Dead Heart(2)

 

 

体中が痛い。
俺は…どうしたんだ。
眩しい…ひか…り…?
…ここは…どこだ?

鉄骨張りの錆びた建物の中、彼は静かに瞼を開いた。広い部屋にベッド1つ。何だか、やけに生暖かい。フェイは重い腰を上げ、ここから出ようと試みるが。体中に見覚えのない、キスマークの跡が多数。これはどうした事か。訳が分からず、体を動かそうとするが。不意に金属音が鳴り響く。

−鎖…何でこんな物が?―

「よう。御目覚めか?お前が暴れたりすると困るから…繋がせてもらった。悪く思うな。」
低く、どす黒い男性の声。彼はフェイの真正面に立ち、言い放つ。
「ここは、何処なんだ…お前は?」
「俺の名はロゼ。ロゼ・マフィーだ。ちなみに、ここは只の寄り添い集団。だから、名前なんて物はない。ところでお前、何て名だ?」
「……フェイ…」
何だろう…ロゼの瞳に見つめられるだけで…変な気分になる。何故か、異様な雰囲気を漂わせている。まるで、目で愛撫されてるようだ。
「そっか。分かった。フェイ…怖いか?クク。いいぞ、その表情…そそられるよ。俺の目は、間違ってなかったって訳だ。」
「どういう意味だ。…俺をどうする?」
「分かりきった事、聞くな。お前は俺達の玩具になるに決まってんだろう。」
「玩具…」

おれたち…?
…おもちゃ?…
男婦…ってことか?
…一度…踏み入れたら戻れない…世界…
それも…いい…かもしれない…
今の俺に…御似合だ…
どうせなら…汚れ尽くして…堕ちてやる…

「これから、何度も何度も抱かれる事になる…覚悟、決めろ。」
「…これまた、急だな。」
「確かに、な。だがここに来た時点で、お前の運命は俺達が握らせて貰う。」
「…好きにしてくれ…」

ロゼは指を鳴らし、仲間に合図を送り無数の男を呼び寄せた。瞬く間にフェイを囲み、男達は前触れもなく鞭で体を弄びだす。打たれるに連れ、肌が紅く色付いていく。痛いのに、嫌じゃない…得体の知れない感覚。不思議な快感に、彼は悶えた。フェイの身体が熱帯びだすと、男達は本能のまま、自分達の手・舌が這わす。つい先ほど、自分達で傷つけた跡を舐めていく。一度に無数の男達から、舐めずられ彼の思考が一気に麻痺し果ててしまう。しかし、彼らはそれを許さず愛撫を続行した。彼の喘ぐ声が響き渡る。果てても、果てても止まない愛撫にフェイは思考を麻痺させた。そして、その晩…彼は始めて自分の意思でシタン以外の男を受け入れた。

その日から、犯されては快楽に溺れる日常が当り前となっていた。快楽に身を投じる事で、シタンの事を一瞬でも忘れようとしたのだ。フェイ自身が望んだ、事。だが、現実はそう甘くない。彼に齎されたのは虚しさだけ。男達に抱かれても…満たされない何かがある。これは何だろう。

― シタンの声、シタンの腕…貴方が恋しい…―

シタンから離れてから…時間が過ぎれば過ぎる程、あの人を求めてしまう。馬鹿な…事を。もう、どうせ逢えないじゃないか。一生、彼らの玩具にされるんだ。そう…おも…ちゃ…になる…。身も心も。もうすぐ、外は夜明け。朝が来るという事は、また犯されるという事。でも…今日はやけに男達がざわめいてる。訝しむフェイを無視し、彼等はとある部屋に連れて行く。そこは華やかな…パーティ会場だった。場内には、大きなステージが一つ。そして、数々の隣接した席。大富豪の令嬢と、御曹司の姿がある。

(鞭と…ぼ…う?何するつもりだ…)

「さあこれから、お前のオークションだ。」
「オー…ク…ション…?って…何す…」
「こういうことだよ。」
咄嗟に被されていた布を剥ぎ取られ、フェイの裸体が露にされる。
「なにすっ…あ!」
ロゼは鞭で彼の手首を拘束されたかと思えば、股の奥に手を侵入させ指を動かす。
「あぁ、あ…」
「見られると何時もより、感じるだろ?ほら御客様に、股を開いて見せろ…」
「そんな…」
「ほら、開くんだよ!」
「や…だ…こんな…の…!」
「でも、ここは滴ってる。嘘吐きには、御仕置きしないとな。」
「嘘だぁ…あぁ…ん…」
濡れた吐息。ロゼは、胸首を力一杯、噛んだ。
「う、うっ…あ…アア!」
ロゼの痛みを伴った責めが、酷くなるにつれ観客はどよめき高額を言い放つ。だが、彼らを相手する事無く一人の老人にフェイを受け渡した。既に、落札済みだったようだ。買主の名を聞いて、呆然とした。何せフェイを買ったのは…バルトの敵だったのだから。
「本当に可愛らしい少年だ。…これは、良い買い物をしたな。」
「お前は…確か…」
1度あったことがある。そうだ、アヴェ武道大会のセレモニーで演説していた…そうシャーカーンと呼ばれる男。バルトから祖国を奪い、私利私欲を猛らせる亡者。冗談じゃない。親友の敵に飼われるなんて。今日から彼に犯されると思うと、身震いする。逃げたい…敵の手に堕ちるくらいなら。
「まずは、顔を良く見せてくれ。」
シャーカーンに顎を掴まれキスし舌を絡ませた瞬間…彼の舌を精一杯、噛み付いた。苦痛に歪める、敵の顔。腹の中で笑ったが、後の祭り。フェイはシャーカーン御用達の護衛隊により鞭で、力一杯、背中を打たれ取り押さえられた。
「いきなり、噛み付くとは。とんだ、狂犬だな。まあ、よい。これから、お前の体にたっぷりと教えてやる。私が飼い主だという事をな。フフ。精々…犬は犬らしくするんだな。」
「…誰が、貴様などに忠誠を誓うものか!!」
「おやおや。ロゼ殿。いかがしますかな?」
「そうですねぇ。分からず屋の雄犬には24時間、シャーカーン様直属の兵隊達に犯してもらうというのは?」
「なるほど…それは、良い考えですな。」
「ふざけるな!」
フェイが拒絶し続けるのを見兼ねた、護衛隊は空砲を背中に放つ。話が出来なくなるほど、強烈な痛みがフェイを襲う。口が切れてしまった。微量に出血し声が、だせない…
「う…く…っ…」
「これで、落ち着いて話せますな。クク。24時間、休む間もなしか。実に楽しみだ。彼がどんな顔で泣くか…見物ですな。」
「ええ。俺もぞくぞくしてます。」

「私も見物しても宜しいかな?」
「ええ、是非。」

シタン…バルト…許してくれなくても良い。
もし…俺が俺でなくなったその時は。

シタン…貴方の手で俺を殺してくれ…
そしたら、本当の俺に戻るから…

数時間後フェイはシャーカーンの命により、ファティマ城の兵隊寮にて一日監禁された。泣き喚きながら犯され続ける中。フェイは己の心が音を立てて、崩れ去っていくのを感じていた。

 

NEXT

BACK