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AM11:55 高尾山 3人乗りリフト
「チチチッ…」
小田のG-shockが小さな電子音を奏でた。
「ん…」
「メール?」
それに気付いた加賀野は聞いた。澤藤はこの時代にも緑豊かな山々の稜線を楽しんでいる。
3人はたまにはいいだろうと、リアルワールド、高尾山トレッキングに来たのである。
「MirokuSystemTCG公式戦の告知だよ。『あの』ナゴヤらしい。」
「おぉ、いいね…、今日の予定を少し変えないといけないね。」
小田と加賀野は頷いた。
「……」
知ってか知らずか、澤藤は相変わらず遠い目をしていた。
MirokuSystemTCG(MS-TCG)とは…。
1990年代にアナログ・トレーディング・カードゲームが生まれた。ただ単にカード収集
を行う目的にゲーム性を追加したモノである。札幌に本社を置くExanetz社は、
インフォピアの出現とともに、いち早くTCGをインフォピア上で行えるように開発した
ものがMS-TCGである。もちろん、従来のリアル・カードによるゲームも可能である。
そもそも販売やトレードはリアルワールドでの楽しみとして残された。
カードの形状その他はなんら変わった部分はない。ただ、印刷の過程で1μmほどの
厚さのフィルムメモリが挟まれている。これは外部から特殊な変調をかけた電磁波を
媒介し、そのデータを読み出すことができる。そのためのカードリーダーも販売され
ていた。
各個人はそのデータをインフォピア上にあるExanetz社のデッキサーバーに登録すること
でインフォピア上でのゲームを楽しむことができるのである。
「当然、ヘッドセットは持ってきてるよね?」
加賀野の問いに小田はジャケットの内ポケットからハイパーコム・ヘッドセット
を取り出して見せた。それを確認した加賀野は、今度は右隣の澤藤にも聞いた。
「お前は?」
「あぁ…」
MirokuSystemTCG使いの間で、彼らは『八王子風使い三人衆』と呼ばれた。
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