Dead Heart(5)

 

ここ数ヶ月、消息を絶っていた仲間が突然、敵となりバルト達の前に現れた。感情なき兵器「フェイ」。彼は表情を全く変えることなくプリス・ニサンの大半を壊滅させ…かつての仲間を殺そうとした。それでも、フェイを取り戻したくてバルトはニサン大聖堂へと向かうが、そこで見たものは…彼の淫靡な姿。シャーカーンを悦ばせ、彼を受け入れる男婦。敵と…俺の友が…寝ている…バルトの中で遣り場のない怒りと悲しみが交錯し長い間、ニサン大聖堂にて鳴咽した。シタンとビリーが駆け付けるまで淡々と…それは続いた。バルトは彼らに宥められ、冷静さを取り戻すが…彼は元気が無く俯いている。それでも…ユグドラシル、ガンルームで状況説明を求められた彼は、気丈にもシャーカーンがフェイに行っていた事…彼が敵にしていた事…全てを己が知る限り語る。皆は想像以上の実状に、騒然としたがシグルドだけは違っていた。彼は…主の事よりも、敵の事を考えていた。フェイ君は、若の親友で誰よりも…心優しい少年だった。その彼が極端に…変貌できるものだろうか?幾ら操られてるとはいえ…不自然だ。彼の報告によると…フェイ君は感情のなきまま、ニサンの住民を襲ったと言うが…誰も殺されていない。非難した住民が不可思議な事を…言っていた。彼は住民に襲い掛かる時、とても辛そうだったっと。小さな子供が言うのだから、嘘ではないだろう…只の殺人機が果して、そういう表情をするだろうか?何より不可解なのは…何故、若達の命を奪わなかったと言う事だ…戦闘途中ヒュウガが若を庇ったり、フェイ君に話しかけたみたいだが。それにしても…引っかかる。ヒュウガの腕力が強いとは言え…彼ほどの実力者なら逃げようと思えば逃げられたはず。何故、身を捩らせるだけで…逃げなかった?更に彼は突然…現れたシャーカーンに駆け寄り若がかけ付けた時は、彼の慰み者になっていたという。フェイ君が…本当に洗脳されているというのなら…、奴を受け入れはしても若にあてつけだと言うかのごとく、乱れなかっただろう。そもそも、男は情事中に喘げない。…女性とは異なるのだから。…だったら、何故だ?…まさか。これは推測ではあるが、…あの時…シャーカーンが何らかの方法でが若の命を狙っていたと仮定したらどうなるだろう?彼は若を守る為にわざと、シャーカーンの元に駆け寄り慰み者になったのでは?…そう考えると…全て辻褄が合う。だがあくまでも、これは私の推測。証拠が無い…ヒュウガはこの考えをどうとる?…彼に聞いてみるか。シグルドはバルトの報告が終わるのを、見計らいシタンを機関室へと呼び出し今まで感じたことを彼に説いてみた。
「お前は…どう思う?」
シタンは旧友の真剣な眼差しに親近感を抱いていた。彼は過去、何回…私に意見を求めてきただろう。その度に同じ言葉を繰り返す。
「…シグルド…昔から貴方の勘や推測は全て当たっていたでしょう…今更、私の意見を仰がなくとも…まっ、強いて言うなら確証がないと言うことですかね…」
「そうか…悪かったな…ここまで連れ出して。明日は若がアヴェに行くと言い張っている。恐らく…フェイ君を連れ戻すつもりなのだろう…ヒュウガ…彼が奴に操られてるのかは…定かではないが…お前がフェイ君を救ってやれ…彼の為にもな。」
「……ええ…」

シタンとシグルドは重い心を押しながらも、各自の場所へと戻っていった。

◆◇◆◇◆◇◆

ファティマ城…大広間、シャーカーンの怒鳴り声が響く。
「フェイ…お主、何故…あの時…命令なしで駆け寄ったりした!?…お主が近寄ったりしなければ、バルトロメイをあのまま銃殺していたものを…!!」
「……」
「フン。見え透いた芝居は止めるがいい…わしには、もう分かっておる。お主がバルトロメイを守る為に、洗脳されていたフリをしていたという事をな!そうでもなければ、命令なしで駆け寄るはずがない!そうであろう!フェイ!!」
シャーカーンの言葉を聞き届けた時、フェイの額に冷汗が流れる。やはり…ばれていた。己が洗脳から解かれているという事を。…確かにロゼに媒介を埋められ一時期…正気を失っていた。そのせいか、俺は…プリスを滅亡寸前まで破壊し人を殺め…幼子の命さえ奪った。大凡の住民を死傷させ…最後の一人だと思われる幼女に手に掛けようと凶器を振り翳した…次の瞬間。その子の母親が現れ、己を犠牲にし彼女を守った。必死に庇う母親に対し俺は何故か…分からないが…急に、呼吸困難と激しい頭痛に陥り…気を失っていた。我に返ったのは、数分後の事。正気を取り戻した俺の目に映った、死体達の山々と酷く錆びた血の香り。…自分が殺したと自覚するのに左程、時間を要さなかったが…罪の意識に気が狂いそうだった。あの日、どうやって主の元まで返り付いたのか…記憶がない。それが…第一の粛清時の出来事だった。そして再びシャーカーン直々の命令が下る…ダジル粛清。…俺は彼等に洗脳が解けてる事を悟られぬよう…建物を破壊する一方、住民を一点に集中させ荒廃した建物に匿う事に専念した。そうする事により…廃墟に取り残された住民をバルトが保護し…助けてくれるだろう。そう信じ…ただ、破壊に徹した。彼が住民を救う事で…バルトの支持率も上がり…俺も敵に怪しまれずに済む。互いに最善の方法…ニサン粛清も同様に破壊のみ手掛け…すぐ退散する…そのつもりだった。だけど…バルトはニサンの状況に気づき…来てしまった。久し振りに見る親友に懐かしさと…鈍い刺を感じながら俺に気づかなければいいと胸中…ずっと思ってた。しかし…それは叶えられず…彼は俺に気付き…驚きを隠せないといった表情を浮かばせた。その時の見せた彼の辛そうな顔。渇いた心が痛む。悪い事は重なるもので…シャーカーンもニサンに待機している…彼に勘付かれぬよう…親友に攻撃を仕掛けるが…彼は動揺を隠せず立ち尽くすだけ。そんな折、奴が…俺達の前に現れた。彼の右手に隠し持たれた歪に光る黒い銃口。バルトを殺す気だ…俺は親友を守る為、敵に掛けより…奴の慰み者になった。まさか、その事が…シャーカーンを怪しがらせ、彼の怒りを煽る事になるなんて。…俺の行動は、軽薄な事だったのだろうか。計算に狂いが生じるなんて、考えもしなかった。…バルトと同様シタンと再会した…あの時点で…彼に殺してもらっておけば良かった。もう…死に場所を選んでる暇はなさそうだ。何故なら、奴にたった今…ばれてしまったのだから。
「どうなのだ…フェイ。」
「ああ…確かに俺は…正気に戻ってる…バルトを守る為に芝居もしたさ…まぁ、お前にばれてるなど…計算外だったがな。さあ、どうする?俺を殺すか?」
「…お主を殺すくらい…いつでも出来る…フェイ…もう少し利用させてもらう。ロゼ…例の牢獄に再度、投獄せい…バルトロメイがここまで…辿り付くその時までこの犬を犯し続けるのだ…身も心もズタズタになるまで…無限にな…惨めに犯され傷ついた親友を…奴がどんな目で見るのか…想像するだけでも愉快だ…」
「…俺はどうでも良いが、バルトは殺させないぜ…あいつは…誰よりも傷付きながら、生きてきたんだ…お前のせいでな!俺が…バルトを守る…殺させない…」
フェイは右手を集中させ、気功術「銀河」を打とうとエーテルを込めるがここは大広間。下手すればファティマ城を、壊してしまうかもしれない。バルトが持つ…本来の居場所。被害が小規模でも…壊すことになるだろう。あいつの思い出の地を、傷付けたくない。歯を食い縛り、耐える姿をシャーカーンは見下した目で見ると下僕に改めて命令する。
「フン、お主の友情ゴッコに付き合っている暇はない…ロゼ、何をしている。早く、つれて行け。犬が吼えぬようにな…」
「承知しました、全てはシャーカーン様の言われるがままに…」
いつもシャーカーンの後ろに佇む彼の下僕「ロゼ」、彼はフェイに手錠をはめ拘束し秘密牢獄に再び閉じ込めた。ペットをしつけ直す為に。

◆◇◆◇◆◇

シグルドの通告通り翌日アヴェ上空にユグドラシルを待機させ、シャーカーンがいる場所を特定し始める。ブリッジに配置されているレーダーをファティマ城全体に張り巡らせ、彼がいるであろう場所を絞って行く。包み隠さず隅々まで検索した結果、ファティマ城の離れに3つの反応が見られる…フェイがいる場所はここだ。彼の居所が特定できても、侵入する術がない。そこでバルトの考え出した策。それはファティマ城を警備している兵隊の服を盗み、大胆にもそれを纏い入り込もうという…そういう策。今時、子供でも考える手法だが。今は、他の方法を思い付かない。不本意ながら、その策で侵入することにした。今回、彼を取り戻すのが歳優先とされる。己の私情は、持ちこまない。本当なら真先にシャーカーンを根絶やしにし…殺してやりたいのが本音。だが感情に流されてしまえば…己の破滅を自分で招くような物…それだけは、避けたい。幸いシャーカーンがいる場所は過去、バルトとマルーが共に幽閉されていた…牢獄。場所が分かった以上、ユグドラシルでのんびりしている暇はない。バルトはフェイが1番、信頼しそして愛していた人物…シタンを連れファティマ城、玄関を目指した。彼等は周囲の兵を気絶する程度で倒し兵着用のの制服を盗み取った後、颯爽と着替え離れを目指す。バルトの記憶によると離れは…裏口にあるということ。バルトの策通り制服着用し侵入した彼等は、兵に怪しまれる事なく裏口へと到着する。離れを探すべく、周辺を見ると…1つの古びた建物が目に付く。この建造物はレンガで出来ており、相当の年数が立っているようだ…それを裏付けるかように、樹木が建物に絡みつき…カビに似た異臭を漂わせている。フェイはここにいる。レーダー反応が示したこの場所からだ。…間違いない。バルトは離れに備え付けられている扉を、持ち開こうと手に握った…時点で…フェイの喘ぎ声を耳にする。
“…うっ…あぁっ…!”
バルトは驚きの余り手を離すが今度は、彼の変わりにシタンが扉を持ち開こうとするが…鍵は2重も3重も掛かっているらしく開かない。彼は愛刀を携え構えると、瞬く間も与えず扉を切る。金属で出来た鍵の崩れる音が鳴り響く中、彼等が見た物…それは半裸の状態で鎖に繋がれ…シャーカーンとロゼに犯されているフェイの姿。惨めにも目を涙で濡らし、悶える彼の姿は耐え難いものだった。
「フェイ!!」
親友と恋人の両者に名を叫ばれ、瞑っていた瞳を見開くと…心底、心配している彼等の姿が映る。でも…こんな形で会いたくなかった。見られたくない!
「…や…だ…見るな…やめ…シャーカーン…あっ…ぁ…やだぁ…みない…で…!ああ…うっ…」
「……シャーカーン…フェイを離しなさい…貴方の顔を血に染めたくなければ、ね。」
「何故、わしがこやつを離す必要がある?ロゼの所有物をわしが買い…飼っているだけなんだがね。」
フェイを縛っている鎖を引っ張りあげ、彼の性感帯を刺激する。何度も交わった後の愛撫に、彼の体は普段よりも敏感となり濡れるばかり。そんな己が嫌でフェイはバルト達から、目を離した。シャーカーンは尚、彼の感じる部分を弄りバルト達に見せ付ける。その度…響く鎖の金属音にバルトは耐えられず、得意の鞭を振りフェイを解放した。シタンもまたロゼを己の技で仕留め立てなくすると、地べたに倒れ込む彼の元へと駆け付ける。シャーカーンは興味深げな目で、何をするというわけでもなく…彼等を見ていた。
「フェイ…大丈夫ですか?…フェイ…?」
シタンは恋人を抱き起こす形で手を差し伸べるが、彼は拒絶し自らの力で立ちあがった。
「…シタン…待ってたよ…いつか…来てくれるって…信じてた…でもね…今の俺は…シャーカーン様の玩具なんだ…」
己の服を正しバルトと、シタンに狂気に満ちた目で呟く。
「……フェイ…?」
「彼の命令には逆らえないんだ…ごめんね…侵入者は…排除しなきゃ……手加減しないよ!」
長い髪をちらつかせ、バルトとシタンに戦いを挑むフェイ。思わぬ彼の行動に2人は、言葉を失いフェイの攻撃を交す事で手一杯だった。
「フェイ…本気でそんな事…言ってるんですか?!何が…何が貴方の身にあったんです?!話してください!」
「そうだぜ…この数ヶ月…お前がいなくなって…どれだけ皆や先生が心配したか…お前に分からないのか?!少しでも…俺のこと親友だと思うんなら…話してくれ!」
彼等の真剣な呼びかけにまた、胸が痛む。もう心なんて、なくしたはずなのに。痛い…息が詰まりそうだ。2人に全てを話せば…楽になるのだろうか。それとも…話すことで…俺を殺してくれるのだろうか。
「…分かったよ…全て話すよ…俺はシェバトに皆でいた頃…ユイさんとミドリの事について…いつも考えてた…以前…ユイさん…納得してくれたみたいだけど…ミドリは何も関係ない…それなのに…俺のせいで寂しい思いさせてる…まだシタンが必要な年齢なのに…俺が独占していいのかなって…」

「フェイ…それは…」
「シタンだって…ミドリが心配だったんだろ?だから…いつも寂しそうな横顔してたんだよね?…俺、シタンの重荷になりたくなくて…ブリッジ下にある非情通路を通って…飛び降りたんだ。死ぬつもりだった…でも…死ねなくて…ロゼに拾われた。それから…毎日、毎日…玩具として…犯されたよ。そんなある日、オークションにかけられたんだ。偶々、シャーカーンに見つかり買われてこの座間さ…笑ちゃうだろ?…おまけに洗脳までされちゃってさ…プリス…で…沢山の人…殺しちゃった…馬鹿…だよね…ハハ…ハ…」
全てを打ち明けた彼は力が抜けたのか涙を流し、その場に座り込んでしまった。そんなフェイにシタンは俯き、低い声で語りかけた。
「フェイ…違うんですよ…貴方は思い違いをしてる…確かに…ミドリの事が気にならないといえば…嘘になります。事実、あの子の父親ですし。でもね…ミドリは言ってくれたんですよ。…私がいなくとも“お母さんがいれば、それで良い”と。…彼女は貴方との事を…認めてくれたんです。父親としては、少し寂しいんですがね。…フェイ…貴方は…何も悩む事なんて無かったんですよ…先程、貴方は私が寂しそうな横顔していると言いましたが…あれはフェイがいけないんですよ?折角…今後の事を2人で考えようと…何度も話しかけたのに…貴方はいつも上の空で…そりゃ…寂しくもなります。」
意外な彼の言葉にフェイは座り込んだまま呆然とし、弱々しい声でシタンに話しかけた。
「う…そ…俺…そんなに…不安にさせ…てた?…俺…知らなかくて…本当に…ごめんなさい…だけど…俺…帰れない…」
彼の頑な言葉にシャーカーンは鼻で笑い、欲望に満ちたその瞳でフェイに命令した。彼等を…殺せと。フェイは主の命に頷き、ターゲットを見定める。冷たい眼差しで。

「…ごめんね…俺、バルトとシタン…殺さなきゃ…いけないみたい…」
「フェイ!どうして…こんな奴の言う事なんか聞く!?お前…本当に…正気に返ってるのか!?目を覚ませよ!」
「安心しろよ、バルト…俺は至って、まともさ。ただ…お前と違って…堕ちるところまで…堕ちたんだよ!だから…もう昔のようには…戻れない!」
鋭い目付きでバルトとシタンを睨み、襲い掛かる彼。もう戻れないと述べたフェイの言葉に、引け目を感じながらも各々の武器である鞭と刀を彼に向ける。フェイは勢い良くバルトの背を叩き、気絶させてしまった。シタンは冷静に事を判断し、刀を彼に向ける。フェイは…ニサンの時同様…殺す気だ。彼とは恋人ではなく、敵として向き合わなければ。3年間…彼とは敵対意識などもったことはなかった。いつかは、戦わなければならなかった相手。…やらなければ、やられる。でも…殺せるだろうか?己の拠り所であるフェイを。私情を消せなければ…今はバルトを守らなければいけない。何れはアヴェを背負って立つ人物。彼は生きなければならない。私情を持ちこんでいる暇は無い。
「フェイ…貴方が若君を殺すというのなら…私は貴方を…」
シタンはフェイに刀を向け、戦闘開始する。しかし…己の思惑とは裏腹に彼はシタンへの攻撃を一切止め…彼の刃を受け入れた。斜線を描くようにして、吹きあがる血。ああ、自分の体が愛しい人に、斬られてる…ずっと、待ってた…この時を。彼以外の男を受け入れたあの時から…シタンに殺してもらう事だけを夢見て生きてきた…体の自由が消え、力が抜けて行く…やっと…死ねる…やっと…自分に…ケジメがつけられる…
“フェイ!!”
遠くなる意識の中で…シタンの叫び声と…親友の声が聞こえる。バルト…気絶させて間も無いのに…もう起きあがれるなんて…凄いな。フェイは心地良い痛みに酔いしれながら、恋人と親友の事を思う。己を信じここまで来てくれた…大事な…大事な人達。最後に…これだけは…告げたい。
「……シタ…ン……あ…りが…と…う…バルトと…皆…を…頼み…ま…す…」
血に塗れた自分を…呆然と見る彼にフェイは、足をふら付かせ笑みを零すと足を屈し倒れた。
「おい!…おいっ!フェイ…起きろよ…許さねぇ…死んだりしたら…一生…許さねぇかんな!!先生も…しっかりしてくれよ!このままだと…フェイが死んじまう!!」
「…あっ?…あぁ…そう…ですね…」
シタンはフェイを抱き上げ溜息を吐くと、周囲に視線を動かす。シャーカーンがいない。その場にいるのは、失神してるロゼのみ。辺りは静かだ…追手がこないうちに退散しなければ。…今回…1番、殺したい相手に逃げられてしまった。今度会う時は、シャーカーンの最後。フェイをここまで…追い詰めたあいつを殺す。シタンは憎しみにも似た感情を抱きつつも、彼の命を救わんと小波をかけ応急処置をする。だが…彼は…既に青褪め、出血多量気味だ。…助かる確率が…低いかもしれない。それでも…このままで終わるのは嫌だ。フェイの本心を知るまでは、死なせない。心配そうに彼を見遣るバルトを慰め、各々の胸に大きな棘を残しつつも皆の待つユグドラシルへと足を進める。その間…死の淵を彷徨い続ける彼の体からは…生血が流れ、着実に命の灯火が消えようとしていた。

 

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