ドアをあけた瞬間夏らしい蒸し蒸しした空気がわたしに襲い掛かる。道に出て歩き出す。白い太陽が照り付けていて、肌をじりじりと焼き焦がそうとしてくる。日焼け止めを塗ってなかったら一気に真っ赤になるだろうな、と思う。あなたがわたしを焦がすことなんかできっこないのよ、と勝ち誇った心境。


黄色いポロシャツには小さな虫がよく集まってきて、それを払い落としながら歩く。小学生のときかぶってた黄色い帽子にもよく小さい虫たちは集まってきたし、虫たちは黄色をなんだと思って飛び込んでくるのだろうと思う。お気に入りの黄色いポロシャツ、虫の死骸の黒いシミをつけたくなくて、虫にはそっと触れるようにする。その程度でぽっくり逝ってしまう虫たち。なんてもろいんだろう。死んでるフリをしてるだけかもしれないし、気を失ってるだけかもしれないけど、ぴくりとも動かなくなって、やむをえず爪の先で虫の羽をつかんで振り落とす。


歩く先に横たわる、地面の熱で伸びきってしまった細長い生き物を見て、急な吐き気がわたしを襲う。水を飲んでそれを抑える。見たくもないのについ見てしまう。たまに見かける、細長い生き物の苦しみ。熱さのあまりぴくぴくとのた打ち回っていて、熱を注ぐ太陽を残酷に感じる。それよりもその生き物に対しての嫌悪感の方が強いのだけれど。