☆ 二重人格(仮)☆









  《 序 》

 「若君がお帰りにならないだと!?」

 電話を手にした男は、驚きに声を大きくした。

 「今日はバイオリンのレッスンがあったはずだな。迎えの車はどうした?・・・なに?大石が!?
 ・・・あのやろう・・・!」

 とある大手貿易会社のビルの一室。室内にいるのはこの男一人だ。

 十畳ほどの部屋には大きな机が一つ、それにソファと本棚があるだけだ。

 なにやら苛立った様子の男は、ゆったりとしたいすに座り、机の上に組んだ足をのせていた。

 手すりに乗せた手をきつく握っている。

 「探せ。駅には見張りを必ずつけろ。高速の料金所もだ。この町から外に出すな。それから町の中をくまなく探せ。何人使ってもかまわねぇ。諜報部にも応援を要請しろ。社長には俺が報告する。」

 男は眉間にしわを寄せ、険しい表情をしている。

 顔のガラが悪いわけではない。

 愛想の良い顔をすれば営業も向いていそうだ。

 だが今の表情からは、この男がそんな程度の仕事に収まる人間でないことが、はっきりと読みとれる。
 最後に男は、すごみのきいた低い声で言った。

 「若君に何かあってみろ。お前の首なんざいくら切っても足りねえぞ。」

 男は電話を切ると、いすから立ち上がって窓に歩み寄った。

 ブラインドの隙間を指で広げて、眼下に広がるひどく窮屈な街を見渡す。

 ひっきりなしに車が行き来している。

 [クソ、まさかあのヤローとはな・・・バカが・・]

 彼は高級そうなスーツを着ていたが、ネクタイはつけておらず、シャツのボタンも二つほどはずして いる。

 だがかえってその男にはその方がしっくりしているようだった。

 決して上品な風体ではないが、どこか迫力のある雰囲気を持っている。

 [はっ・・。逃げられると思ってんのか?やる前から結果なんざ見えてるじゃねえか。]

 「お前には最初っからコマがねえんだぜ?大石。」

 男は不適な笑みを浮かべてそうつぶやく。

 そして机に戻って電話をとると、なれた手つきで番号を押した。

 「桃城だ。社長に俺から話があると伝えてくれ。」

 電話を済ませると、彼は余裕を取り戻した足取りで、その簡素な自分専用の事務室を後にした――。


                 【続く】



モドル
ススム


東京ひよこさんの(苗字は二人で決めました・・・・あほや・・・)小説です。
序・・・ですよ!
若ですよ!あこがれの(?)!!
そしてバイオリンときましたよ!!流石ですね。(何が)
いいですねー。
ありがとねv
受験頑も張ろうね(鬼)