向かいに座っているサキは、気まずいことを思い出すと表情をこわばらせる癖があった。そういうときに、どうしたの、と聞くと、思い出したくないこと思い出しちゃったの、もうあんなやつ死んじゃえ、死んでくれた方が世界のためだわ、なんて自分勝手で意味のわからないことを羅列して言う。でもそんなサキの気持ちがわからないわけでもなかった。死ねばいいと思う思い出の中の人。思い出なんてそんなきれいな言葉は合わないかもしれないけど。言い換えれば、完全に嫌いになりきれない人。完全に嫌いになれないのが悔しいから、死ねばいいなんて思う。そういうことを思ってる自分が死ね。