渇 望

Rushifa作

最近、誰も相手にしてくれない。
…バルトと先生すら、俺の顔みて逃げてく。クルーすらも。
何で?俺が何したって言うんだよ。
…理由を聞いても何も答えてくれない。
果たして俺は何かしてしまったのだろうか。取り返しのつかない悪事を…。
でも、思い出せないんだ。思い浮かばないんだ。
…自分に否があるのか、本当に嫌われてしまったのか。
…先生すら口を聞いてくれないなんて…始めてだ。
俺が必要とされるのは戦闘の時のみ。でも…何も言ってくれない。
何で…こんなに無視されるようになったんだろう。
嫌だよ。嫌…だ。助けて…小さく口に出してみる。

時折、降る雨。自室で聞く冷たい…雨音。人が恋しい…。淋しい。淋しい。誰かと話したい。でも、誰も口を聞かないどころか…邪魔呼ばわりされる始末。俺はここにいてはいけない人間なんだろうか。もう、分からなくなってきた。

それもそのはず、嫌われたと思う日から2ヶ月もすぎたのだから。こんな生活…1日でも耐えられない…。せめて愛するあの人だけでも声を聞かせてくれたら…。ただ、一言「意地悪しすぎました?」って…今までの事を否定してくれれば…それだけで良いのに…。

過去、俺の命を助け…愛を教えてくれた人は俺を…避け疎ましい目で見てる。2、3日前…ソラリスに乗り込んだ時から…皆…変になってしまった。どうしてなんだよぉ…。

なんで、俺だけを無視するんだ!話してくれないんだ!目で邪魔なんだよって…訴えているんだ!!

『ワレ ヲ モトメヨ』

雨音を遮る凍て付いた声。覚えがある。グラーフ…。ソラリスが崩壊した後、消えた人…。
何故、今、俺に声をかけているんだろう。俺を必要としているのだろうか。

『オマエ ハ ヨウズミ ダ ワレノ テヲ トレ』

引っ切り無しに脳に叩きつけられる音声に頭を抱えつつも少し期待している自分がいる。そうだ、ここには誰も俺を必要とする人がいないじゃないか。シタン先生すらも俺を見放したのだろう。もしかすると…俺に対し絶望したのかもしれない。何らかの理由で。俺が接触者だという事に…問題があるのだろうか。頭に去来する思考の数々。グラーフの声は
除々に近くなる。何だろう。不思議と怖くない。確実に近付いているのに…。

もう、俺には失う者…も何もないからそう…思うのか、な。先生…バルト…皆…どうして、俺を白い目で見るんだ?…好きだったのに、皆が…。温もりに満ちたこの場所が好きだったのに…。

友達って何だろう。愛するってどういう事だったっけ…。本当に必要なものなのかな…それは。

モウ…ドウデモ……イイヤ…。

目を閉じ目の前にまで迫った者を直視し一言かたりかけてみた。
「俺が…必要なのか?」
『至極当然の事。無駄足を運ぶほど、愚かではない。』
即答で返る言葉…。人と会話なら当たり前のこの事が…今までは嬉しい事だと思っていた。本当はどう思っていたのか俺すら分からない。…人と接するのは楽しい、傍にいるのは嬉しい事…そう無理にでも思おうと無意識に思ってた。そうしなければ俺の中で何かが弾けそうだったから。俯き考えにふける俺に対し目の前の人物はすぐに来いといわんがばかりに手を差し伸べてくる。

グラーフ…俺から大好きな人達を奪いラハン村を崩壊へと誘った憎きあの男…。だが、考えを180℃方向転換してみるとどうなる?例えば彼は俺から全て奪った訳ではなく俺にとって大事な親友、恋人、いまある仲間。彼等は俺にとって本当は必要ない、邪魔な存在なんだと…教えていてくれたとしたら?…もしそうだとしたら…俺は…。

とにかくもう…ここには俺の居場所はないんだ。そう…俺はもう、空っぽ。そんな人間の行き付く先は…想像も出来ないけれど…彼等について行って見よう。

そうすれば、一人でなくなる…。漸くこの苦しみに満ちた世界から開放される…。

―ケシテヤル ナニモカモ―

外部から出された1本の光を頼りに俺は彼の手を取る。それがどんな結末を呼ぼうとしても。そう…それが、人間を信じることに疲れた俺が出した答え…。


つづく

 

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