Live Doll(前編)

 

ソラリスが、壊滅した。フェイ(イド)の手で、齎された崩壊。その日を堺に、色々な事が起った。イドの事や、エリィとの因縁。ラムサスの追撃。瀕死のフェイを救ってくれた、トーラ師との出会い。本当に短期間に、沢山の事が起った。言葉では、現せない程に。そんなフェイ達は久し振りに、トーラ宅に立ち寄る。今後についてどうするべきか、話し合う為だ。エリィとマルーはニサンで、変化した「ヒト」の介護をする事が決定した。そして其れ以外のメンバーは、ソイレント・システムに放置されているウェルスを弔い墓地を作る。場所は勿論、キスレブ。こう決議した。話し合いが終わり各自、ユグドラシルへ帰還する。その筈だった。ゲブラー御用達「ライトフォージ級戦艦」が来るまでは。何故、今頃になって姿を現したのか。目的が掴めない。戦艦に気を取られていると、突如その艦から霧が舞い降りる。それに気付いたのは、霧から液体に変化した後の事。それはまるで意志を、持っている生物みたいに各自のギアに粘着し、糊のようにベットリとしている。気持ち悪い。目晦ましの、つもりなのだろうか。こうなったら、ギアから降りて状況を確めるまで。幸いな事に液体化した事がこうじ、直ぐに外に出られそうだ。フェイはヴェルトールから、出るべくキーを叩く。だが、出ようとした一瞬。異臭を嗅いだと同時に、煙幕が立ち込め意識を失う。ヴェルトールの隣には、ライトフォージ級戦艦が直ぐ其処にいた。

液体から解放され漸くギアから出たシタンはフェイと、バルトの名前を呼び安否を確める。答が帰ってきたのは、バルトだけ。彼が、見つからない。何処に行ったのか。捜索したいが日が暮れ始め之以上、外にいる事は却って危険である。シタンとバルトの2人は、ユグドラシルに半強制的に帰還した。シタンはベッドで休む暇なく、ブリッジを訪れる。フェイの安全を、確認する為に。ブリッジにある通信機材を、クルーに使わせて貰った。トーンを設定し、再び彼の名前を呼んでみる。返事がない。繰り返し、呼んでも答は帰って来ない。フェイの名を呼び続けるシタンに対し、1つの情報が入る。ヴェルトールが発見されたっと。キスレブから100m西に離れた場所に、置き去りにされていた。直ぐに回収され、搭乗者の確認を急ぐ。が、中身は物気の殻。乗っている筈の、彼がいない。不思議な事もあるものだ。搭乗者だけが、居なくなるなんて…
(霧(液体)が振って来たのは、ライトフォージ級戦艦の真下。と言う事は、まさかフェイは…)

「クク。お目覚めかな?フェイ!」
何だ?聞き覚えのある声。この声は…?目を見開き、相手を確認する。
「ラ、ラム…サス?」
意識が、はっきりしない。自分はどうしたのか。何故、ここにいるのか。これまでの経緯を、辿ってみる。霧から液体に変化した時、コックピット内で変な匂いがした。それから、意識を失ったのだ。目が覚めるとそこには、ラムサスがいた。つまり、そういう事らしい。覚醒する意識の中、フェイは全て思い出した。
「フェイ…貴様のせいで、俺は全てを失った!地位や名声までも!俺が一番欲しかった物さえ、貴様は!」
「俺は別に、何もしていない…何で、俺のせいなんだよ!」
「黙れっ!貴様がいるせいで!ヒュウガまでもが、この俺を裏切った!許さん、許さんぞぉ!」
ラムサスは剣を、取り出し構えた。危険を察知したフェイは、戦闘体勢に入る。呱々は、ライトフォージ級戦艦内の一室。どうも、眩しい…部屋を見渡すと鏡がびっしりと張り詰めている。どうやら、ミラールームのようだ。室内は狭く、薬品臭い。部屋に蔓延する光により、目が眩んでしまった。だが、どんな状況下でも抵抗し、呱々から逃げ出さねば。殺されるかもしれない。死ねない。あの人の元に、帰るまでは。…死にたくない。技を最低限、繰り出して行く。この空間内ではエーテルを、使ったとしても跳ね返ってきてしまう。使うだけ、体力の無だ遣いだ。結局、拳だけで抵抗する。だが、所詮は剣と拳、勝負は見えていた。剣を避ける彼に、ラムサスは太股に隠し持っていた短剣を、フェイに投げ突け服の上着の裾、ズボンと靴の境を巧みに固定してきた。合計4ヶ所刺さっており、短刀は鏡らしき物に、減り込んでいた。地面に押し倒される感じと、なってしまったフェイ。全て刃向う術を、奪われてしまった。最早、刃向う事も許されない。
(結局…俺はシタンがいないと何も出来ない…どうしよう…)
フェイは自分の無力さを、呪うしかなかった。こんな所で、死にたくない。生きたい。だけど、逃げる事も出来ない。ラムサスは剣をフェイに向け、目の前に立った。
(こ、殺される!)
死を覚悟し、目を自ずと瞑った。でも、何も起こらない。不審に思い瞳を開いてみると、ラムサスはフェイの服上下を縦の字に斬り裂いた。
「なっ、正気か!?ラムサス!」
「五月蝿い!」
ラムサスはフェイの、耳朶、鎖骨、脇腹を丹念に舌でなぞる。時には噛み、そして吸い付いたりもした。唾液と肌が擦れ、体は反応してしまう。
「や…やめ…ろぉ!…やぁ…やだぁ!ああ、やめ…」
「止めろ?本当に、止めても良いのか?お前の呱々は、もうこんなに濡れ濡れだぞ?…クク。」
そう返答するとラムサスは股間を触り、フェイの性器をしゃぶる。根元まで含み、舌で摩擦を加え焦らす。強烈な快楽がフェイの背筋を凍らせた。
「や…やああ…いやぁ!ああ!はぁああ!」
ここから、早く逃げたい。こんな辱めを受けるなんて…フェイの中で悔しさが込上げる。許される事なら、シタンに抱き締めて欲しい。けれどそれは、叶わぬ夢。自分がいる場所も分からぬのに、何故助けにくる事が出来よう。それにこんなに乱れている姿を、見られたりでもしたら…。そう思うと、泣きたくなってきた。でも、泣かない。呱々で泣けば、ラムサスの思う壺。それだけは、嫌だ。涙を自力で、我慢し愛撫に耐えた。それにしても、どうして自分は何時も皆に、迷惑をかけるのだろう。あの人を、哀しませる事しか出来ないのだろう。フェイは、自己嫌悪に陥ってしまう。それでも、体は快楽を欲する。既に体が火照ってりきり、短刀を外されても刃向う事が出来ない。ラムサスはそんな彼を鼻で笑い、壁に両手を付かせた。フェイは足をガクガク震わせ、立つので精一杯の様だ。そんな彼の秘所に左右八方、指を入れ掻き回す。1本、2本…3本。指を、増やしながら甚振る。始めはゆっくりと馴らせて行き、除々にスピードを付けていく。深く指を入れたかと思うと、出したり入れたりを繰り返す。ビクン、ビクンと体が反応してしまう。腰が自然と、動き出す。こんなに、感じるなんて。愛しい人以外の愛撫で感じたくない。そう、念じても無駄な事。彼の意思とは裏腹に、体は思うようにはいかない。
「俺の剣の鞘は、どんな味がするんだろうな?クク。」
ラムサスが持つ剣は、鞘を外す事が出来るらしい。彼は自分の剣の鞘を、引き抜くとフェイの秘所に挿入した。太く冷たい鞘が、彼の体を貫く。これでもか、というくらいに。
「! あぐっ!かはぁっ、はぁあ!」
「貴様は俺の奴隷だ!さあ、喘げ!喘げ!!ハハ!」
「あ、ああ。はぁああ。はぁ、はぁ…!」
フェイの息遣いが、見るからに荒くなる。
「フン。少し虐めた位でこんなに感じるとは、な。もっと気持ち良くしてやる!クク…」
グルグル、円を書く様に鞘を回す。時には力任せに押してみたりもした。濡れに濡れた彼の秘所は、思った以上にそれを締め付け加え込んで行く。
「ひゃあ、ああっ!や…やめてくれぇ!」
「やめろ、だと?こんなに濡らしてる癖に、何故やめる必要がある?ほら…今度は、逆に回しだ。良い声で、鳴け!」
「はううっ!やだ!抜いてくれ!お、可笑しくなっちゃうっ!抜いてぇ…!」
「馬鹿な事を。抜けと言われて、抜く奴があるか!フン。狂ってしまえ!」
鞘を力一杯、引きまわすラムサス。フェイの体は凄まじい熱に襲われ、身を捩じらせる。
「あひぃいい!」
「さあ、楽しみの時間だ。クク。今度は、どんな声で鳴く?フェイ!」
ラムサスはフェイの秘所に填め込んだ鞘を、一気に引き抜き自分自身を埋めてくる。前後に動かし彼を、責めた。
「ううっ!駄目ぇええ!動かないで…ひぃ!」
犯されているのに感じてしまう、己が情けなくて当々、フェイは頬を濡らした。
「締め付け、具合が良いな。ククッ。通りでヒュウガがお前を、離さない訳だ。……お前の中に、出させてもらうぞ!くぅ!」
「そ、そんなぁ…だ、出さない…でぇ!……うっ!ひぁああ!ああぁ…ん!」
フェイの願いも虚しく、ラムサスは己の欲望を彼の中にばら撒く。耐え難い熱、刺激が押し寄せてくる。どれくらい、犯されただろう。何遍も出し入れされたフェイは、失神してしまった。彼の手足は痺れ、微動ながら反応している。ガクッ、ガクッと、上下運動をしがら。
「惨めな姿だなぁ、フェイ。フフ…ハハハ!」
「閣下、随分…面白い事をなさっておられるのですね。」
隣部屋から、入ってきた乗組員により、ラムサスの高笑いは遮られた。個人情報を一切、不詳の彼女に許された名それは、「アイリーン」。彼女の髪は薄黒い紫色をしており、神秘的だ。それに、瞳は深い銀色をしている。アイリーンは頭脳解析で、腕っ節の強い部下である為、ミァンに信用されておりラムサスも一目置いていた。そんな彼女にこの現場を目撃されてしまった。立場がない。…面子、丸つぶれである。ラムサスはバツが悪そうに、アイリーンから視線を外した。
「何だ。ここは、立入禁止区域だ。用がないなら、出て行け!」
「御言葉ですが、閣下。こんな事をして、どうされるんですの?私が御見受けするに、相当激しく抱かれた様子。その証拠にこの忌わしいラムズの股からは、血が出ていますわ。それに、痣が酷い。この侭だとミァン様にばれますわ、ね。でも、御安心を…ミァン様には、内緒にして置きますゆえ。」
「……ぐっ」
「そんな怖い顔なさらないで。ミァン様に、怒られるではありませんか。それよりも閣下、このラムズどうする、おつもりで?」
「泥棒猫は、罰を与える。フン。ドライブでも何でも打って、殺せば良い!最悪のケース、公開処刑も悪くない。」
「そうですね。それなら、ドライブが最適ですわ。それに今なら、良い物がありますし。」
そう言うとアイリーンは、注射針を取り出しラムサスに見せた。注射管の中に沈殿している溶液は、不気味に澱んでいる。いかにも、薬品らしい香を漂わせていた。色素は黄色に近い山吹色だ。
「閣下、この薬品はネオ・ドライブ・インパクトと申します。これを投与してみては、いかがでしょう?」
「何?ネオ・ドライブ・インパクト?…聞いた事はあるが、詳しくは知らん。説明しろ!」
「了解。このネオ・ドライブ・インパクトは従来のドライブとは異なり、人を支配する物ではなく、被検体自身の人格自体を壊す為に作られました。これを投与されると被検体は、他者との記憶を除外され初期化されます…最終的には脳神経にまでドライブが浸透し脳の神経細胞を麻痺させ人格を破壊するのです。いかがです、閣下。投与されますわね?」
「無論だ…至急、フェイにこのドライブを投与せよ。それにしても、人格を破壊するか!面白い、面白すぎるぞ!アイリーン!アハハ!」
「閣下の役に立てて光栄です。これから投与しますわ。それでは、失礼します。」
アイリーンは退室し廊下に突き当たると、誰とも分からぬ相手と言葉を交す。
『獲物は餌に食いつきました。これから被検体に、あのドライブを投与します。』
『そう、ご苦労様。貴方は本当に、役に立ってくれるわね。』
『いえ、そんな事は。』
『アイリーン、連絡するまで身を隠していなさい。いいわね?貴方みたいな、優秀な部下を失いたくないの。』
『了解。では、私は之で。』
『クス。これから、どうなるかしらね。全ては…貴方次第よ、カール。』

深夜ユグドラシル、ブリッジに3人の姿があった。行方不明のフェイを、捜索する為だ。シタンはヴェルトールに付着した、例の液体を微粒ながら検出し成分を調べていた。成分の分析中、興味深い物が発見される。…ウェルスの一部らしいドロドロした皮膚が、発見されたのだ。このような物が何故、入っているのか。そもそも、ウェルスはソラリスが、残酷な実験を重ね作り出した物。と言う事は、ソラリスの残留人が作ったのか。心当たりはある。あれこれ、シタンは目を細めながら、考え込んでいた。フェイを攫った目的・理由などを。そんな時、ユグドラシル副官、シグルドに口を挿まれた。
「ヒュウガ、ライトフォージ級戦艦にフェイ君がいると思っているんだろう。」
「やっぱ、そうなのか?はっきり、言ってくれ。先生!」
シグルド、バルトのご両人に同時に言い寄られ、シタンは少々たじろいでしまう。一呼吸置き、答を返した。
「…先程、ヴェルトールから検出された物体からは、ウェルスの皮膚が摘出されました。念の為、ライトフォージ級戦艦メインコンピュータをハッカーしてみたんです。その時、フェイと思われる人物の情報をみつけました。これらをまとめた結果…フェイはあの艦にいると思われます。」
「やはり…な。ソラリス亡き今…フェイ君を攫いそうな連中といったら、ゲブラーしかいないからな。ヒュウガ、行くんだろう?」
「ええ。シグルド、私をライトフォージ級戦艦上部まで運んで下さい。そこからは、私が乗り込みフェイを…」
「了解した。だが、ヒュウガ…お前1人で、侵入するつもりなのか?」
「そんな…先生1人なんて無茶だ!俺も行く!フェイは俺のマブタチだし、連れて行ってくれ!」
「いいえ、若君。今回は、遠慮してもらいます。若君には呱々に残ってもらい、皆を指揮して貰わなければなりませんから。」
「だが…先生!」
「良いですか?…考えても見て下さい。相手は上空ですよ?例え2人でも3人の少数で行動しても、直ぐ見つかり策は失敗してしまいます。それなら単独行動の方が遥かに、能率が良い。つまり、そういう事です。」
「…分かった。」
バルトは少々、辛そうに答える。それとは正反対にシグルドは、シタンにさらりと言った。
「ヒュウガ…お前がそう言うのなら、俺はもう何も言わん。絶対に…帰って来い。フェイ君と一緒にだ。いいな?」
「ええ。すいません、若君…シグルド。…それでは、お願いします。」
「…よし。」
シグルドはユグドラシルを操作し、上空を目指す。始め現れた場所にその戦艦は、姿を留めていた。いかにも、待っているかのように。その間シタンはギアドッグに寄り、装備を確認する。シタンの専用ギア「ELフェンリル」の燃料等、時間が許す限り入念にチェックした。所変わって、ブリッジにいるシグルドの元ではライトフォージ級戦艦に見つからぬ様、雲の中に入る。細心の注意を払い移動していく。予想以上の気圧の重さと風圧に、ユグドラシルは軋み始める。この侭、行くと中にいる人間の方が危ない。限界が近付くとシタンに知らせ、侵入経路を説明する。そしてギアドックの入り口を開き、外に飛び出した。敵の戦艦に鮮やかに飛び移り、この戦艦にあるギア格納庫の直ぐ隣にあるパネルを剥がす。そこしか、侵入ルートがないとクルーからも、シグルドからも嫌な程注意された。その格納庫らしき場所を発見すると、言われた通りパネルを捜す。南斜め下に光が照りつけられ、パネルの存在を教えている。パネルは、小型でひし型をしていた。シタンはゲブラーにばれぬようギアから降り、物音を立てずに開き侵入する。靴音が廊下に響く。内部は意外と広く、十字路の廊下が目に映る。シタンはラムサスを捜すべく、ブリッジを目指した。大体どこにあるのか、検討はついている。予め艦のコンピュータにハッカーした時、場所確認しておいたのだ。ブリッジまでの行き方を、脳裏に焼き付けている。現在地から十字路を真直ぐ行きそして右、次に、左の繰り返し。迷う事無くシタンは、目的地へと走った。そして…目的部屋の前に立つ。ドアを開け様と、近付こうとした瞬間。自然と、それは開いた。出てきた人物は、何とラムサスだ。この調子良い、タイミングにシタンは[罠か?]と疑りをかける。
「やはり…来たか。」
「ええ。フェイを迎えに来ました。貴方に会いたくて、来たわけではありません。さあ、フェイに会わせなさい。」
殺気を漂わせ、叫ぶ。その声にはラムサスに対する、嫌悪と憎しみが混じっていた。
「フン。いいさ、返してやるよ。」
(…?…)
ラムサスはフェイを犯した、あの部屋にシタンを案内する。ブリッジから2分程、歩くとその部屋に突き当たった。
「ヒュウガ。ここに、お前の愛しいフェイがいる。さあ、入るが良い。」
(…カール、一体…何を考えている?)
ラムサスに言われた通り部屋に入ると辺りに、張り巡らされた鏡に驚いてしまう。どうして、ゲブラーの戦艦にこんな部屋が必要なのかと。鏡が反射し良く状況が掴めなかった、が。除々に目が慣れ、周囲がはっきりし始める。すると、ある人物が目に入ってきた。鏡に縋るように、座っていたフェイだ。両足を左右に開き、頭を右に曲げている。何かが、可笑しい。
「フェイ!…フェイ!」
何度も彼の名前を、呼んでみるが何も答えない。何も、話してくれない。それどころか、彼の瞳孔は狭まっている…焦点も定まっていない。どうしたというのか。これでは、まるで人形…或いは、屍ではないか。彼の体を見ると痣がついており、心なしか血の匂いと薬品の香がした。彼の身に何が起こったのか、直感したシタンにラムサスは話しかける。
「クク。どうだ?ヒュウガ。感動の再会は!」
「カール…貴方、フェイに何を…」
「さあ、な。ヒュウガ、この俺がそう容易くフェイを、返すとでも思ったか?さあ…刀を抜け!」
ラムサスは愛用の剣を、引き抜き構える。
「フェイ。少し待っていて、下さいね…直ぐ、終わらせますから。」
『うん、待ってる。シタン。』と笑顔で、言って欲しかった。そうすれば、何でも耐えれる気がするから。でも、今のフェイは、何も言ってくれない。フェイの瞳は已然の光を、放つ所か…死んでいる。もっと、早く迎えにくるべきだった。こんな事に、なるくらいなら。自分自身を自嘲しラムサスに対し、憎悪の念が暴れ出す。戦う決心したのか、シタンも刀を抜き構えた。愛刀でラムサスの剣に立ち向かう。刀と剣の軋む音が、辺りを包む。時には純粋に力だけで攻め、又ある時は鏡の反射を利用しエーテルで攻撃をしたり。旧エレメンツ同士の戦いは、簡単に終わる気配を見せない。ひいては攻めの形でシタンは、ラムサスを追い込んだ。もう少しの所で、辺りは暗闇に包まれる。どうやら、鏡の反射を利用し過ぎた為、割れたらしい。この暗闇の中、戦いに支障を来すとおもいきや…彼等の持つ武器は刃物。光なくとも、その場所を位置付けてくれる。そして狭いながらも、攻防を続ける。だが、除々にこの戦いにも、終焉が見えてきた。シタンは割れた鏡の破片を、ラムサスに投げ、一期に切り掛かったからだ。シタンにすれば所詮、ラムサスなど赤子に過ぎない。ラムサスはその場に倒れると、シタンに剣を奪われ刃向えない。そこで、彼に自白させる事にした。ここで、何があったのかを。
「では、聞かせてもらいましょうか。カール…貴方、フェイに何をしたんです?」
「ちょっとした、復讐をしたのさ。無理矢理、フェイを犯しドライブで、人格を壊した。要するに、そういう事だ。」
「ドライブで、人格を破壊したですって!?そんな…ドライブは本来、人を操る為の物でしょう!?」
「クク。だが、壊せるのだ。このネオ・ドライブ・インパクトはな。」
「何ですって!それでは、フェイは…」
「ああ。もう死んだも同然。例え、奇跡的にドライブが切れて、元に戻ってもお前達の事は覚えていない!何故なら、ドライブで記憶を削除されているんだからな!ハハッ!」
「カール…貴方…どうしてそこまで、フェイを憎むんです…彼が貴方に何か、悪い事でもしましたか?」
「フェイ!俺を打ち消す、存在!忌わしい!忌わしい!!この男が生まれたせいで、俺は…廃棄処分にされ捨てられた!それでも、俺は必死にそこから這い上がり、生きようとしたのだ!それなのに…それなのに!!フェイが現れ…全てを奪った!…お前までこの男を選び、俺を裏切った!…信じていたのに!」
「カール、貴方を裏切った訳ではありません!私は只ソラリスという国を、許せなかった!人を人として見ず、家畜同様に扱うあの国が…!」
「黙れ!お前のいう事など、聞く耳もたん!」
「…カール。」
「呱々には、もう用はないだろう。とっと、失せろ!」
「ええ。今回は、之で帰りますが…今度、フェイに何かしたら、只ではすみませんよ。」
シタンはラムサスに忠告すると、最初来た格納庫のパネルへ戻る。パネルを再び開き、外に出た。ELフェンリルに搭乗し、ユグドラシルへと帰還する。戻るとシタンはフェイを医務室のベッドに寝かせ仲間全員に、現状況をガンルームで説明する。フェイがドライブで、記憶を失い人格が破壊されたという事を。
「そんな…信じられません。先生、本当にフェイは…」
16歳の少年ビリーは、フェイを兄のように慕っていた。その彼自身が、壊れてしまったなんて。…信じたくない。
「残念ながら、人格が破壊された事は事実です。例え、再起したとしても私達の記憶は、失われるそうです。」
普段と同様の言い回しに、ビリーは怒りを覚えたが何も言わない。シタンとて、辛いに違いない。だから、あえて何も言わない。だけど、フェイの顔が見たい。ビリーはフェイに会わせる様、シタンに懇願した。答はYES。仲間一同は、医務室でフェイを目の当りにする。意思を持たぬ瞳、まるで生き人形。皆が抱いた、第1印象である。だが、フェイが帰ってきた事には、変わりない。皆は不謹慎にも安堵する。そして、解散し各自其々の部屋に戻った。そして医務室には、シタンとフェイだけになる。改めて、彼の容態を確認した。
「フェイ…何故、何時も貴方だけが、苦しまなければならない!?どうして…!」
人格を失った彼は相変わらず、何も返答してくれない。それが、更なる悲しみを誘う。フェイを再起させたい。例え記憶が失われているとしても、今の状態よりはずっと良い。何か再起させる方法はないか?
(そうだ!トーラ師なら!あの方なら、ナノ医療でフェイを!)
シタンはブリッジに赴き急いで、トーラ師の自宅まで連れて行くようシグルドに告げた。

 
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<言い訳>

まだ、続ける予定なのか…私。ああ、ラムフェイを書くつもりが、少し違う方向に言っている気がするよう (^_^;)

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