々なタイプの編曲がなされているが,  この二胡独奏曲はオーボエ独奏曲をもとに改編した曲をさらにアレンジしたものである。
 構成は,遅い→速い→遅いという3段に分かれる。

 編成は笛1本,喉管1本,揚琴1台,弾撥(しんち注:揚琴も弾撥だけど…)・擦弦は  三弦・秦琴がそれぞれ1本,二胡は4〜6本,中胡2本,中革・大革胡各1本。
 打楽器は大小木魚と 双鈴(ペンリンのこと?参考:http://content.edu.tw/primary/music/tn_dg/main.htm)。
 喉管は基本的に中胡と同じなので,なくてもよい。


楽隊は独奏部分ではできるだけ音量をおさえて独奏を引き立たせる。
弾撥・擦弦は快板(第2段)の合奏部分では出番なのでがんばって演奏する。
第3段はソロ楽器の聞かせどころと再現部がうまくつながるよう注意する。
独奏部分は,とくにその聞かせ所が高ポジションで,
離れたポジションに飛ぶところもあるのでなかなか音程が取りにくいので要練習。


※演奏データ(二胡ソロ版より)
東初が上で述べているように,もともとオーボエソロだったものが二胡ソロになった譜面が あります。王永徳の教科書の6級に載っています(おまけのページ→検定→二胡参照)。

私がZY先生にこの曲を習った当時の「原曲は前半は歌曲,途中でオーボエソロが入り, 二胡も少しはいる??」というメモ書きが残っていますが,オーボエと二胡が入る編成って どんなん?? もしかしたらメモ自体が間違ってるかも。

ま,それはともかく,そのときは散板の前に2拍ずつのトリル伸ばしがあるのですが, そこんとこを削除して,替わりにオーボエソロのメロディを入れ込みました。 そしてそのまま散板へと。

なお,王永徳の解説は以下のように述べています。

 この曲は羊飼いの少女の胸を打つ美しい話にもとづいたものである(しんち注:あれ, あの歌詞以外に,なんか物語があるんだろうか・・・)

 第1段:はじまりは比較的ゆったりとした旋律で,同じフレーズを最初は内弦で,次は外弦で奏する。  内弦のときは音程や音色のコントロールがかなり難しい。弓に塗る松ヤニは多すぎると雑音が,  少なすぎると滑りすぎて音がしっかりしないので,適量を心がけるように。
 また,二胡の楽器としての構造上,高ポジションでの内弦の音は雑音がなりやすいので, このへんは特別なコントロールが必要である。 (しんち注:松ヤニの量より,そのへんのことをもっと詳しく書いて欲しいが…)

そして外弦の旋律は音色が明るくなり,より気持ちも高ぶってくる。とくに1小節完全休止の あとから表れる中間部からは,力強く演奏することを心がけ,前半の内弦メロとの対比を 際だたせる。速度もややあげてもよいでしょう。そのあとしばらくしてアクセントがでてくるが, ここは手首の使い方に注意して,瞬間的にぱんと圧力をかけることでサッっと払うような動作を。 その次のトリルの連続はポジション移動を伴うので難度が高いが,それでも運弓を安定させ, トリルの粒をそろえるように。

 第2段:さて,つづいてかなり長い散板部分にはいるが,この部分は各人の解釈によっていくつかの フレーズに分け,それをひとつずつさらっていくのがよいでしょう。もしうまく加速できない ようだったら,それぞれのフレーズの頭をややゆったりと,それからaccel.をかけていけば うまくいくかもしれないので試してみて下さい。ただしこのときに各フレーズ間の間(ま。ブレス)が あまり長すぎないように。さて,ここでピチカート奏法が用いられていますが,これは 比較的新しいテクニックで,弓で内弦をひき,左手で外弦をはじくというもの。『賽馬』や 『喜摘豊収棉』等の従来のピチカートと違うので注意してくださいね。
散板の収束部は高音と開放弦が交互にでてきますが,まず音程に注意しながらゆっくりと, そしてだんだん速度をあげて練習してください。ここでは主音(しんち注:どっちだろ?メロを たどる高音のほうかな?)きちんとひびかせてください。以上のようなことに注意を払って はじめて散板部分が完璧にしあがります。

第3段:ここは弱くはじまって,主旋律は内弦で奏します。コーダ部分にかなりポジションが飛ぶ ところが1箇所あるので(原注:散板にも2箇所ありますが),音程のほか音色の コントロールにも気を付けて下さい。

ちなみに,第1段の後半部分で盛り上がるところ(しんち注:第1段外弦メロの1小節休止後のとこ?) は,気持ちも盛り上げていきますが,このへんは羊飼いの少女が嵐と戦っているところを想像してみよう。

王氏の丁寧な解説,ほんまに恐れ入ります。

※出典データ:
・李保■(tong)主編『中国名歌1000首』(山西教育出版社 2001)?頁(メモが行方不明)
・王永徳主編『中国二胡考級曲集(演奏提示版)』(上海音楽出版社,1995年)75頁
・・・修訂版は2000年出版。ページ数は95年のもの。
・王永徳主編『二胡考級訓練問答』(上海音楽出版社,2002年)47頁
・・・某店店長から借りっぱなしの本・・・ごめんなさい
・中国芸術研究院音楽研究所編『中国近現代音楽家伝 第2巻』(春風文芸出版社 1994),540頁
・・・いつも愛用してる『中国音楽欣賞手冊』には載ってないみたい・・・

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