| 
 SATONET : since 1991-05-01 
 小学生の森林教室 : since 2003/07/10
 | 
 森には「持ち主」がいます!
| 
| 
   みなさんの中には、「森はみんなのもの」だと考えている方々がたくさんい 
  るのではないでしょうか。そういう方は、森の中では自由に歩き回ったり、草
  木を掘りとったり、木の実を拾ったり、あるいは、欲しい木を切っても良いと
  思っているかも知れません。
   これらの考えは間違っています。日本民族はヨーロッパの諸民族とは違って、
 「農耕民族」です。森林に対するものの考え方は、初めから違いがあります。
  遊牧民族は森や草原をみんなで共同利用することにより、家畜を養うのに対
 し、農耕民族は特定の林野を自分のものとして所有し、その一部を農耕地とし、
 一部は定着して生活するために必要な薪炭(エネルギー資源ということもあり
 ます)の調達の場とし、一部を落ち葉(肥料の原料とします)や食料、また、
 薬草の採取、採集の場として利用してきました。そういう生活の延長線の上に
 今日の私たちのくらし(生活)があるのです。
  ですから、「森はみんなのもの」ではなく、持ち主のものなのです。森もみ
 なさんの庭と同じように持ち主がいます。ですから、持ち主の許可を得ないで、
 上にあげたようなことをしてはいけないのです。森は「ひと様の持物」なので
 す。
   私たち「山育ち」の者は、子供の頃から「よその山では、根のついているも
  のは、草1本とってはならない」、「生木はどんなに細いものでも切ってはな
  らない」と家の者から、厳しく言われて来ました。ですから、誰かが見ている、
  見ていないにかかわらず、今でもそういうことは、間違ってもしません。
   私の家の庭には約300種類の草木がありますが、山野から盗みとってきたもの
  は全くありません。森を破壊しているところから移し植えたものが、何種かあ
  りますが、それも持ち主のゆるしを得て移し植えたものです。どのような場合  
  でも、無断で掘りとってくるようなことはありません。
   みなさんが、山や野を歩くときには、これを忘れないようにしてください。
  また、山野の利用には「おきて」(ル−ル)があります。それも理解した上で
  活動してください。
 |  | 
森を利用するときには!
| 
| 
  森を利用するときのル−ルでは、今日のように、遠い地域や都会から人々が 
 やってきて活動することなど考えられてはいません。せいぜい、今の大字(こ
 れが明治22年ごろまでの村でした)程度の地域の人々が、森を利用することを
 考えていたに過ぎません。そういうスケ−ルでル−ルが成立し、それを守って、
 今に至っているのです。
  この山の利用についてのル−ルは、村内の山を持たない人にも、生活の維持
 ができるように、と配慮されていたものにすぎません。それが以下に示したよ
 うな不文律なのです。
  ですから、今日のように遠い地域の都市の住民などが山村へ出かけて行って、
 山菜、木の実やきのこを採取することなど想像もされていません。このような
 場合には、この山の不文律を拡大解釈して利用させてもらっていることになり
 ます。
  従って、森のある山村地域の人々の生活を侵害したり、善意を土足で踏みに
 じるようなことは間違ってもしてはいけません。
  数年前の秋、長野県の川上村というところで、山の持ち主が、ヒノキ(植林
 し50年手入れをしてきた)にからまったヤマブドウを残して置いたところ、
 その実を採りたいといって、ヒノキを切り倒した者が現れたという事です。持
 ち主は、いまだかつて例のない「ぞっとする」ような出来事だ、と村の広報に
 書いておりました。もちろんのこと、山の持ち主は何本か残っていた他の蔓も
 全部切ってしまったということです。
  このような乱暴な話は私も聞いたことがありません。林道(山の管理のため
 に造られた道で、都会の人たちのレクレ−ションのための道ではないのですが)
 を利用して入り込み、このような不法行為(盗伐といい刑法上の犯罪です)を
 したのだということです。
  特に、森はいつ収穫できるかはっきりしない後世のために、山の持ち主が樹
 木を育て、何十年という長い年月手入れをしているのですから、自然に育って
 いるのだなどと勘違いをしないようにしなければいけません。
  いうまでもないことですが、植えたものではない自然の木でも、持ち主でな
 い者が伐採すれば盗伐ということになります。
  山のル−ルも同様です。採取の仕方にまでも細かなきまりがあるのです。そ
 れをみんなで守ってきたから、今日のように野生生物の「種の多様性」が保た
  れてきたのです。
 |  | 
もとになる考え
| 
| 
(1) 森には必ず持ち主が居ます。 
(2) 森は未来の人々が使うためにと木を育てている「木の畑」なのです。 
(3) 森は人間以外のさまざまな野生の生き物の生活の場です。
(4) 森は持ち主の大切な財産です。みなさんの家の庭と変りがありません。 
(5) 持ち主ではない者の山の利用は、持ち主の善意によるものです。
(6) 常に利用者は利用に当たり感謝の気持ちを持つことが必要です。
(7) 林道は、森の作業のためにひらかれた道ですから、作業や運搬の妨げに
   なるような行為をすることは間違いです。本来は遊びで進入してはいけ
   ないのです。
(8) 林業家は80年、100年先の収穫のために、森の手入れをしているの
   です。当然のことですが、森の中へ無断で立ち入ったり、そこで樹木を
   伐採することは許されません。
(9) 森は水の源です。林業に携わる人々の日々の苦しい手入れの結果、都市
   の住民の使う水が、涸(か)れることなく供給されるのです。それなの
   に、都市の住民は手入れのための費用も水の代金も1円も支払ってはい
   ないのです。
   ことわっておきますが、水道料は手入れのための費用でも水の代金でも
   ありません。これは、水を皆さんの家の台所まで運ぶためだけの費用で
   す。
(10)「地球温暖化」防止の鍵を握っているのは、二酸化炭素を吸収し固定し
   ている森です。今、国際間(世界の国々の間)では、森を良好な状態に
   維持し、手入れをして、森の二酸化炭素を固定する量を増やすことが真
   剣に求められています。(「二酸化炭素を固定する」ということは、光
   合成により樹木が生長することだと考えて下さい。)
(11)どのような場合でも、ゴミは持ち帰る、利用した(遊んだ)跡は美しく、
   をモット−としたいものです。特に、ビン・カン・ペットボトルやビニ
   −ル類は持ち込まないようにしましょう。
(12)山は遊び場、スポ−ツの場や荒らし回る場ではありません。最近、自転
   車を担ぎ上げて山道(作業道なのだが)を走り下る者を見かけますが、
   これは大きな間違いです。もちろん、オ−トバイ(バイク)を乗り込む
   ことなどは非常識もはなはだしい行いです。両方とも「自由の履き違い」
   なのです。
(13)厳しく言えば、山は道と定められたところ以外は、持ち主でない者は利
   用できないのです。持ち主が作業のためにつけた道はここにいう「道」
   ではありません。森は皆さんの庭や田畑と同じだからです。
   私が勝手に皆さんの庭へのこのこ入り込んで勝手なことをし始めたら、
   皆さんはどう思うのでしょうか。
(14)森へ入り込み、目的も理由もなく、興味本位や競争で昆虫や植物を採集
   するのは間違いです。「生き物の命を粗末にするな、もてあそぶな」と
   考えるのが日本人の普通の考えです。
   どの生き物も「命は一つ」しか持ち合わせてはいないのですから、それ
   を真っ先に考え、生き物を大切にしましょう。
(15)天然記念物や希少な種の採取・採集は絶対にしてはなりません。特に、
   森では根の付いた植物の採取は一切してはならないのです。これも刑法
   (けいほう:悪いことをしたものを処罰する国の法律)に触れる行為で
   す。
 |  | 
森の持ち主ではない者は!
| 
| 
   山菜・きのこの採取などは、もともとは地域の住民の生活の維持のために
 許されてきたもので、遠くから入り込んでくる人々は対象にはなっていませ
 ん。このことをしっかり理解しておく必要があります。
  これからお話しすることは、森の持ち主から、大目に見てもらっているに
 過ぎないのです。
    
 (1)地域の住民が他人の持ち物である森で、とってもよいものは枯れ木、
    枯れ枝、立ち枯れ木だけです。
 (2)山菜・きのこの採取については、その季節には、地域の住民は、どこ
    の山でも採取が認められます。ただし、自然公園、大学の演習林、研
       究施設、留山(とめやま。入山禁止になっているところ)都道府県の
       森の類の施設内では採取は認められていません。
       
  ・採取は春の山菜、秋のきのこ、山栗、ブドウなどの果実類、冬のヤマイ
   モなどのみです。
  ・遠い地域から出かけて行った山の持ち主以外の者の採取量は、1家族が
   1食たべるだけ、採取することをこころがけてください。
  ・ユリ、カタクリ、ワラビ、クズなどの根(球根)の採取は飢饉の時だけ
   です。 
  ・山の栗は落ちているものだけを拾い、絶対に木を揺すって落としてはい
   けません。揺すって採ると窃盗罪を問われます。山の中であっても栽培
   栗(大粒)は「田畑の作物」の扱いなので、拾っても窃盗ということに
   なるので注意しましょう。山の栗には大粒の品種はありません。
 |  | 
森の持ち主ではない者はしてはいけない! 
| 
| 
 ・他人の山では、生きているものは草1本でも採取することは許されません。
 ・畑(山の一画のこともあります)の栗は栽培しているのですから、落ちて
  いても1粒も拾ってはいけません。
 ・ほだ木から出ているきのこを採取してはなりません。
   (シイタケは森林内にほだ木が並べてありますが、クリタケやナメコなど
  は、ほだ木を地中に埋めてあるので注意)
 ・農村では垣根はありませんが、屋敷と地続きの田畑へは間違っても入り込
  まないようにしましょう。こういう田畑は農家の庭と考えられています。
  植物等の観察や撮影をするときでも、持ち主に断り許しを得ることが必要
  です。
 ・立て札が立てられていたり、ロ-プが張られていたり、柵で囲われていたり
  して、採集が禁じられている山内での採取は、それが何であれ窃盗である
  ことに注意してください。
  山内を手入れして、タラノキ・ワラビ・ゼンマイなどを栽培していること
  が多いので注意しましょう。
 ・ワサビ田やその周辺からワサビを採集してはなりません。周辺の沢もワサ
  ビ田の持ち主と同じであることが多いからです。
 ・ワサビ田を含め、栽培している圃場へは断りなしに入ることは許されませ
  ん。 
 |  |