Dead Heart (4)

 

柔らかな風が吹き、童の笑い声の絶えない国ニサン。500年前、誕生したニサン正教のシンボル、ニサン大聖堂。何時も一般信者が参拝し、シスター達の歌が響き渡っている。蒼い空が一瞬にして、朱色に染まるなど誰に想像できるだろう。平穏な空気が一振し、激しい風圧が襲い掛かる。住宅が糸も簡単に、崩れていく。泣き叫ぶ、子供達。逃げ惑う、シスターや住民。一瞬、戦争を思わせたがやはり同一犯の少年。バルトの従兄弟マルーの故郷が廃虚とかしていく。至急、ユグドラシルのレーダ−にて事の状況を把握し、ニサンに急行するバルト達。そこで彼等がみた、戦火。たった1人だけの少年に、こうも容易く街を破壊されるとは。被害状況は、全体の半分ほど家屋が破壊され軽傷者が多数出ただけ。幸い死者は出ていない。バルトは生き残っている住民を、ユグドラシル内に避難させシタンとビリーと共に街へと降り立った。火炎から上がる煙を避け、敵を捜す彼等。ニサン大聖堂にいく途中の道で、目撃証言どおり、全身、黒いコートとバトルスーツを纏った少年を見つけ出した。彼は瓦礫の上にたち、状況確認をしているようだ。バルトはその男性に近寄り、鞭で威圧すると彼に叫んでいた。
「おい、そこのお前!何…好き放題、壊してるんだよ!ちったぁ、住む奴の身にもなれってんだ!黒尽くめ野郎が!!」
「…バルトロメイ・ファティマ…ターゲット、確認。」
「ターゲットって…俺が?!」
「…任務、確認。バルトロメイ…抹殺。」
「何?!くっ…!」
バルトを見るなり彼は、アイスピックを片手に持ち飛び掛る。彼の刃は、恐ろしく鋭い。シタンはバルトの前に立ち、男性の刃を止めた。
「先生!!」
「油断は禁物ですよ、若君。それにしても…いきなり…若君狙いですか。物騒な方ですね…貴方の目的は何です?」
「…」
「答えたくないのなら、それでも構いません。ですが…顔くらい見せたらどうです?」
シタンが後部に飛ぶ事で、男性が接近してくるのを見計らい刀を振り下ろす。シタンの計算通り、男性のサングラスが2つに割れガシャンと割れた音が響くが。その露となった彼の顔に皆は驚きの声を上げた。まさか…何故、声を出して彼に問う暇も無く、男性はバルト達を突き刺すような瞳で睨む。そして再度、彼等に刃を向ける。バルトとビリーの困惑した声。前者と違いシタンだけはただ、呆然としていた。信じられないといった目で。漸く、彼が発したその言葉は震えていた。
「フェイ…何故、若君を狙うんです…」
「…」
シタンの問いを払いのけ、尖った先端を向け彼の胸に突刺そうとするフェイ。仲間を守る為、刀を取り出し刃を防ぐが…相手は愛しい恋人。…傷つけられない。己の甘さに自嘲しながら、交す。これらの攻撃が全て、まともに当たっていたら…命を落していただろう。…彼は本気だ。どうして…不審に思いシタンは、フェイを見遣りハッとした。彼の瞳は…感情というものを映していない。刺々しい彼の眼差し。恐ろしいまでに…鋭く研ぎ澄まさた彼の瞳。幾つかの佳境を乗り越えた己さえ、ゾクッとする…こんなの彼…じゃない
「サード・ターゲット…抹殺…」
尽かさず攻撃の手を休めない彼。フェイは確実に、バルト達の周囲を破壊し追いつめる。彼の力は計り知れず、ニサンを焦土の海とかした。…人非道的な彼の攻め。シタンはニサンの住民の為、刀を抜くがフェイに向けようとはしない。…どんなに切りかかろうとも、刀を伏せるつもりでいたのだ。しかし彼はシタンの前に立ち、アイスピックを翳す。間一髪、フェイの足を転がし逃れたのは良いが…このままでは、殺される。…何故、フェイがこれほど迄に変貌してしまったのか。…これは彼の意志なのか?違う…フェイは争い事を、人一倍、嫌っていた。その彼が…こんな惨い事をするなんて。最低限の言葉しか発さず…己の意志が感じられない…何かに…操られてる?シタンは彼のアイスピックを刀で振り落し、フェイを抱き締めた。
「フェイ…貴方はこんな事、望んでいないんでしょう?!…人が傷付くのを、誰よりも嫌っていたじゃないですか!ギアに乗る事をあんなにも、嫌ってたじゃないですか!それなのに…何故、こんな惨い事を!」
シタンの強い腕力に押さえ込まれ、彼は動けない。ジタバタと体を捩じらせるフェイの、前に1人の男性が現れた。
「貴方は…」
シタンが少しの間、気を取られたすきにフェイは彼から離れシャーカーンに身を委ねた。
「うちのペット、気にいりましたかな?」
「シャーカーン!?お前…フェイに何をした!?ペットってどういう事だ!」
バルトの驚きに満ちた声。何故アヴェではなく、ニサンに?…疑惑が更に、疑惑を生む。
「…このペットが気に入ったのなら、バルトロメイ…大聖堂まで来るが良い。面白い者を見せてやる。」
「面白いって…何を考えてやがる!このつるハゲ野郎!!」
「失敬な餓鬼だ…まあ、興味があるなら来るが良い。」
シャーカーンはフェイを連れ、煙幕の中、消えた。彼が使った、煙幕。そして、まるで殺人器具のようなフェイ。昔、同じような者をみた気がする。ユーゲントに在籍していた頃…カレルレン総指揮の元、ドライブと並行して開発していた人為兵器と著しく似ている。脳に直接、過剰な電流を流し媒介と共鳴させ相手の想うがままに操る。以前確か…アヴェに一部、贈与されたと聞く…アヴェ?この国に関与している人物…まさにあの男ではないか…だとすると、バルトが危ない!
「待ちなさい!行っては行けない!…若君!若君!!!」
シタンの忠告を無視しバルトはシャーカーンの後を追い、ニサン大聖堂の大広間へ駆け込んだ。父を殺した、憎いあいつ。今度は、親友までも奪うというのか。それだけは、嫌だ。息を荒げ、大聖堂のドアを開く。
「シャーカーン!!!!」
広い聖堂の中。捜しまわり図書室に入った時、何やら卑らしい香りがする。彼等はここにいるのだろうか。図書室を開き、見渡してみる。何時もはシスター・アグネスが座っている席に…2人はいた。机の上にシャーカーンが座り…フェイが…彼の物を加え、愛撫している。
「…ん…はぁんん…」
「フェイ!!?」
「おや。やっと来たか、…ん…く…可愛い…ペットだろう?」
「おい!お前、何してんだ!!やめろ!!!」
親友の言葉に意志を示さず、主の根元や根先を舌でなぞり吸う。歯を立てぬよう、慎重に。
「フェ…イ…何で…何で!」
「少しは落ち着いたらどうかね。バルトロメイ、お前が幾ら叫んでも無駄だよ。この子はお前の事など分かりはしない。」
「何だと…」
「…人と言うのは、実に脆い。少し頭を弄っただけで…こうも喘ぎ、命令にも従う…フン…うっ…くぅ…」
「何が玩具だ!フェイを元に戻せ!!」
「気が済むまで、ほざいていろ…うっ…ん…」
フェイの口中に、シャーカーンの欲望の雨が降る。その様子は淫ら…その言葉、他なにもない。彼は全て、それを飲み干した。
「良い子だ。では、お前の体を賞味させてもらおうか…」
シャーカーンは彼の物を握り、上下に摩った。敏感なフェイの身体は、触られただけで濡れてしまう。胸周りを舐め彼を刺激すると、信じられない程フェイは善がった。今にもイきそうな彼を罰するかのように、シャーカーンは彼が泣くまで秘所を絡め続けた。主の舌が奥に侵入する度、悲鳴混じりの彼の喘ぎが響く。
「うぁ…あぁ…んんぅ!!」
奥に侵入する度、フェイへの愛撫は激しくなるばかり。シャーカーンは彼の股を、開いたままで更に舐めた。フェイの股から急激に垂れる蜜。床に零れ落ちそうな勢いで流れてくる。シャーカーンは笑いながら、彼の感じる部分を押さえつけた。
「ほぉ…これくらいで、こんなに感じるとは…道具としては、優秀だ…実に素晴らしい…そう思わんか?バルトロメイ…ふふ。そろそろ、限界のようだな。…よかろう。存分に快楽を求め続けるがいい。」
シャーカーンはフェイをうつ伏せにすると、彼の秘所に自分自身を埋め奥まで突き立てる。
「ヒァアア!あぅ…シャ…カーン様ぁ…あはぁ…んっ…んん!!ぁああああ!!!!」
両手を拘束され、犯されるフェイ。主に何度も突き立てられ、彼は全身を震わせた。何遍も繰り返される交わりに、フェイは善がりきると地べたに倒れ込んだ。
「フェイっ!!」
「気を失ったか…まあ、いい。バルトロメイ、実に愉快であったろう?親友が、快楽に身を躍らせる姿は。」
「外道が!!」
「おや。気に入らなかったのか?…それは残念だ。ならば、今度はもっと楽しい趣向を用意しておこう。…我々はこれで、失礼する。」
「…待て!シャーカーン!フェイをどうするつもりだ!」
「勿論、お前を殺させる。その為にあの日…ロゼを買収し、フェイを買ったのだからな。」
「買ったって…どういう…事だ…」
「そう、焦るでない。そのうち嫌でも分かる。まあ、それまでお前が生きていれ、ばの話だが…今日は余興にすぎぬ。ではバルトロメイ…失礼させて頂く…」
「逃げるのか?!…俺を殺すなら…今、この場で殺せば良いだろ!敵に…情けをかけるつもりか!?」
「勘違いしないでもらいたい。私はあくまでも、フェイにお前を殺してほしいのだよ。ようは、親友同志の殺し合いがみたいのだ…ふっ…失礼する。」
上着を羽織ると、シャーカーンはフェイを抱き上げ大広間から退出した。自分の意志を道具として、塗り替えられ操り人形と架した哀れな友人にバルトは涙した。
「馬鹿にしやがって…畜生…先生に何て…言えば良いんだよ…フェイ…」
シャーカーン達が去って20分後、シタンとビリーがバルトに追いつき彼の元に走った。
「若君!無事でしたか…良かった…若…君?」
「…っく…しょう…フェイ…」
「バルト、何があったのさ!バルト?」
シタンとビリーが近寄ろうとした瞬間、彼は足をし只管、鳴咽していた。

 

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