傷…そして

Rushifa 作

少し修正。…文才なし(T.T)

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ごく普段通り…街を巡り森を抜け旅をしてるだけだった。

――あの時がくるまでは。

旅の恒例行事と言って良いほど現れる妖怪達。
俺は力をもてあますように、奴らと戦い勝利して…その直後…

――突然、何か異変が起きた。

何かが崩れる音と共に。

……?
生暖かくて…何か懐かしく哀しい香りがする…。

これって…まさか。
恐る恐る手を見ると…そこに触れたものは紛れもなく俺自身の血…。

…流れだしたまま止まらない…身体が凄い勢いで朽ちてく…。
手が…腕が…そして…思考すらも…溶けそうな奇妙な感覚。

――なんで?

俺はただ…いつも通り妖怪を倒し三蔵の傍に行こうとして…

それから…
不意をつかれ妖怪に背中を切り裂かれたと同時に身体を貫かれた、んだ…。

「!!」

――敵は?!敵はどうなった!?

力が抜ける身体を引きずり周囲を見渡したその刹那。
既にその妖怪の姿は消滅しており俺の体は誰かに抱かれていた。

「……だ…れ?」

上手く声にだせなくてもどかしくてたまらない。

「…黙ってろ。」
「さん…ぞぉ?」
「油断すっからこうなるだろうが。馬鹿猿…世話やかせんじゃねぇよ…」

――もう…声も…でなくなった。

何もかもが…壊れてく…。

どうして…こんな事になったんだ?
…妖怪にはすきを見せずちゃんと勝ったのに…。
身体全体が焼けるように…熱くて…力が…入らない。

――三蔵…。

俺、このまま死んじゃうのかな?
最後くらい素直になるんだった…。
言っておけば良かった。“好き”って…。

ああ…八戒が心配してる。気功…もう手遅れなのに必死で…。
悟浄の奴…泣いてるのかな…それはないよ、な。

――もう何もみえねぇ…よ…。

あれ…三蔵、なんて情けねぇ顔してんだよ。
俺が死んだって旅は出きるし…仲間だっているじゃん。
そう…俺なんて捨て駒…。

ソウ…オモッテイタカッタ…ヒキカエセナクナルカラ。
スキッテカンジョウガボウソウシソウダッタカラ。

目を静かに閉じ息を僅かに吐く。
妖怪はその身が砕け散り死ぬ運命…。
俺も散ばって塵になって消えていくのかな…。
三蔵に何も伝えられないままで…。

「…これは…何の冗談だ?」

愛しい人の声が再度、耳につく。
…掠れた…座礁した声で。

それにしても…人がこういう時になっても馬鹿猿っていうんだな。
この人は。しかも冗談なんて…いうわけないだろ。
なんか、腹が立つ。なんでこんな奴、好きなんだろうって。
むかむか。そんな無駄なこと思ってるからほら…。
もう、俺の全てが消える。死を迎える為に…。

死んだら…どこに行くのかな。口だけ動かしたら伝わるかな?俺なりの最後の言葉…。

――500年間、ずっと1人で淋しかった…解放してくれてありがとう…。

“さ…んぞ…ぉ…す…きだ…った…”

「……っ…馬鹿…が…」

誰かの悲痛な叫び声が聞こえたけど…俺にはもう届かない。
たった今、「無」になったから。

三蔵…好き。大好き…。
ただ縋りつけるからじゃないよ…。
淋しくてとか、そういうのじゃなくて…

“愛してた”

確かに始めは太陽のように眩しくて憧れでしか過ぎなかったけど…。
いつからか、俺の心に住み始めたんだ。
ちょっとした会話…微笑み…喧嘩とか。
もう、できないけど。

…ずっと続くと思っていたのに…。

“悲しいってこういう事…なのかな。三蔵…”

姿形なくした魂…今、風となり声となる。

サンゾウ…コンドウマレカワルトキハ…ズットソバニイテ…ネ…。

僅かな声。遣る瀬無い想いを感じつつも辛うじて正気でいる、らしい。
悟空は知らずに逝った。己の気持ちも知らぬまま。
どれほど愛しく恋焦がれ悟空を壊さないよう遠ざけてきたかも…。

「…っ…さね…ぇ…」

言葉に言い尽くせぬ想いを背負いつつ空をただ眺めていた。

つづく