愛書家HPログ抄 1996年12月後半
 1996.12.15〜12.31


「愛書家ホームパーティ」のログのうち、古書店に関連した話題を中心に愛書談義を転載しました。なお、まとまったものについては別ページに掲載しています。

《登場古書店》
世田谷ボロ市
本だらけ
BOOK OFF新所沢、立川、前橋上小出店
B・C・G
BOOK ITO立川羽衣町店
五反田古書市

338 [96/12/15 20:37] GHF00401 長谷川巳之吉伝記/OYAGI
 戦前に一世を風靡した、名書肆「第一書房」の社主、長谷川巳之吉のことをトータル に記述した本に「第一書房 長谷川巳之吉 日本エディタースクール」があります。  たまたま、本日昭和59年に刊行された初版箱極美を、極めて低廉で入手。  しげしげと見ております。本人の若き日の姿はもちろん第一書房刊の豪華本の写真も 多数。そして巻尾には第一書房発行の本と雑誌の一覧まで掲載されています。  本文は第一書房に係わる人たちの証言やら思い出。これは、いい本です(^^)


339 [96/12/17 07:19] GHF00401 世田谷ボロ市/OYAGI
 12月15.16日そして1月15.16日の年二回、世田谷の暮れと新年の定番の イベント「世田谷ボロ市」が、彦根藩世田谷代官所のあった「通称 ボロ市」通りで、 開催されます。この通りだけでなく、一帯の道路も使って、幅2メートル奥行き1メー トルほどの区画に700店舗ほどが出店します。この8割方が古物商の人たちで、これ を目当てに、コレクターやら外人さんやらも大勢、やってくるようです。

 かく言う小生も、初日の朝8時に、毎年皆勤していまして、明治ものの書籍を中心に めぼしいものを買い集めています。とはいっても、古物商が箱買いしたまま持ってくる ものが中心ですので、埃まみれ塵まみれのものも多く、軍手は必需品。でも、このボロ 市をはじめ各種古民具骨董市で掘り出した本は、これまで再三紹介したとおりです。

 そして今年の暮れの「ボロ市」は、いつになく「本」は不作で、唯一「ボール紙表紙 本 石見重太郎武勇伝 M17」を500円で掘り出したのみ(;_;)残念でした。

 最寄り駅は「東急世田谷線 上町駅下車 人込みに従って徒歩3分」です。


340 [96/12/17 10:35] CXK02012 100円本   クレイン
 <本だらけ>いわゆる[黒つぽい]本も片隅の棚に並びます。但し、状態は良くない、価格も そこそこ付いてます。雑誌もあります。昭和24年の櫻菊書院・「小説と読物」1月号を500円 にて購入。{郵便物には受取人及び差出人の配達局名を必ず書きませう}なんて,本文合間 に標語。

 ケバケバ表紙の浪速書房・世界秘密文学・S58年刊行・定価800円の清水正二郎「キャンディ」マックス ウェル・ケントン,「鞭と鎖」セシル・バー,「ファニー・ヒル」クレランドがビニール包、内に250円とデイスカウント価格表のま まありました。ゾッキ本でまとめて出た当時のまま。{直木賞をめぐり話題騒然の作家・清水 正二郎訳・幻のベストセラー再現!}の新刷りカバーです。S39年に同浪速書房にて刊行にては、前半 後半、それぞれ別の本にして、2冊でしたっけ。「飴んぼうちゃん」マックスウエル・ケントンと「情事に狂 う人々」アナイス・ホープ。あの両著者名、どこからきたんでしょうね。

 新所沢BOOK OFF100円コーナーにて「土星の徴しの下に」スーザン・ソンダグ,晶文社,1500,1982/批 評の政治学,テリー・イーグルトン,平凡社,3600,1986/フランス小咄大全,河盛好蔵,筑摩書房,900,S43/ 他11冊1100円。・・・ソンダク100円は嬉し。

  立川BOOK OFF100円コーナーでは/キマイラ,ジョン・バース,新潮社,1600,1980/ウェスト・ポーリー探検記,トマ ス・ハーディ,千城,1400,S60/天雲山伝奇/中国告発小説集,亜紀書房,1200,1981/輸入手続/貿 易実務新書/上下,日本関税協会,9000,H2/辞書はジョイフル,柳瀬尚紀,新潮社,440,H8/みだ らな女,富士見文庫,340,S53他8冊・・・バースの「キマイラ」なんか、100円ですか。

 新書・文庫オール100円の<B・C・G>にて/わかい川の流れ,石坂洋次郎,旺文社,240,S48/インド・ ヌネパール旅の絵本,清水潔,旺文社,380,1986/赤い館の秘密,A・A・ミルン,旺文社,300,1975/マジッ ク入門,堤芳郎,保育社カラー文庫,500,S59/他6冊・・・旺文社文庫は巻末の解説が愉し、ついつ い購入。

 知人より<BOOK ITO>の立川羽衣町店がオープンとお誘い、出かけてみました。 価格は小平店並み、100円コーナーはありません。定価の半値ほどです。文庫を購入。「実録裁判・ 目撃者」上下,旺文,1240,1981→620円/新版・貧困旅行記,つげ義春,新潮社,520,H7→210円 /赤い花・信号,ガルシン,旺文,240,S49→120円/駅馬車,早文,240,S48→120円/ちょっと面白 い話,マーク・トウェイン,旺文,380,1980→190円/合作探偵小説・五階の窓,乱歩他,春陽文,500円→ 210円・・・・講談社文庫「のらくろ」が300円でした。小平店では1000円なのに。

 日曜日ドライブにて途中下車にてBOOK OFF前橋上小出店100円コーナーにて/ターバンを巻いた娘 ,マルタ・モラッツォーニ,文芸春秋,1300,1989/オー・ゴット,エイヴリ・コーマン,サンリオ,980,1978/恐怖の骨格/推 理小説特別書き下し,森村誠一,講談社,590,S48/白と黒/横溝正史全集10,横溝正史,講談 社,760,S45/教授の娘,ポール・リード,早川書房,1200円,S49・・・そして月夜野附近のファミコン・古 書店にて半額2冊、スター・ライト・ゲーム・ブック「消されたモニュメント」バット・ヒューイット,サンリオ文庫,480,1986/ 「ランナウェイ・ボーイを探せ」,ヘザー・フィッシャー,サンリオ,440,1986

 先週も100円本購入の日々が続きました。10年程前には、古書店どこも強気価格。ちょっ とした本、大概が半値以上でした。小生100円では、かろうじて織田作之助のS21,22年「六 白金星」「妖婦」、荷風「冬の蝿」初版なんか購入しました。「冬の蝿」は他の雑書と某古書店 に処分しましたが後日、その古書店の通りに面した陳列ケースに仰々しく飾られてまし た。今風では100円にてその頃、買いそびれた本にまで出会えます。


342 [96/12/19 23:40] KHB11772 RE:#334 蔵書処分雑感   散人
 OYAGIさんの処分本が、「文庫三昧」に上限価格で掲載されているとのこと。1冊 あたり130円の買い取り価格だったという旺文社文庫などのことなのでしょうが、改 めて、買い値と売り値のギャップに驚きました。確かに、売れ残る商品なら、リスク をカバーするためにもやむをえない面はあっても、売り切れ状態、ウェイティング状 態のものでも同様なら、やはり処分をためらってしまうように思われます。

 文庫に限らず、絶版というだけで、値段が高い古書価格、納得いく場合といかない 場合があるように思われます。言いかえれば、需要と供給のバランス、在庫保管代へ などから見て、高額で取り引きされてもやむをえないと思える場合がある一方で、マ ニアの心理につけこんで、値段を吊りあげているとしか思えない場合も多数あります。 例えば、先日、京都古書研究会の古本市で購入した張岱『陶庵夢憶』岩波文庫、1500 円の売り値がついていました。私はこれを百円均一で購入したのですが、重版が出た ので放出したのか、それとも、絶版文庫大サービスの放出なのかどうかは知りません が、中国文学の地味な古典として、定価程度以下で取り引きされてしかるべき本だと 思えてなりません。

 確かに自分の持っている本が高値で評価され、引き取ってもらえるなら嬉しい気は しますが、いくら買い叩かれても、それなりの安値で放出され、リサイクルされるの ならば、たいていの愛書家は納得するように思います。何と言っても、本は読まれて こそ値打ちが出るものですし、投機対象の如くに扱われることには、どうも納得いか ないものを感じるのでしょうか……。仕入れ値+若干の手数料+経費(動かない本な らば、+保管代)というのが、納得いく古書価格という気がしています。  散人


345 [96/12/21 09:29] CXK02012 二階もありです   クレイン
 <BOOK ITO>の立川羽衣町店、再度訪問。前回に見落してましたが、古書二階にもありまし た。一階は主にコミックとアダルト、あと文庫と小説本が中心でしたが、二階は単行本雑書と雑誌 です。BOOK OFFなんかでも、この類の造りですと、二階は大概ビデオなんかを置いてます。 国立に近いし、この店舗、多分<BOOK ITO>でも、大いに期待してるのでは。坂口安吾評論全 集のバラが700円でありました。定価以上の価格です。全集のバラ色々ありますが、店の方針 でありましょあか、どれも高め価格。<BOOK ITO>各店、全集などの外箱本、定価を箱上にエン ピツ書き。定価の半額なら購入の本、多々ありました。鈴木敏夫「江戸の本屋・上下」中公新 書→各150円、「赤い髪の女」,ヤン・ウォルカーズ,角文,300,S58→のみ購入。

 その帰路、BOOK OFF立川店100円にて「星になれるか/浪漫疾風録2部」生島治郎,講談社,1 600,1994/「幼かりし日々/ちくま文学の森」1500,1988/「ドグラ・マグラ」夢野久作,社会思想社 ,880,1976/「アメリカ/この巨大な物語/下」アリステア・クック,日本放送出版協会,950,S53/「ロンドン・ペス トの恐怖」D・デフォー,小学館,1300,1994。

 デフォー「ロンドン・ペストの恐怖/地球人ライブラリー」。これ、中公の白「世界の文学」にも入ってまし た。この栗本慎一郎訳は原典のハイライトを新訳したものです。巻末、栗本氏の解説の後に{読書 が広がる関連図書ブックガイド・List of Books}12ページほどあって、よく「本の雑誌」あたり で見かける、表紙写真つきで本の紹介あります。岩波文庫本他28冊紹介ですが、いかにもポ ピュラーな他社本、はっきりと面白本宣伝しちゃってますから、なんか妙なところです。ひょ つとして、これ、予定ページが埋まらなかったのかしら。それとも、親切にも啓蒙。


346 [96/12/21 21:24] GHF00401 年末なのに・・/OYAGI
年末というのに・・  古書三昧です。本日は五反田古書市に出向き、昭和40年代初頭に出た集英社の 世界文学全集から「J.グラック」と「D.ブッアーテイ」の巻をそれぞれ300円。 そして他に、戦前の映画雑誌のめずらしもの@500で5冊ほど買い込む。

 そして午後からは、本棚の不用本でかつ「処分目録」にも載らない本を持ち込みで 処分。手提げの紙袋に3袋。そしてお目当ての本屋ごとに分けて、それぞれ持ち込み。  60冊ほどで、合計12000円。しかし5000円ほど、これで買い込んでしまい 本棚はちょっとだけへっただけなような・・・・。その一冊に「街の古本屋入門 志多 三郎 光文社文庫S61 初カ 50円」があり、これは紀田順一郎さん激賞ものの本 で、古書業界そして古本マニアの生態を紹介してあますところなく、速読してしまいま した。

 連休は年賀状書き、床屋さんへ、そしてさらに書棚整理(;_;)文字どおり師走です。


352 [96/12/25 14:45] CXK02012 まちまちです。   クレイン
 BOOK OFF立川店100円コーナーにて「青木繁・その愛と生涯」,北川晃二,講談社,600,S48/「佃 島ふたり書房」,出久根達郎,講談社,1600,1992/「ユトリロの生涯」,J・P・クレスペル,美術公論社,18 00,1979/「中年博物館」,青木雨彦,大正海上,0,S56/「女妖記」,西条八十,中央公論社,280,S 35/なんかを買い、最近もうけられた各種全集のバラ・置き100円コーナーにて、状態の良、中公の 赤「世界文学全集」セリーヌ、フォークナー・ベロー/ウェルティ、ユーゴ・デュマ・グリーン/ダレル他10冊。ここ、大型「日本の古典」シリーズも100円です。

 先日、まとも購入の出久根達郎「たとえばの楽しみ」講談社をパラパラ。梶山李之「せどり男 爵数奇譚」(読み、{さっきだん&すうきだん}、もしくは、{たん}、のようです)の評価が気に なりました。OYAGIさん50円購入の(小生200円購入でした)光文社文庫絶版/志多三郎「街 の古本屋入門」では「梶山某の作品で「せどり男爵数奇譚」という小説があり、小説論とし ていえば、ビールでも呑みながら他人の見聞をつぎはぎしたごときふやけた読物にすぎな いが、ビブリオマニアの一面をかいま見せる小説ではある」とのみ言及あります。ところが出久 根氏によると、この小説、「細部の描写は十中八九まで真実と信じていただきたい。次から 次へと示される古書、あるいは古書屋に関する事柄やデーターは、作者の創作でない、と思っ ていただきたい。(現役の古本屋である私が太鼓判を押すのだから、間違いない)と惜しみ なく賞賛。同じ古書屋主人でありながら、こうも異なる評価です。志多氏「街の・・・」古物商 許可申請のノウハウ(今日、申請の課、変更になりましたが)記載なんかもあり楽しめる本です。 小生、そのうちにと思いつつ、未読でしたから、ます々、読みたくなりました。

 昨日、ストランドの古書もどっさり到着。内の1冊「FIRST WORDS」,1993,これ、米国著名作家 の幼年時代作品のアンソロジーです。なんとジヨン・アプダイクの中編推理小説の掲載ありました。


356 [96/12/28 09:00] GHF00401 年末・・・/OYAGI
いよいよ、年末。。。/OYAGI  散人さんのように、小生もここ1週間ほど、古書店のぞきができませんでした。 しかし、年末年始用に文庫・新書そして単行本と50冊ほど用意してあり、これを 順次読破中です。特に、2週間ほど前、世田谷三宿古書店トライアングルのうちの 1店「三茶書房」の平台に昭和50年代の中公文庫が100冊以上整列しており、 初版カバー美で「新選組三部作」、長谷川伸、森銑三やら、現在品切中のものやら 20冊ほど入手し、ホホーといいながら読んでいます。

 たぶん、今日・明日、最後の三宿もうでをして、年内の探索は終了でしょう。 それと小生の「処分目録」、過分なお褒めをいただいて恐縮です。なんといっても 個人処分目録ですので、分をわきまえて、かつ本の適切な評価を踏まえて、これからも リストを作成してまいりたいと考えます。

そして、蔵書欲よりは、読書欲にまさる小生ですので、順次リストに読破本を加えて います。ですから実は、散人さんにお送りしたリストも、50冊ほどすでに入れ替わっ ています。そして多分、来年の2月には、平成9年第一四半期本棚整理が終了し、この 本も加わりますので、さらに50冊は入れ替わるでしょう。

 それとフランス古書通信、いつも楽しく読んでいます。モンテーニュ書き込みのラブ レーですか・・・・。溜息の出るようなはなしですね。次回も期待しています。


357 [96/12/30 01:32] KHB11772 志多三郎『街の古本屋入門』 散人
 OYAGIさん、クレインさんお書きの『街の古本屋入門』。私が持っているのは、石 田書店発行/コルベ出版発売 昭和57年発行というものですが、1985年6月に信州松本 の細田書店にて、ちょうど定価(\1000)で購入しました。この本、細田書店の最新目録 (平成9年1月)p27には、2500円の売り値がついて出ています。在庫保管代ということで、 プレミアがついているのでしょうか……。

 さてこの本、「アナタモ フルホンヤニナリマスカ!』という副題の通り、古書店 開業の手引き的な側面と、古書店との付き合い方、例えば、本を如何に売りに行くか という話しなど面白く読みましたが、いくつか引っ掛かりを感じ続けている箇所があ りました。今回、これを期に少しこの本を読みかえしてみましたら、まずはコルベ社 版p.25の腹の立つ客についての記述。少し引用してみますと、 《「お客さん、ずいぶん広範囲にお探しのようでが、何か目的でもおありですか」 「いや、私は趣味が広くてね。文学でも美術でも歴史も哲学も、興味がないものはな いといっていいぐらいなんですよ」 それを聞いて、古本屋は怒った。 「冗談じゃないですよ。趣味でいじくりまわされたんじゃたまったもんじゃない。趣 味は結構だが買ってから言ってもらいたいね。あなた、いつも新書本を二冊ぐらいし か買わないじゃないですか。結果的に手垢をつけるだけみたいな行為はうちではお断 りだ。以降はよそへ行ってください」》……。

 志多氏は、古書店の本は、新刊本屋と違って、委託ではないので、取り扱いには注 意して欲しいということから、こういう会話を記述されているのですが、その客が、 余程ぞんざいに本をいじりまわす、例えば、帯をちぎってしまうとか、煙草を吸いな がらとか、まさに手当たり次第に本を引きだすとか、そういう場合ならいざしらず、 どこかこの客に同情を感じてしまいます。というのも、私自身、この客と同じく、店 の隅から隅まで、棚を見て歩くのですが、何も買わないことが多数あります。といっ ても、本を手当たり次第に引きだすことは、謹むようにしていますが、結果として、 10冊ぐらいの本を引きだした末に、結局何も買わないこともよくありますし、そうい う何も買わずに帰る状態が、何年も続くこともあります。その古書店との相性が悪い 場合なら、そういう状態が永遠に続くこともあるかもしれませんが、たいていは買う 巡りあわせが来た時には、数千円、数万円の買い物もある様に思います。残念ながら、 数十万、数百万円の買い物というのは、当分ないでしょうが、そういう巡りあわせを 求めて古書店を散策していますので、いつも買わない客だからと文句を言われるので はたまったもんではないという気がするのですが、どんなものなのでしょうか……。

 私の場合、何か目的の本を探しに古書店を訪れることは、ほとんどなく、たいてい、 何かいい本はないかなぁと、気の向くままに、書架を眺めて歩いています。哲学や倫 理学、心理学や社会学、歴史、美術、文学、小説、随筆、漫画……、どこか心引かれ る本があれば、まず手に取ってみます。そして値段を見て、買える本か否かをまず判 断し、心の引かれ具合によっては、少し高くても、本をぱらぱらと見たり、奥付や著 者紹介などをチェック。そうして、もう一度、本をぱらぱら見て、買う買わないを決 めていますが、その程度なら許される範囲だとは思っているのですが、如何がなもの なのでしょうか……。もっとも、買わないのなら触るなと言われれば、その店では、 まず買わないでしょうな……。「立ち読み2分まで。それ以上は注意します」という掲 示のある古書店が大阪駅前ビルにありましたが、そういう掲示のほうが良心的な気が します。確かに、買わないなら見るなというのも一理ありますが、どうせ買うなら十 分に見せてくれる了見の広い店から買いたいものだと思っています。そもそも、古書 店の本はその店のものですし、本来、店が客がどう扱うかは店の裁量の問題なのでし ょうが、やはり、ぞんざいな店、横柄な店には行きたくないという気します。といっ ても、私自身は、店から文句を言われたことは、今までに数度ほどしかありませんが、 それ以来、その店には行きませんし、なかにはもう潰れてしまった店もあります。と、 いろいろ書いてきましたが、私自身、かなり了見が狭い客なのかもしれません。(^^;;

 そういった話しはともかく、この本、古書店開業の手引き、古書店の裏話といっ た観点から、とても面白い本だと思います。
 古物商許可のところで、二度以上罰金の刑を受けて、改悛の情の認められない者は、 許可しないとのことですが、交通違反の場合、普通は反則金止まりで、罰金刑を受け ることなどないように聞いているのですが、志多氏は反則金と罰金を混同されている ような気がしましたが、真偽はどうなのでしょうか……。
 古物営業法第6条「古物商又は市場主でない者は、古物を売買し、交換し、若しく は委託を受けて売買し、交換することを営業とし、又は市場を設けてはならない」と いう記述。この本からの孫引きですが、運用の仕方によってはかなり厳しいもののよ うに感じました。「営業」ということに力点をおいて読めば、個人の範囲で古物を交 換することは自由なのでしょうが、「市場を設けてはならない」という箇所を厳格に 考えれば、(どこまでを市場と呼ぶのかということですが)、niftyのBBSとか、一般 のチャリティバザーなどでも、この古物営業法の適応範囲にならないのかと思えたり します。とは言うものの、ボランティア団体とか学校とかが、古物商許可を得ている という話しを聞いたことがないのですが、気になるところです。おそらくは、非営利 で、個人の範囲で行なう場合は、この法律の適応範囲外というふうに思うのですが、 法律に詳しい方、是非ご教示ください。m(__)m   散人


361 [96/12/30 07:26] GHF00401 古書店内幕/OYAGI
 先日「街の古本屋入門 光文社文庫」のことをUPして、業界のつらさをジーンと かみしめたのですが、またまた内幕を知りえる資料が入手できました。

1.古書月報(東京都古書籍商業協同組合機関誌)
  古書会館での市や即売展の一覧。組合の役職者の紹介。各支部の動静。今期の優秀  古書店員の表彰!。しかし白眉は巻末の各入札市での結果一覧です。たとえば、宮武  外骨全集が96,890円で落札されていますが、これは店頭価格で140,000  円程度。利益率30%程度となっているのがわかります。これを大きいと見るか?。

2.八木書店新本特価古書卸目録
  これは月刊のようです。世界幻想文学体系全40冊が112800円が56400  円で1冊あたり3000円が1400円程度。ほぼ全ジャンルを網羅して3000冊  ほど掲載されています。小生が入手したのは11月と12月の各号で、ほとんど重複  がありませんので、各冊とも数点程度のようです。また古書会館向の店頭での販売も  しているとのことで、業者のふりして除いてみようかしら?  それにしても古書店は「店頭買い」「市での入札」そして「ゾッキ本の仕入れ」と、  品数揃えるのも大変だし、確保した本の整理・保存、目録作成やら即売展への出展。  体力と根性が勝負とつくづく考えさせられます。それにつけても、江口翁の超越した  お姿よ・・・・・・・。


362 [96/12/30 07:59] GHF00401 本の処分/OYAGI
アマチュアの本の販売/OYAGI
 散人さんが「街の古本屋入門」をめぐるアレコレの後、アマチュアがネットで本を 売ったり、チャリティで団体が販売したりするのは、「古物商」として免許の有無と 係わりなくてよいのでしょうか?と、質問を書き込んでおられました。

 小生、この法律を読み込んだ訳ではないのでよくは知らないのですが、私見を申し 述べさせていただきます。たぶんこの法律の眼目は「盗品の販売」の撲滅にポイント があるのだと思います。ですから、都道府県の公案委員会で審査があり、そして営業 の後にも罰則規定もあるのです。このような経緯を経て営業する古物商は「買取」そ して「販売」する商売です。

 しかし個人処分目録での販売は、あくまでの個人の所持する不用品の販売ですから、 古物商としての販売にはあたらないと思います。ただ数が多いとどうしても「営利?」 という疑義は出てくるわけですから、アマチュアとしての節度ある値付け(少なくとも 古書店価格の半分から三分の一程度)は必要となります。また、BBSに本の目録その ものを掲載するのは、形式的には「営業」と変わりないと思います。小生の場合は、 蔵書処分、内容は次のようなもの、希望者は目録請求して下さい、と掲示します。 そしてメールでやりとりする訳ですが、形式上は「蔵書処分」でのやりとりが最初にあ りますから問題は生じえません。ちなみに見て目録請求は3割。請求から注文は2割。

 同様にチャリティの場合、主催者が多数の人から物品を集め不特定多数の人に販売す るという格好になりますが、この場合も物品は無償提供ですから、これは文句なく古物 販売にはあたらないと思います。


363 [96/12/31 02:01] KHB11772 RE:#361 古書店の内幕   散人
 OYAGIさん、なかなか貴重な資料を入手された由、面白く拝見しました。古書月報 (東京都古書籍商業協同組合機関誌)とか、八木書店新本特価古書卸目録とか、やは り、五反田の市あたりで発見されたのでしょうか?

 それによれば店頭価格14万円程度の『宮武外骨全集』が96890円で落札されていたと のこと、利益率30%程度ですので、確かにこの部分だけを見れば、良心的な価格設定だ と思えますが、その前の段階というか、この本をこの市場に持ち込んだ業者が、幾ら でこの本を買い入れたかを考えれば、やはり古書価格は高すぎるという印象を持って しまうように思いました。同じく利益率を30%と低く見積もっても、買い入れ価格は7 万円程度ということになりますから、やはり本を売った人は買い叩かれたと思うでし ょうし、買う方もぼったくりだと思うかもしれません。といっても、これぐらいの価 格差は、他業種でも日常茶飯事でしょうし、とやかく言えた問題ではないのかもしれ ませんが、消費者としてはもっと流通コストを下げて欲しいと願ってやみません。

 『街の古本屋入門』を読んだ時は、志多氏は、古書店は一年中二八の様なものだと、 古書業界の不景気を自嘲気味に書いておられましたが、私が読んだ感想としては「業 界のつらさ」というよりも、古書業界、決して利のない商売ではないという印象を受 けました。もっとも先日、某古書店にて、信販会社の取り立てに遭遇しまして、この 業界も厳しい所は厳しいのだと痛感していたのですが、隣の芝生はよく見えるという 類の印象かもしれません。この古書店に来た○○信販の取り立て屋のおじさん、少し 凄みがありました。高校時代(サラ金規制法(?)が出来る前)、友人宅でサラ金の取り立 てに遭遇して以来の出来事ですが、あの時は他人事ながら恐かったのを思い出します。


364 [96/12/31 02:01] KHB11772 古物営業法        散人
 OYAGIさんがご指摘のように、盗品の売買防止がこの法律の目的であると私もどこ かで聞いた記憶があり、おそらくその趣旨から言えば、自分の所有物を個人の範囲で 売却したり、人から譲ってもらっても、問題になることはないでしょうし、その趣旨 から言えば、BBSにリストを掲載しても、ホームページをつくっても、おそらくは問題 ない思いますが、一抹の不安を感じたりもしています。NIFTYの場合は、量が多ければ、 営業活動とみなしてセンターで削除するでしょうが、インターネットのニュースグル ープでは、長大な処分本リストを掲載している人もいますので、今のところは野放し 状態なのでしょう。

 私が計画しているのは、主に探求書の買い取りと不用図書の売却ですが、この場合、 形式だけを見れば、まさに古書店と同じになってしまいます。実質は、探求した本を 売る訳ではなく、探求書はまさに個人の必要から入手したい本であり、販売目的での 仕入れとは異なります。不用図書の売却は、タダ同然の処分品にするつもりですので、 営利とは明確に異なりますが、前記(#360)の不安を持っています。

 古物営業法第6条「……古物を売買し、交換し、若しくは委託を受けて売買し、交 換することを営業とし、又は市場を設けてはならない」、NIFTYのBBSの場合、参加者 は非営利でも、NIFTY自身は営利企業で、「売ります買います」という古物を売買、交 換する「市場」を設けているようにも思うのですが、一般の不用品交換会やインター ネットの売ります買います系のニュースグループその他、摘発されていないことを思 えば、「非営利」については、少なくとも運用面においてはこの法律の適用外と見な されているということでしょうか……。


365 [96/12/31 07:57] GHF00401 そおですねぇ/OYAGI
そーですねぇぇ/OYAGI
 古書業界内幕資料は、某古書店のオッチャンから、無償でもらったものです。八木 書店の新刊本特価目録はほんとうに参考になりました。それと、話は変わりますが、 サラ金の取り立て迫力ありますよね・・、随分前に法律が変わって回収不能なものは 「損金」として会計処理できるようになって、取り立ても一応チッとは紳士的になり ましたが。。。。それでも「債権」がまわりまわって「浪花金融道」的な会社にいっ ちゃうと・・・おおこわ・・。東京だと台東区蔵前あたりに、そんな企業舎弟系の会 社が、い−っぱいあるようです。(^^;;;)閑話休題

 散人さんの危惧、よくわかります。小生も「蔵書処分」と自分で思っているだけで 法的に整備されて、ネット上の譲るも規模・内容に係わらず一律に規制されるように なれば、その網の中にはいって規制されちゃうのかもしれません。 ただ今の段階では、Niftyの「ゆずりますBBS」に「蔵書処分目録送る」方式 で止めておくのが、アマチュアの立場と一人合点して行なっています。実は「蚤の市」 の会員とネットでの人とで20人ほど「顧客」めいた方がいて、それこそ「この本は たぶんあの人が欲しがるから譲価は***円」と設定できる本もあるのです(^^)

 現代フランス文学が大好きの女性、少年倶楽部ものの大好物なおじいちゃん、怪奇 小説ファンのドクター、明治期の小説捜索中のライターとかとか・・・。そんな仲間 から、礼状が届くのが喜びです。あっ、それと貝塚さん、と急にふったりして・・。 墨田区錦糸町西武デパートで、1月15日より古書展が開催されますが「恋人におく る」矢野目訳2万円でした。「古代希臘風俗図鑑」も同価格。欲しいけど高い(;_;)


366 [96/12/31 20:42] MGG01033 貝塚:矢野目源一のこと
 OYAGIさん、どうもです。いつもいつも心ある目録の発行ご苦労さまです。毎回破格 値で良書をお譲下さりありがとうございます。また「蚤の市会報」への熱心なご出品に も感心しております。

 矢野目源一譯詩集「戀人へおくる」は以前にもご報告(自慢?)しましたが、学生時 代に表紙のもぎ取れたのを確か5百円で神戸の古書店で掘り出し、今でも大事にしてい ます。機会あれば美麗本に買い替えたいものだと思ってはいるんですが、ついつい後回 しになっています。ところでこの本は第一書房刊本なのでやっぱり原型は函入なんでし ょうね。奥付には初版1000部とあります。

 「古希臘風俗鑑」(この本も第一書房刊本。それにしても長谷川巳之吉は本当にいい 出版人ですね。)も所有しております。こちらは学生時代神田の田村書店で見つけた翌 朝、昼飯を抜いて蓄えた小遣を握り締めて駆け込んだ記憶があります。はらはらしまし た。確か当時でも1万円ぐらいしたんじゃないでしょうか。ほぼ正方形の天金・函入の 瀟洒な本で初版1500部と奥付にあります。当時城左門との共譯の「ヴィヨン詩抄」 も見つけていたんですが、こちらは買い逃しました。

 また、コーベブックス「黄金仮面の王」の元本であるシユオブ「吸血鬼」を長年探し 続けているんですが、まだ目録の片隅にも見つけられずにいます。

      96.12.31
              貝塚 英樹
               MGG01033@niftyserve.or.jp

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