ミナト タツキ
室井さんはキスが上手い。
久し振りに会った恋人同士がする事ってったら先ずやっぱりキスでしょう。 初めは確かめる様に触れるだけ。それから耳朶をくすぐる様に首筋を掠める様に。 ゆっくりと、会えなかった時間を埋める様に。 「ね、室井さんってさ…キス、上手いよね」 口接けの合間に囁いて覗き込んだ目がからかう様に笑っている。 「…気になるか?」 「そりゃあね」 だって当然独りじゃキスは出来ないじゃん。相手が居たから、でしょ? 気にしたってしょうがない事ぐらい俺だって判ってるよ、一応ね。 でも…。 「聞きたいか?」 意地悪く笑うあなた。…完全にからかってるね、俺の事。 聞きたくない、と言うより先にあなたが口を開いて。 「…ヤヒロさん、と言ったな。可愛い人だったぞ」
まだ何か言い募ろうとするあなたの唇を乱暴に塞ぐ。 乱暴に口接けた所為で歯がどこかにあたったのか口接けは錆鉄の様な味だった。 「…何やってるんだ。お前は…」 呆れた様なあなたの声に俺は何だかいたたまれなくて腕の中の細い体をただ強く抱き締める。 気にしたってしょうがないって判ってるんだけど、やっぱり嫌だよ。 ハイ、自覚してます。俺もイイ年して何やってんだか…。 抱き締められたままのあなたの掌が宥める様に俺の背中を撫でる。 「可愛かったぞ、ヤヒロちゃんは。近所でも評判だったんだ。遊びに行くといっつも おばあちゃんとテレビを見ててな。それも水戸黄門とか遠山の金さんとか」 「…へ?」 「おかっぱ頭の似合う娘だった。私はその頃、近所でも評判の悪餓鬼だったけどな」 悪餓鬼?室井さんが…? 否!そうでなくって!! くっくっと震える背中で俺はあなたに担がれた事を知る。…ひっでえ。 そうしてゆっくりと降りて来る唇。大人のキス。 「…こんなイヤラシイキス一体、誰が私に教えるって言うんだ?」 「少なくともおかっぱ頭のヤヒロちゃんじゃないよね」 「そいつには他にも色々と習ったぞ?」 挑発する様に笑うあなた。俺の好きな顔で。 「…じゃあ復習してみよっか?」
再び降りてきた唇は先刻と同じく血の味がするのに何故だか酷く甘かった。
終
御隠居〜!!こんなんでごめんなさい!!なんか申し訳ない…バカップルだしさ。 気持ちだけ受け取って?お誕生日おめでとうございます!!これからもよろしくです!!
ぐはああッ!! (笑) |
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