黄色い葉が、少し冷たく感じる秋風にのってきて袖にくっ付く。それをつまんで落として、次に前髪をなでてなおす。その一部始終を、彼はずっと見ていた。目が合って、なぜかその瞬間「やばい」と思って急いでそらした。
「なんだよ」
彼は苦笑した。わたしも彼と目を合わさないまま、少し下を向いて笑った。
彼はジャケットのポケットに両手をつっこんで、わたしをずっと見つめていた。なんだか照れくさくて、ずっと自分の足元を見ていた。白と黒のボーダーのソックスに、ゴールドのパンプス。風が吹くと深緑のスカートがふわっと視界に入って、また消える。

しばらくそうしていて、ふっと彼の顔を見てみると、彼はわたしでなくて空を見上げていた。わたしを見てくれていなかったことに少しふてくされて、彼の横にいった。彼はわたしの肩に腕をまわしてくれて、おまえも空を見上げてみろよ、と心の中でわたしに言った。少なくともわたしにはそう感じられた。
一緒になって秋の空を見上げる。

「なあ、あゆみ」
「・・・・」
「空、きれいだな。快晴じゃないけど」
「・・・うん」
「少し冷えるな」
「・・・だね」
「・・俺、ずっとあゆみがすきだから」
「・・・ありがと」

「あゆみ」
「・・・・」
「俺、もうすぐ、」

気がつくと彼は隣にいなかった。風もやんだ。さっきつまんで落とした黄色い葉が少し離れたところに落ちていて、それを拾って、カーディガンのポケットにしまった。彼みたいにポケットに両手をつっこんで、歩き出した。そのとき、あゆみ、と彼が呼ぶ声がして少し振り向いた。