回娘家 hui niangjia 河北民謡
題の「回娘家」は,お嫁さんが実家に帰省する,という意です。
中国には旧正月2日〜3日に,嫁いだお嫁さんが実家に帰るという風習があるそうです。
このときはだんなや子どもをひきつれ,手にはたくさんのお土産をもち,実家にいる子どもたち
(自分の幼い弟妹たちでしょうか,あるいは家に同居する兄たちの子どもでしょうか)への
お年玉を用意して,一年ぶりに意気揚々と懐かしの家に帰るのです。
しかし,この歌に歌われているお嫁さん,ちょっとヒサンな目にあっちゃうのです。
詳しくは下の歌詞をごらんあれ。訳のつたなさは気にしないで下さい。
●歌詞とその訳●
A 風吹這楊柳,shalalalalalala… ※sha=口+刷 la=口+拉
小河里流水,hualalalalalala… ※hua=口+華
誰家的xi婦,ta走呀走的忙呀 ※xi=女+息 ta=女+也
原来ta要回娘家。
風が楊柳をそよそよと揺らすよ。
小川がさらさらと流れているよ。
どこかのおうちのお嫁さんがせわしげに歩いている,
そう,彼女は実家に帰るところなんです。
(ここ以降,一人称の独白となる)
B1 身穿大紅襖,頭戴一支花,
臙脂和香粉ta的臉上擦,
左手一只鶏,右手一只鴨,
身上還背着一个胖娃娃呀,
衣呀衣得儿wei ! ※wei=口+畏
めでたい真っ赤な綿入れの上着,頭には一輪の花を挿し,
良い香りのおしろいを塗ってオシャレに着飾って。
左手にはニワトリ,右手にはカモをお土産に,
背中にはさらに丸々太った赤ちゃんを背負い,
(ここはたぶんかけごえ)
B2 一片烏云来,一陣風儿刮,
眼看着山中就要把雨下,
躱又没処躱,藏又没処藏,
豆大的雨点往我身上打呀,
衣呀衣得儿wei !
しかし暗雲が立ちこめはじめ,一陣の風が吹いたとみるや,
またたくまに雨が来そうな重苦しい天気に。
でも雨宿りの場所もみつからず,
とうとう雨粒が私にふりそそぐ。
(ここはたぶんかけごえ)
B3 淋湿了大紅襖,吹落了一支花,
臙脂和香粉変成紅泥巴,
飛了一只鶏,pao了一只鴨, ※pao=足へん+包
嚇壊了背后的小娃娃呀,
衣呀衣得儿wei !
よそ行きの服はずぶぬれ,頭の花も風に持って行かれ,
おしろいはどろどろになって,
ニワトリもカモも逃げ出して,
背中の赤ちゃんはすっかりおびえてしまって,
(ここはたぶんかけごえ)
C ai呀,我怎麼去見我的媽? ※ai=口+艾
アイヤ〜。私,どの面下げて母さんに会えばいいのよ〜!!
●構成●
前奏のあと,上記歌詞のAの部分にはいります。
伸びやかな歌詞部分と,同音が連続する擬音部分のコントラストがとってもいい感じ。
そのあと,Bのメロディが3回繰り返されます。これは前半の長めの歌の部分と,
短く刻む部分が変化のある旋律を作り出しています。
またB1とB3の歌詞がちょうど対照をなしていて,
かわいそうなお嫁さんの姿がコミカルに描写されます。
※ちなみに,B3から,鶏や鴨を生きたまま持って行ったんだなあと分かります。
中国ではよく巨大な麻袋を持っている人を見かけましたが,中に生きたニワトリが
たくさん入っているらしく,鳴き声が聞こえたり,がんがん袋を蹴っている様子が
外からもうかがえました。内部の様子を想像するとちょっと可哀想…。
また,肉のみ買って帰る場合でも,その場でシメてもらうことが多いようですね。
そういえば大学の近くに時々ニワトリを売る屋台がきてましたが,おじさんの前に
熱湯が入った巨大なドラム缶が置いてあって,買う人がいるときは
トリをその場でぼちゃっとつけるんです(生きたままだったか,シメてから
かは覚えていませんが…)。熱湯につけると羽がむしりやすくなるのかな?
通行中,たまたまそういう場面に出くわした場合は,つい目をそらしてしまったものです。
最後のCで,「あいや〜」と悲痛な叫び。これで曲は終了です。
なお,この曲は張飛龍・張建国によって二胡二重奏に編曲されています。
(『二胡重奏練習曲楽曲20首(3)』57頁)。
※出典データ:
・李保■(tong)主編『中国名歌1000首』(山西教育出版社 2001)1426頁
(05/01/10up,05/01/11修正)