傷…そして(02)
Rushifa 作
(三蔵side) 中途半端な別れを向え数日。 「…チッ…」 もう、何度、舌打しただろう。 ――俺の心にいきなり割りこんできやがった…。 壁にやつあたりしながら今は亡き人物の名を呼ぶ。 ――悟空…。 五月蝿いだけのただの子供だと思っていたのに。 ――…らしくねぇ…な。やめた。あんな猿の事、考えんのは。 新しい煙草を吹かし空を見上げる。 ――雨…か。 恐らく今の俺を見たらあいつは…悲しむだろう。 ――馬鹿猿が…。 それにしても、腹が立つ。強くなるとほざいておきながら…。 ――守ってやりたかった…。 あいつが離れる事を1番、恐れていたのは他でもないこの俺。 …もう、会えない…。 涙?…勝手にでてきやがる…。 ――冗談じゃねぇ。 俺は生きなければならねぇんだ。 ベッドに横になる度、あいつの顔が思い起こされる。 (悟浄&八戒side) 「いつまで、そう責めてるつもりだ?」 思いもよらぬ言葉をかけられ、八戒が失笑するのも気にかけず悟浄は続ける。 「んなことで、悩むなよ。ばーか。」 「お前は頑張った。それで駄目だったんだから、仕方ねぇよ。…だからお前は悪くねぇって。」
己を責めつづけていたのか体の震えがまだ止まらない。悟浄の温もりが …暖かい…。 悟空は太陽を得ても、この温もりを知らずに逝った。 ――そう…思うと涙が止まらなくて…辛いんです…。悟浄…。 仲間の1人が死んだ。 ――1年後 「さんぞうっ!さんぞーーー!!」 3人揃って、訝しい表情を浮かべつつ後ろを振り返る。 「さんぞう〜〜?」 ――ったく…うっせぇな…。 苛立ちがつのり“何度も呼ぶな”と怒鳴ろうとした瞬間、背後から小犬が現れる。 ――? 「さんぞう!!捜したんだぞ!?」 子犬を抱き抱えながら心底、嬉しそうに笑う青年。 ――!? 「さんぞー!くすぐったいてばー!」 舌打するのも忘れ唖然とする三蔵達を尻目に、その青年は金色の瞳を輝かせ小犬に微笑む。 「……………おい、あれって…」 ――っざけんな…。 「さてっと、帰ろうか!って…うわ!」 次の瞬間、三蔵とぶつかり見事、互いに尻餅をつく。 「いってぇ…何しやがる!!殺されてーか!!」 こいつ、無垢な瞳で見やがる。…厭味か。 「……チッ……お前の名は?」 きょとんとしている青年に銃口をむけた。
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