*****海と空の境目が、どうしても見えなかったんだ
「わーーー!ホントに飛んだ!マジで飛んだ!!
ね、不二!飛んだよ!!」
「見れば解るよ、それに飛行機が飛ばないでどうするの」
修学旅行の移動はリッチに飛行機だった。
生まれて初めて飛行機というものにのるオレは、何度も乗った事のある不二にお願いして窓側の席を譲ってもらった。
それにしても不思議だ。
どうしてこんな重くて大きい物が空を飛べるんだろう。
オレだって飛べないのにね。
高度をぐんぐん上げて、低いところにある雲を追い越すまで、ずっと窓から外を見ていた。
下には海が広がっていて、雲が海に浮かぶように並んでいた。
行けども行けども海。
少し飽きてきて、隣にいるはずの不二に声をかけようとして振り向いた。
が、不二も外を見ていたらしく、視線は交わらなかった。
薄い瞳には海が映っているのだろうかそれとも空だろうか。
少し虚ろな目をしている。
------あ、まただ。
確かに隣にいるはずなのに、存在を感じない。
オレの隣に有るのは人間ではなくて虚無。なんてゆうか、カラッポ。
目に見えるのに存在はしないんだ。
そう、其れはまるで。
・・・・・・・・例えるなら
「水平線」
「不二ってあの水平線みたいだね」
水と空の境界線。
空でもなければ海でもない。
遠くから眺める事しか出来ないのな。
だって近づいても遠のいていくんだもん。
もしかしたら水平線なんてモノは存在しないのかもしれない。
見せ掛けの1本の線。
蒼い青い空と海の境界線は何処から何処までなのかオレにはわからなかった。
「そう」
一瞬視線を窓の外にやって、オレと目を合わせてから目蓋を伏せた。
「そうかもね」
時々不二はそんな風にあやふやになる。
掴まえておかないと・・・・・・・・・・・。
でないととんでもない事になりそうな気がしていてもたっても居られなくなる。
思わず不二の右手の人差し指を握る。
すると不二は伏せた瞳を再び上げて、悪戯っぽい顔で言った。
「じゃあ、エージは雲だね」
「雲はね、絶えず変化しているんだよ。今日の形は今日だけでしかないんだ。」
意味深に笑って、不二は細い腕を伸ばして窓の蓋を閉めた。
もうすでに瞳に虚ろな影は無い。否、見えないだけかもしれないけれど。
だけど臆病なオレは恐くてずっと指を握ったままでいた。
おねがいどうかきえないで。
ο ο ο ο
実はこんなのもあるんですが・・・・・見ます?(笑)
→視点移動「不二周助」
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