1996年10月後半 1996.10.15〜10.31
阪急東通りといえば、末広書店に時々行くのですが、阪急ファイブ横の梅田古書倶楽 部とか、阪急東通の古書ゆうぶんとか、行ったことはないのですが、そのうち行ってみ たいと思いました。
日本橋ブックセンターというのは、立派な「センター」ではなく、昭和書籍という古 書店の支店名になっているだけですが、近鉄及び地下鉄堺筋線千日前線日本橋駅の北に あり、電気街からは少し離れています。交差点の西北角に、昭和書籍日本橋ブックセン ター、昭和書籍日本橋一店など3店舗が少し間隔をおいて並んでいて、そのいずれも入 り口付近にはアダルト雑誌や漫画、ベストセラー本などが並んでいて、昼間からサラリ ーマンがたむろしているのですが、中に入れば、全集ものや学術書、趣味の本など多数 あります。例えば、荷風全集など、旧版を3万円強、新版を8万円強で売るなど少し強 気の値段設定のものもありますが、安めの値段の本などは、かなり動いておりまして、 幾度に傾向が変わっています。(阪急東通りの末広書店も、アダルト&漫画専門のよう でありながら、それなりに「本」もあって、不思議な気がしています。) 散人
キクオ書店、目録は立派でも、店売りの本は、何があったのかもう一つ印象に残らな い気がして、ほとんど訪れることない書店でしたが、やはり目録と店売りとのギャップ はありますね……。いつも年遅れの目録を古書市で貰っています。
文苑堂とか文華堂、地図を見ると市役所の裏手の店のようですが、入ったことのない 書店かもしれません。
今村書店は、かつてひでまるさんも書いておられましたが、私もいい本がたくさんある書 店のように思いました。
○○堂、ここは、学術書、アダルト系、趣味の本、いずれも品揃えは豊富ですが、何年か前、ここの店主、猥褻物図画販売容疑で逮捕されたという新聞記事を見て、数日後見に行くと、いつも通り店を開けていましたのを覚えています。会員制のビデオクラブを作ってマニア向けビデオの制作販売などをやればどうかと、客に薦められていましたが、今度捕まりと、営業停止になるかもしれないとか、そんな話しを立ち聞きしたのも妙に印象に残っています。エリナー書店も市立図書館の近くのため、よく前を通りましたが、あの店構えを見て、二度ほどしか入ったことがありません。でも、探せば、「買える」本があったのですね……。 外から見るだけでは、とてもまともな本がある店には見えませんでした……。散人
そこが、ちょっとした商店街になっていて、両脇に「八百屋さん」「魚屋さん」 「酒屋さん」そして「肉屋さん」。夕方なのに、人影はまばら・・・。 そして、その古い街並に、1軒の真新しい3階だてのビル。たぶん、古い店を取り壊し 建て替えて、2.3階は住宅、1階はコンビニか何かに、テナントとして貸そうとした そんな作りです。その1階が古本やさんだったのです。客は一人もおらず、若い女の子 が手持ちぶさたそう。棚も、整然としていますが、ありったけの本を並べて埋めたとい うかんじ。文庫は1冊200円均一で、旺文社版内田本が「う行」にありますし100 円均一平台には、HPBの古い絶版ものが、数冊平然と並んでいます。 単行本は奇麗な新しいものが定価の4/1、古いものだと200円程度、こちらには 収穫はありませんでしたが、内田本とHPBを購入しました。見返しにはしっかりと 鉛筆で古本適正価格が。たぶん、買取専門のビルのオーナーが道楽で始めた店みたい でした。100円棚も、200円文庫棚もそうですが、単行本棚も期待できますし、 経験的には、古い単行本など、どんないい本であっても「古い=売れないから安く」で 値付けしてくれる可能性大です。しかも、背取り客は、こなさそうだし(^_^)でも、 たぶん、値段のこと、助言してしまうんだろうな・・。僕は(^^;;;)
今回掲載分は、偶然にもOYAGIさんが#220でお書きの書名献呈本のことでもあります が、泰俊氏、ベルクソンへの書名献呈本を入手された模様。続きは、近日中にアップし ます。私自身、あえて署名を求めたことはないのですが、お話しを聞けばその奥の深さ に感じ入ります。 散人
その内容は、彼の薔薇への思い入れ、特に青い薔薇に対する思いを綴った随筆、彼が 欧州の薔薇園を訪れた時の紀行文が中心となり、薔薇を題材にした詩や、「小説 薔薇の 罠」のような薔薇文学も加わる多様なものです。彼は、日本に薔薇園が造園されぬことや 、実現されぬ青い薔薇から日本の文化を語ったり、「薔薇ならぬ薔薇の旅」では、自らが日 本に流刑にされた者だと裸心を晒されたと告白したりしていました。彼の薔薇に対する 知識、そして薔薇から想起される様々な観念、想像がこの本の全編に溢れ出ています。 その文章の展開は澱みなく、表現は流麗で、私などはその論理的妥当性などは毫も気に 止めず、ただその流麗さを堪能するのみでした。
この本には、写真も豊富に載っているのですが、写真の方も、靄の掛かったような画面 の中、赤とピンクの薔薇を手前にして走り去っていく少女や、幻想的な光を背景にした青い 薇など耽美的なものばかり。旅行中の写真さえ、超広角で撮ったために画面が歪み、見 る者に襲いかからんばかりのバガデル園の門や、明るい空を背景に薔薇が黒いシルエットとし て浮かび上がる写真など凝ったものばかりで、中井世界の非現実性を演出していました。
丸善ブックスに「世界の古書店」というシリーズがあり、各分野の代表的な学者の方が 欧米は言うに及ばず、アジア・アフリカの本屋さんまで手分けして書いておられます。 各冊とも、10人位の方が、それぞれ1国の古書店について書いておられるのですが、 このUP、それに匹敵・あるいはそれ以上の水準です。
続編が、とても楽しみです。
峠を越えて、奈良県生駒市に入って、大きな幹線道路に出ると、BOOK OFFを発見。生 駒店とのことでした。京都店よりも大きい感じで、百円コーナーもわりと充実。朝日出 版社から出ている小此木啓吾などの精神分析関係の本3冊と別冊宝島など100円で購入。 この店でも会員証をつくらないかと薦められたのですが、100円とのことで止めました。 全国共通とのことでしたので、次回は信州BOOK OFFで作ってもらった会員証を使ってみ ようと思いました。
その後、国道24号線を経て、京都へ帰りましたが、以前から気になっていた木津川北 の山城書店に入ってみました。雑然とした町の古書店という感じですが、本はそれなり にある感じです。岩波文庫、河出文庫など美本定価の3分の1程で数冊購入しました。探し ていたものもあり、なかなかの収穫でした。
さらに北上し、バイパスに入って、再びBOOK OFF。宇治大久保店とのことでした。こ こは生駒店よりもさらに大きな店舗です。もともと京都府下南部は馴染みがないのです が、工業地帯兼農業地帯兼新興住宅地とでもいう土地柄なのでしょうが、夜なのに、た くさんの客がいてとても驚きました。何もない所と思っていたのに、日々社会は変化し ているのだと、ちょっとしたカルチャーショックでもありました。ここでも、百円均一 で単行本など数冊購入しました。
河原町通りを南下して今村書店。ここもいい本が多いのですが、見るだけでした。『 日夏耿之助全集』13万円、『藤村全集』筑摩4万円などなど、相場よく知りませんが、 妥当な所なのでしょうか……。
丸太町を東に折れて、狩野文京堂と博文堂、このへん、古びた謎の書店が多かったの ですが、ここも滅多に立ち寄ることのない書店です。収穫は勿論なし。もっと、じっく り見れば、違ったものが見えてくるのかもしれませんが、私の趣味とはあわないのかも しれません。マキムラ書店は、以前にも書いたと思いますが、大きめの店舗に、本が腐 るほど積んであります。質量ともかなりの水準のある店ですが、私の場合は、毎回ほと んど収穫がありません。全集などもそれなりにありますが、やはり値段が高いと思いま す。例えば、『プラトン全集』岩波6万円、善書堂よりは安いですが、保存状態などに もよりますが、相場は4万から5万円のような気がしています。『アリストテレス全集』 7万円も、5万円前後が相場でしょうか……。『和辻全集』4万、これはどうだかわかりません。
あと、創造社と不識堂。創造社、潰れたと思っていたのですが、改装したようです。 でも、本がほとんどないのは相変わらず。不識堂は、品物は多いのですが、私とは系統 があわないようで、いつ来ても何も買わずに帰っています。
今回、善書堂から自転車でまわりましたが、ずっと私と同じコースを自転車でまわる 人がいて面白かったです。早稲田の古書街でもこういうことがありますが、神田の場合 は店舗が多すぎて、やはりみんなそれぞれ自分のお気に入りの店を選んで訪れるのか、 こういうことは少ないのかもしれません。人それぞれ、自分と違うことがわかっていて も、皆さん、どんなお店をまわられるのか、どこか興味深く思われます。 散人
同シリーズから出ていた中井英夫「香りへの旅」の方は新刊では買い逃してしまった のでずっと探していたんですが、同シリーズも新書館フォア・レディースと同様なかな か古書店では出会うことができず半ば諦めていました。ところが最近20年近くの時間 を超えて思い出したように手に入れることができました。
しかし、実用書のならぶ平凡社カラー新書にこういった虚用の書が存在したなんて、 なかなかに感動的ですね。
「薔薇の半神」「薔薇の埋葬」のご紹介ありがとうございました。こちらもいつの日
か目の前に現われると信じています。
96.10.21 貝塚 英樹 MGG01033@niftyserve.or.jp kaizuka@gemini.bekkoame.or.jp
◯無名の古本屋さん・・これまで紹介する機会のなかった店です。開店は5年ほど前。 3畳ほどの超狭店で、とにかくマンガから古本までなんでも、ありありの店です。 旺文社文庫100円で2冊。榎孝明の署名入詩画集500円。 ◯山陽書店・・・・・・講談社少年倶楽部文庫2冊、600円。 ◯三茶書房・・・・・・角川文庫復刊で「イソポ物語」300円。 ◯江口書店・・・・・・I.マードック小説3冊で100円。須永朝彦 扇さばき 小沢書店500円。こんな戦果でした。いよいよ、明日から、神田古本まつり・・。土曜の朝ちょこっと 顔を出すつもりです。
その後、大阪府立図書館に寄ってから、鴻池新田へ。このあたり、寝屋川水系の澱ん だ水路が多くて、どこか墨東綺譚を彷彿させるようで、よく訪れています。旧鴻池邱な ども残り、江戸時代の新田としての風貌もありますが、残念ながら、いわゆる「新地」 ではないようです。(大阪にはたくさんの「新地」が残り、荷風が歩いた玉の井のよう な風情とは違ったものになっているのかもしれませんが、例えば飛田新地などまさに江 戸時代さながらの情景の中、「営業」を続けています)
それはともかく、この鴻池新田、団地の向かいにあるマリア書房という、表から見る と雑然としていて何もない古書店のようにみえますが、中に入るとそれなりの古書店で す。いわゆる典型的な街の古書店で、漫画や文庫、雑誌、大衆小説やハウツーものの単 行本など、新旧両方、大量にあります。文庫数冊を購入。文庫本、値段をつけるのが面 倒なのですべて半額にしているとのこと。とても気さくなおじさんでした。散人
毎回思うことは、長居をすると店を出た後も店内を流れる歌謡曲が頭の中にしみつい てしまって、ほとんどソフマップ状態になってしまうことでしょうか……。もっとも、 ソフマップのテーマソングに洗脳されるのと違って、小気味のいい流行歌であることが 唯一の救いですが、それにしても、BOOK OFFで聞かされた音楽の数々、今でも耳の中で なり響いて、困っています。まぁ、ふだん音楽を聞かない人間にとっては、静かなのが 一番だと痛感しています。
それはともかく、今回も駄本を数冊購入。信州松本で作ってもらった会員証を使って みると、100円相当のサービス券が貰えました。私の会員証には信州各店の電話番号が書 いてあるのですが、先週、奈良の生駒店で全国共通だと教えられたのでした。その生駒 店では会員証作成には100円必要とのことですが、松本店では無料でした。購入1万円ご とに100円のバックがあるようです。
目当ては、今日が初日のすずらん通りに100店位でている、出版社のバーゲン コーナー。少し汚れているという本が、絶版・品切れにもかかわらず、定価の50% 以下。白水社ブースでの翻訳小説2冊で500円。歴史書出版社共同ブースで、 添田唖蝉坊の全集端本、箱入り1冊800円を2冊。晶文社ブースで、森まゆみの 読書休日800円。東京創元社ブースで、文庫幻想怪奇物1冊200円で6冊。 平井訳アーサーマッケンもあり(^_^)。そして「ヴィトゲンシュタイン全集」の端本も 2冊。などなど・・。5K程度で、新古本を山のように買いこんで満足の帰宅でした。
先週末には世界革命文学選「トロイの木馬」ポール・ニザン新日本出版社1976年刊を100円購入。開いてみると同名小説と別に「アデン・アラビア」も収ってました。その野沢協訳では初頭「私は二十歳だった。これが人生の花などと、私はだれにも言わせまい。」でした。ニザンは晶文社にて選集がありましたが、S40年頃刊行、小説「陰謀」収録の集英社「世界文学全集」懐かしい。そういえば角川文庫でも小説「アントワーヌ・ブロワイエ」ありました。
相変わらず店に入るときに馬鹿でかい声で「いらっしゃいませ!!」という声が響いたの で、相変わらず帰りたくなりましたが、我慢して店内を見て回りました。開店前、買い取り しか行っていなかった時には、東逸子の「シェイクスピア幻想」が2000円で売っていたのですが、 もう売れていました。それで最初からがっかりした私ですが、開店したばかりということ で100円コーナーが充実していたので、安い本を中心に漁りました。先ず、ハードカバーの100円の 小説で集英社の世界文学全集の端本のバルビュスの「地獄」と倉橋由美子の「大人のための 残酷童話」を見つけました。「残酷童話」は山下清澄の東南アジア風の緻密な銅版画が綺麗で す。ちくま文庫の阿部謹也「中世の星の下で」と同じく阿部謹也訳の岩波文庫「ティレ・オイレンシュ ピーゲルの愉快ないたずら」は、100円ではなく定価の半額でしたが、いずれ買わねばならな い本なので購入しました。他に萩尾望都が表紙を描いた光瀬龍の「銹た銀河」、高畑勲の詳 細な解説のついた徳間書店アニメージュ文庫のノルシュテインの「話の話」、富野由悠季のアニメージュ文庫 版の「逆襲のシャア」上中下、著者自身が監督をしてOVAされた「ガーゼイの翼」の一巻を100円で 手に入れました。また、漫画も100円コーナーが充実しているうちに買っておこうと富樫義博 の「幽遊白書」を大量に、そして懐かしの「バオー来訪者」の一巻を購入しました。
この日は、さらにこの辺りで私が一番気に入っている「BOOK O」にも寄ってきました。す ると、旺文社文庫のガルシンの「赤い花・信号」が100円で売っていました。こちらには、岩波文 庫には収録されていない短編が入っていたので購入しました。箱がついている文庫は余 り見ないので面白いです。他にもR.D.レインの「好き?好き?大好き?」等を購入しました。
そして締めは、江口書店で、東亜同文書院生の卒業中国横断旅行期集を1000円。 これは、昨年編集されて刊行されたものですが、ごの戦前に上海にあった日本の学校 に、興味があるだけでなく、この卒業旅行自体、軍事探偵の要素濃厚ということで、 内容に興味が持たれます。