Last updated Sep.04,2003
PROLOGUE 2

AM11:55 高尾山 3人乗りリフト

「チチチッ…」

小田のG-shockが小さな電子音を奏でた。

「ん…」

「メール?」

それに気付いた加賀野は聞いた。澤藤はこの時代にも緑豊かな山々の稜線を楽しんでいる。 3人はたまにはいいだろうと、リアルワールド、高尾山トレッキングに来たのである。

「MirokuSystemTCG公式戦の告知だよ。『あの』ナゴヤらしい。」

「おぉ、いいね…、今日の予定を少し変えないといけないね。」

小田と加賀野は頷いた。

「……」

知ってか知らずか、澤藤は相変わらず遠い目をしていた。

MirokuSystemTCG(MS-TCG)とは…。
1990年代にアナログ・トレーディング・カードゲームが生まれた。ただ単にカード収集 を行う目的にゲーム性を追加したモノである。札幌に本社を置くExanetz社は、 インフォピアの出現とともに、いち早くTCGをインフォピア上で行えるように開発した ものがMS-TCGである。もちろん、従来のリアル・カードによるゲームも可能である。 そもそも販売やトレードはリアルワールドでの楽しみとして残された。

カードの形状その他はなんら変わった部分はない。ただ、印刷の過程で1μmほどの 厚さのフィルムメモリが挟まれている。これは外部から特殊な変調をかけた電磁波を 媒介し、そのデータを読み出すことができる。そのためのカードリーダーも販売され ていた。

各個人はそのデータをインフォピア上にあるExanetz社のデッキサーバーに登録すること でインフォピア上でのゲームを楽しむことができるのである。

「当然、ヘッドセットは持ってきてるよね?」

加賀野の問いに小田はジャケットの内ポケットからハイパーコム・ヘッドセット を取り出して見せた。それを確認した加賀野は、今度は右隣の澤藤にも聞いた。

「お前は?」

「あぁ…」

MirokuSystemTCG使いの間で、彼らは『八王子風使い三人衆』と呼ばれた。


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