Last updated Sep.04,2003
PROLOGUE 1

AM11:50 西新宿アイランド1F

「そろそろ会議の時間じゃない?」

デスクのハイパーコム・ヘッドセットを装着しながら、ライザは佐々林に言った。

「ああ、わかってるさ。」

そう言いながら、佐々林は冷めてしまったコーヒーを飲み干した。

西暦2052年、約50年前、ここ日本ではIT(Internet Technology)推進政策 が打ち建てられ、計画を上回る成果をあげた。ほぼ10年ほどの間にテラビット クラスのネットワークを構築することに成功したのである。また管理形態も大幅 に進歩し、その昔WANと呼ばれた広域ネットワークはLANへデノミネーションされ、 地球規模でのLAN構成を構築するに至った。

そして、それと同じくして仮想現実技術がブレイクスルーし、実社会とまった く同じといっていいパラレル世界「インフォピア」を築きあげていた。

「今日、ナゴヤで公式大会を行うことに決まりました。」

佐々林とライザはとなりのデスクでプロモーションカードを整理していた望月に 報告した。

「何時からだね?」

「はい、13:00試合開始です。」

佐々林は答えた。目の前のフォログラムディスプレイに浮きあがった文字は AM11:55である。SWWブラウザには、既に大会告知も表示されている。 かつてWWWと呼ばれた概念は宇宙規模に進歩し、Space Wide Web と呼ばれた。

「では二人で行って来てくれたまえ。」

「わかりました。」

佐々林とライザは特に困った様子もなく、頷いた…

ここは新宿である。いくら超高速新幹線「はやて」が東京―名古屋間を30分で 駈け抜けるとしても、大会告知から開催まで1時間は無理があると思うのだが…。 そう、名古屋はリアルワールド、ナゴヤはインフォピアでの地名を指すので ある。地名表現を区別するため、インフォピア上の地名をカタカナにすること で統一された。世界規模でである。

インフォピアの出現により、人の物理的な移動を行なうことは少なくなった のである。ほとんどはインフォピアで実現でき、さらにリアルワールドで できなかったことまで可能にしてしまったのである。

「お昼食べてからでも間に合うわね?」

「ああ。」

「センチュリーハイアットに新しいお店がオープンしたの、いってみない?」

「オーケー。」


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