傷…そして(03)
Rushifa 作
「い、いきなり何なんだよ。俺、別に悪い事してねぇじゃんか!!」 目を丸くしながら叫ぶ青年。…みかけは大人風なのに言葉遣い、顔つき 「そうですよ、三蔵…。いきなり銃を向けることないでしょう。」 睨み目をむけるがそれをもろともせず、ただ微笑んでいる奴。 ――チっ…。 それにしても、こいつを見てると腹が立つ。 「そうそう。あのバカ猿って決まったわけじゃねぇんだし…」 冷汗かきながら悟空と名乗った青年が抱く犬をつっつく悟浄。 「あの…今日、宿まだみつからないなら…俺の家、きてよ!」 さん付けして呼んだ事がないせいか、上手く顔をみれない。 『僕らしくありませんねぇ…』 「…悟空でいいよ、何か変な気分。お兄さん達とは始めてあったのに前から知ってる気がする。」 俯きながら犬に頬擦りし涙うかべている。 ――本当にこいつは…なんだ? 人が訝しがっているというのに、話しをすすめる八戒。 「とりあえず…自己紹介、しますね。こちらの金髪さんは三蔵、こっちの格好いいお兄さんは悟浄。 小さな子供みたいに犬を抱き上げ喜びまわす悟空。 「なんか、さ…三蔵さんって太陽みてぇ!」 あいつと同じ事、いってやがる…。 「それじゃ、三蔵!…腹へったからどっか食べにいこ!!」 ……腹………減ったか。随分、懐かしい響きだな。 「三蔵、僕と悟浄はこれから居酒屋さんに行ってきますんで、悟空と一緒に食事してきてください。」 軽い口調につけくわえ、肩を抱き合いながらいわれても説得力ねぇ。 「俺とじゃ…嫌?さんぞー…。」 不意に腕を掴まれ目がぶつかり合う。 「初対面の奴にお前は皆、そう媚びるのか?」 犬を強く抱き締め大きな瞳が揺れている。 「とにかく、食堂でもどこでもつれてけ。」 心底、嬉しそうに微笑み俺の手を引っ張り走り出す。 「ここの中華料理屋さん、すっげー美味いんだ!!あれ?菩薩ババアだー!!」 あ?誰の事いってやがる。悟空の目線と合わせると、意味深な笑みを浮かべる 「よう、金蝉…。悟空との再会、楽しんでるか?」 口元だけで微笑を作り近付いてくる。 「何、いってやがる。悟空は死んだ。」 目を吊り上げ隣人を睨み上げる。 「……。」 こいつとはなすと面白くねぇのか、そっけなく答えちまう。 「単刀直入にいやぁ…俺がその術を使ってあいつを助け、生を長らえた。」 すると何か?1年前、悟空は死なず…ただ、姿を消しただけ。 「お前らの記憶と引き換えに、生かしてやった。」 本当は嬉しいはずなのに、素直によろこべねぇ。 「なー、菩薩ババアとさんぞーって知り合い?」 目をぱちくりしながら拗ねる悟空に目を合わせることなく彼等とは全くの逆方向を歩き出す。 |