Last updated Sep.04,2003
PROLOGUE 4

AM 11:55 コンコース

1、2分毎に、改札口から溢れ出る人達…。インフォピアの利用によって 物理的な移動が少なくなったとはいえ、今も昔も駅には人が集まる。
都市部としてはそう大きくないこの駅でも例外ではない。
駅舎は線路を跨ぐように作られた構造で、東西口を持つ。それにもかかわ らず、その主流は右…東口方面へと人を誘う。この時間、工場エリアの 西口方面へ向かう人は少ない。

ガラス張りのドーム天井からの日差しを受け、金色に輝くコンコース中央 の時計は、建造当時から50年以上時を刻み続けている。 その時計の周りにはベンチが配置され、格好の待ち合わせ場所となってい た。改札口から人が溢れる度に、そこに居るほとんどの人が、そちらに目 をやる光景は微笑ましい。

二人の男女がベンチに掛けていた。男性の方は膝の上においたノートPC のキーボードを忙しなく叩いていた。キーボードは人間工学的に形状を微 修正されながらも、この時代のデータ入力装置として生きていた。

女性の方はPradaのバッグから取り出したペーパーディスプレイを、改札 口に向けている。初めて会う人へのサインかなにかだろう。
二人の仕草は、仲の良い恋人同士か夫婦に見えたが…

「まだ少し、早いね。」

「…ん、そうだね、姉さん…」

島崎姉弟である。

姉は古都、弟は拓といった。二人は、やはりMirokuSystemTCGの 熱烈なファンだった。毎月のように場所を確保し、実デュエルの場を世の MS-TCGファンに提供していた。 インフォピアを使うことで実デュエルを行なう必要もないのだが、そこは 古都の拘りがあった。不思議とMS-TCGファンにはおかしな拘りがある。

ドーム東西の壁面の3D広告装置からコンコースに色んな立体映像が 飛び出して来る。未来に行った青年が、飛び出す鮫に驚くクラシック映画 を見たことがあるが、今や驚く人はひとりもいない。

ノートPCの画面に何かのクライアントがポップアップした。

「姉さん、公式大会が決まったよ。」

「えっ!、いつなの?」

「今日13:00から、ナゴヤで。」

「そう…」

と、目線を遠くに向けた古都の頬が紅潮していく。

「どうする?」

拓は心の中では参加を決め、猪突猛進的な古都が行かないわけはない と確信しながら、冷静に聞いた。間髪入れず、

「もちろん、行く!」

期待通りの答えを受け止めつつ、既に先の事に考えを巡らして いた拓は、

「今日の講習会参加者への言い訳はどうする?」

「俺さまにまかせときな!!」

好んで男言葉を使う古都は、そう言い、自分の心拍数が上がっていく のを感じていた。


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