その名はCウィルス





3

 性的な快感。そんなもの、スクルドは知らなかった。
 もちろん一度も味わったこともなかった。
 そして自慰の経験も無いスクルドにとって、突如訪れた下半身の疼き、それは恐怖の対象でしかなかった。
「なんなのよ・・・・・・熱いよ、怖いよ」
 目に涙を浮かべ、メンテナンス中のシーグルも食べかけのアイスクリームもそのままに。スクルドは身体を引きずるようにして自室を出た。ベルダンディーと螢一は仕事に、ウルドも先程出かけてしまった。そう、家に自分以外の誰も居ないことは判っている。それでも、スクルドは誰かに側に居て欲しくて。
 そして、居間の扉を開けたのだった。
「はぁい♪」
「はぁ、はぁ・・・・・・あなたは・・・・・・」
 居間のテーブルに腰を掛け、笑顔で手を振る少女。その姿にはどこか見覚えがあった。そう、あれは確か・・・・・・。
「大魔界長、ヒルド・・・・・・」
「憶えてくれていたのね。嬉しいわぁ」
 そう言って柔らかく微笑むその姿は無邪気な少女そのものであった。しかしスクルドは感じてしまった。その裏側に潜む、只ならぬ歪みに。
「嫌・・・・・・どうしてあなたがっ」
「それはもちろん、スクルドちゃんを可愛がってあげる為によ」
「ひっ!」
「あっれぇ。どうして逃げるのよぉ」
 ヒルドは笑みを浮かべたまま軽く身を翻すと、後ろ向きに逃げ出そうとするスクルドの前に立ち塞がった。そして強引にスクルドの手を引き取ると、居間の中へと引きずり込む。
「きゃっ、嫌ぁっ!」
「ほぉら、無理しちゃ駄目よ。身体が疼いて仕方がないんじゃないの?」
「そっ、そんなことないわよっ」
「うふふっ、こっちに来なさいよぉ」
 少女の小柄な身体からは想像できないくらいに強烈な力によって、スクルドはあっさりとヒルドの胸の中に抱き締められてしまった。
「スクルドちゃん、身体が熱いんでしょ? 特にここら辺がさぁ」
「ひんっ!」
 ジーンズパンツの上から股間をなぞられ、スクルドは細い悲鳴と共に大きく身体を震わせた。しかしそれだけでは終わらない。ヒルドはその長くうねる赤い舌で、その細い無防備な首筋をぞろりと舐め上げる。それだけでぞくぞくっと全身が痺れ、スクルドの身体から一気に力が抜け落ちる。
「今からスクルドちゃんの身体の疼き。静めてあげる」
「ああ・・・・・・」
 耳元で囁かれた言葉は紛れも無く。そう、正に悪魔の囁きであった。
 しかし、スクルドは抗うことができなかった。生まれて初めて味わう性的な疼きが、スクルドの思考をじわじわと侵し始めていたのだ。
「まずは邪魔な服を脱いじゃいましょうねー」
 パチン。ヒルドが指を鳴らしただけで、スクルドはあっという間に全裸にされてしまう。そして悲鳴をあげる暇も無く、畳の上へと押し倒される。
「わぁ、可愛らしい胸ね。むしゃぶりつきたくなるわぁ」
「駄目っ、やめ・・・・・・ああっ!!」
「どう、気持ちいい? ふふっ、まだちょっぴり硬いけど、それでも揉み心地は抜群ね」
 幼さを存分に残したその肢体は、押さえきれない欲情のためか、薄っすらとしたピンク色に淡く染まっている。ヒルドは浮き出た鎖骨をゆっくりと舐め上げながら、優しくスクルドの薄い胸を揉みしだいた。暫くその感触を堪能してから、その先端にそびえる硬くしこった小さな乳首を、ねっとりとした唾液と共に口に含む。
「んんっ!」
 それだけでスクルドの身体が大きく跳ねる。ヒルドは満足げな笑みを浮かべると、舌先で乳首を転がし、そして軽い甘噛みを繰り返した。
「敏感なのね。感度の良い子って好きよ」
「やぁ!」
「ほら、此処も。もうぐっしょりにしちゃって」
 ヒルドはきつく閉じられた足の付け根から、樹液のごとく垂れるように流れ出たスクルドの愛液を指ですくうと、スクルドの頬に優しく塗りつけた。そして、いやいやと首を振るスクルドの唇を、自分の唇で塞ぐ。きつく噛み締められた歯を、そして歯茎を丹念に舌で刺激されると、性に全く免疫の無いスクルドはあまりの刺激に我を忘れてしまう。暫くして観念したスクルドは口の力を抜き、こじ開けられた口内にヒルドの舌が潜り込んだ時、既にスクルドの肢体は完全に抗う力を無くしていた。
「そうそう、素直な子ね。可愛いわぁ」
「んっ、・・・・・・んんんんっ!」
 快楽と呼ぶにはあまりにも暴力的な荒い波が、スクルドの幼い精神を瞬く間に破壊していく。ヒルドの口辱はなおも執拗に続き、絡め取られた舌を激しく吸い上げられた時。スクルドは生まれて初めて味わうエクスタシーに、その小さな身体をびくんっ、と大きく震わせた。
「ふはぁ・・・・・・」
「ふふ、いっちゃったのね。どうだった? 気持ちよかったでしょ?」
 唇を離した笑顔のヒルドに問い掛けられる。しかしスクルドは、涙でくしゃくしゃになった顔を力無く横に振るのが精一杯だった。
「もぅ。素直になりなさいよ。気持ちいいんでしょう?」
 頬を舐め上げ、舌で涙の跡を拭い取る。そしてヒルドは乳房を弄んでいたその指を、遂にスクルドのクレヴァスへ向かって下ろした。力の抜けた肢体は、ヒルドが軽く力を入れるだけであっさりと足を広げさせられてしまう。
「ほぅら、その証拠にあなたの此処。すごく濡れているわ」
 幼い証であるかのように、ぴったりと閉じられた少女の秘部。優しくその上をなぞるだけで、ヒルドの指はねっとりとした濃い液にまみれる。
「此処はね、気持ちがいいとエッチなジュースをどんどん流しちゃうの。今のスクルドちゃんみたいにね」
「嫌よ、もう嫌ぁ・・・・・・あ!」
 雷を受けたかのように、スクルドの身体がびくっと跳ね上がった。ヒルドの指の爪が、まだ皮の向けていないスクルドのクリトリスを摘み上げたからだ。
「クリちゃんは一番敏感な場所なの。ほうら、どう?」
「ああっ、いやぁ! いたいよっ、うぁっ、うぁぁ!」
 そのまま指の腹で擦り上げられると、スクルドはあられもない悲鳴をあげて、畳の上で大きく身体を仰け反らした。
「ふふっ、またいきそうなのね。いいわ、いかせてあげる。何度でもね」
「やだっ、怖いよっ、やめてぇ!」
 徐々にだが快楽を認識し始めた身体はどこまでも貪欲で、それがスクルドにはとてつもなく恐怖だった。このまま快楽に溺れてしまう事は、悪魔に魂を売り渡す行為と等しく感じられたのだ。しかし頭ではそう判っていても、身体がひとつも言うことをきいてくれないのだ。それどころかもっとして欲しいと言わんばかりに、ヒルドの身体に身を任せてしまっている。
「怖くないわ。それに抗わなくてもいいの。ほら、いくわよ」
 ヒルドは身体を入れ替えシックスナインの姿勢を取ると、スクルドのクレヴァスに熱い吐息を吹きかけ、そして湧き出ている大量の愛液をぞろりと舐め取る。それだけでスクルドは敏感に反応し、身体を何度も波打たせる。それに気を良くしたヒルドは妖艶な笑みを口元に浮かべ、スクルドのクリトリスを皮の上から執拗に舐める。スクルドは目を剥き、その未知なる刺激にどこまでも翻弄されつづける。
 二度目の絶頂までは、あっという間だった。
「っ! ああっ、あああああああっ!!」
 スクルドが発したあられもない嬌声が居間に響き渡る。身体を大きく波打たせ、のけぞらして。そして暫くしてから、スクルドは荒い息を吐き、脱力と共に畳の上に崩れ落ちたのだった。
「ふふふ。可愛いわぁ、スクルドちゃんのいくところ」
「うぁぁ・・・・・・」
 劣情に潤んだ瞳がヒルドを見上げる。ヒルドはそんなスクルドかいとおしくなり、スクルドの唇を再度塞いだ。すると今度はスクルドも抵抗せず、自らおずおずと舌を突き出してくる。絡めあう舌。くちゃりくちゃりと淫靡な音が響き渡り、どちらのものとも言えない唾液がとろりと畳の上を汚す。
 もうどうなってもいい。スクルドは舌先から来る強烈な快感に酔いしれながら、澱んだ意識の中でそんな事を考えていた。この快楽が続くのならば、もうどうなろうと構わない・・・・・・。
 ヒルドの強大な力は、例え1000分の1になろうとも2級神のスクルドが太刀打ちできるものではなかった。スクルドはヒルドの魔性の力に取り込まれてしまっていた。快楽という名の、決して逃げ出すことのできないアリ地獄へと。
「ん、んんんっ!!」
 ディープキスを交わしながら、スクルドはびくびくと身体を震わせた。舌の交わりだけで三度目の絶頂を味あわされたのだ。しかし悪夢は終わらない。スクルドを抱き締めながらもヒルドの指はスクルドのクリトリスを愛撫し始め、スクルドはあっという間に四度目の絶頂を味わうことになる。
「初々しくっていいわぁ。やっぱり女神はこうでなくっちゃね」
 ヒルドが唇を離すと、スクルドはヒルドの胸の中で身体を小刻みに痙攣させ、どこか焦点の定まらない目でヒルドを見上げた。ヒルドはそんなスクルドの唇に軽くキスをすると、優しく微笑んだ。
「安心して。バージンは奪わないわ。やっぱり初めてだけは、好きな男の為に取っておかなくっちゃね」
 そして、スクルドの身体を畳の上に押しやると、そこに覆い被さりながら。ヒルドは自らの唇を舐めあげ、妖艶な笑みと共に言った。
「だからその分、めいっぱい楽しませてちょうだい。あたしが満足するまで、ね」


4

 藤見千尋の経営するバイクショップ「WHIRL WIND」。森里螢一とベルダンディーが務めている職場でもあり、今日も螢一はベルダンディーと共に、此処に働きに出かけていた。
 そして、昼休憩の時。近くのコンビにへと買出しに出かけた千尋を見送った後、お茶を淹れに行ったベルダンディーの帰りが遅くて、螢一は給湯所まで様子を見に行った。するとベルダンディーは既に沸騰したヤカンを前に、床に手をつき、座り込んでいたのである。
「ベルダンディー!」
「あっ、螢一さん・・・・・・」
 駆け寄った螢一がベルダンディーの肩に手を置くと、ベルダンディーは一瞬体を小さく震わせてから、その顔に微笑を浮かべてゆっくりと振り返った。
「ちょっと立ち眩みがしてしまって・・・・・・すいません、すぐにお茶を入れますね」
 立ち上がろうとして、しかし大きくバランスを崩すベルダンディー。慌てて身体を入れて倒れないように支えてから、螢一は気付いた。その身体が異様に熱い事に。そして顔色も酷く悪い。長い付き合いだから良く判る、今浮かべている笑みも、間違い無く無理をしている笑みだ。
「なんだよ、すごく辛そうじゃないか!」
「朝から体調が優れなくて・・・・・・すいません、螢一さんに迷惑を掛けたくなかったから・・・・・・」
「馬鹿。辛いのなら辛いって正直に言ってくれよ。俺、ベルダンディーが苦しんでいる姿を見たくないんだ」
 真顔の螢一にそう言われると、ベルダンディーは小さく頷いた。
「ありがとうございます。私、駄目ですよね。無理して、螢一さんに余計な迷惑をかけちゃうだなんて」
「迷惑だなんてこれっぽっちも思っちゃいないよ。それよりもほら、今なら千尋さんも居ないから家に帰ろう。家にはウルドもスクルドもいる。後で千尋さんには、俺がちゃんと言っておくからさ」
「はい・・・・・・そうさせてもらいます。このまま此処にいても、螢一さんい心配を掛けるだけですものね」
 微かに辛そうな表情を見せて、それでもベルダンディーは微笑を浮かべた。
「きっと、些細な事だと思います。だから。螢一さんが帰ってくるまでには元気になっていますね」
「ああ。でも、無茶だけはしないでくれよ」
「わかりました」
 泉の中に溶けるように。鏡に消えていくベルダンディーを見送り終わった時。
「やっほー」
 店の扉を開けて顔を覗かせているのは、なんとウルドである。
「こっちに来るなんて珍しいじゃないか。どうしたんだい?」
「ちょっとベルダンディーに用事があってね。ベルダンディー、いる?」
「ベルダンディー? ベルダンディーなら、今さっき家に帰ったよ」
「帰ったって・・・・・・どうかしたの?」
「どうかしたのって・・・・・・」
 螢一は微かに溜息を吐き。
「なぁ、ウルド。女神でも、風邪とかひいたりするのか?」
「そりゃあね。風邪もひくし、生理だってあるわよ」
「せっ、せ・・・・・・」
「ああもう、今時の男が生理くらいでどもらないの」
 ウルドは大げさに肩をすくめて見せた。
「で。ベルダンディーが風邪でもひいたって言うの?」
「ああ・・・・・・風邪かどうかは判らないけど。でも、なんだか辛そうだったんだ」
「辛そう?」
「すっごく身体が熱くって。きっと熱があったと思う。それに、顔色も悪かった」
「・・・・・・そう」
 ウルドは口に手を当て、暫く考え込んでいたが、
「なんだか嫌な予感がするわ。ねぇ、螢一。仕事の帰りに 「ドボン」 買ってきてあげてくれる? 今日が発売日なんだってさ」
「ああ、それは構わないけど」
「それと、できるだけ急いで帰ってきて。なんだか胸騒ぎがするの。あたしも今から家に飛ぶから」
 どこまでも真剣なウルドの瞳。螢一は頷いた。
「わかった。仕事が終わったら、本屋によってから急いで帰るよ」
「うん。それじゃあね」
 そしてウルドは空間転移の法術を唱える。しかし。
「・・・・・・なによこれ。おかしいわ」
「どうかしたのか?」
「結界よ。あなたの家の周囲に高位結界が張り巡らされている。いったい誰がこんな事を・・・・・・まさか、ヒルド?!」
「でも、ベルダンディーはそこの鏡から家に帰ったんだけど・・・・・・」
「きっと罠よ! くっ、ベルダンディーが危ないわ!!」
「待てよっ、それじゃあ俺も!」
「螢一は来なくていいわ。来たってどうせ家に入れないから。それに」
 ウルドは眉を寄せ、
「足手まといはいらないの。ヒルドは螢一が思っているほど甘くは無いのよ」
「でも、俺は約束したんだ。俺が帰ってくる頃には元気になっているって。だから俺が帰れば、きっとベルダンディーだって・・・・・・」
「それじゃあベルダンディーと約束した通り、仕事が終わってから家にかえりなさい。あなたが帰ってくるまでには、あたしがケリをつけておくから」
 そしてウルドは再度、空間転移の法術を唱える。そして悔しそうな顔の螢一に向かって、優しく微笑んで見せた。
「大丈夫。なんたってこっちには女神が3人もいるんだから。安心して仕事をしなさい。ああ、「どぼん」 だけは忘れないでね。スクルドが怒るわよ」
 そしてウルドの姿は瞬時に消えてしまう。
「あれ? 森里くん、ベルダンディーはどうしたの?」
 コンビニの袋片手に扉を開けて店内に入ってきた千尋に、螢一は返す言葉を見つけることができなかった。

 森里家の居間に降り立った時。ベルダンディーの身体に、ずしり、と異質な圧力が加わった。
「なに、この感じ・・・・・・え」
 それが強大な結界によるものだと瞬時にして気が付くが、それよりもベルダンディーは居間の光景を見て、驚きに目を見開いた。
 畳の上には全裸のスクルド、その白い肌に絡みつくのは醜い姿の淫魔達。そしてスクルドは淫魔達に全身を嬲られ、甘い喘ぎ声を上げ、淫らに悶え、苦しんでいた。
 そして、その様を目前で楽しそうに眺めている者がいる。その姿、見た目は少女のようだが見間違える筈も無い。そう、それは紛れも無い。大魔界長であるヒルドであった。
「あなたは・・・・・・」
「お帰りなさい、ベルちゃん。うふふ。ちょうど良い所に帰ってきたわね」
「なんてこ事を・・・・・・今すぐスクルドを離しなさいっ!」
「嫌、と言ったら?」
「実力で排除するまでです!」
 ベルダンディーは大きく息を吸い込むと法術を唱えた。しかし、何時まで経とうが一向に力が発動しない。驚きに言葉を失うベルダンディーに、ヒルドは楽しそうに笑い声を上げた。
「うふふ。無駄よベルちゃん。今この空間は、あたしの思うがまま。女神の力は封印させてもらったから使えないわよ」
「・・・・・・目的はなんですか」
 スクルドの淫らな喘ぎ声に、思わず耳を塞ぎたくなる。何故なら、自らの身体も共鳴しそうになるから。ベルダンディーは懸命に言葉を紡いだ。
「目的、ね・・・・・・。それはウルドちゃんが帰ってきたら話してあげるわ」
「姉さんは女神です。あなたがなんと言おうが、魔族にはなりません」
「でしょうね。あたしだってそれくらい判っているわ。でも、話し方次第でどうとでもなると思うのよ。例えば、スクルドちゃんとあなたを私のものにしたら。ウルドちゃんはどう思うかしら?」
「誰があなたのモノなどに!」
 怒りを露にするベルダンディーに、ヒルドは口元を吊り上げる。
「だから交渉よ。このまま放っておけば、スクルドちゃんは今日にも壊れちゃうわ。服を脱ぎ、あたしの前に跪きなさい。そして、一時でもいい。あたしのモノになると誓うの。それでスクルドちゃんは開放してあげるわ。それに、疼いているのでしょう? 我慢できないくらいにね」
「私の身体がおかしいのも、あなたの仕業なのですね」
「ええ。その通りよ」
「・・・・・・あなたの事、見損ないました」
 悲痛な表情、そして微かに涙を浮かべるベルダンディー。ヒルドは僅かに目を伏せ、どこか悲しげな表情を一瞬浮かべたが。
「これも全部ウルドちゃんの為なの。協力してもらうわよ」
 ヒルドは立ち上がると、ゆったりとした足取りでベルダンディーに近づく。
「ちなみにユグドラシルに介入を求めることは不可能よ。あたしの本体が、向こうで細工を施しているから」
「細工、ですか?」
「ええ、ちょっとばかりジャミングをね。だから、あなたがどれだけ窮地に陥っても天界からの助けは来ない。そう、ウルドちゃん以外には、ね」
 そしてヒルドはベルダンディーの目の前に立つと、厳かに述べたのだった。
「さぁベルダンディー。服を脱ぎ、跪きなさい」
「・・・・・・」
 耳に響くスクルドの甘い喘ぎ声には正気を感じられず、それどころかどこか狂喜じみていた。そう、ヒルドの言葉に嘘は無い。確かにこのままでは、スクルドは淫魔に嬲られつづけ、いずれ壊れてしまうだろう。
 ベルダンディーは小さく頷いた。
「わかりました」
「物分りのいい子。やっぱりそういう所、あの人によく似ているわ」
 ヒルドの声に何も答えず、ベルダンディーは衣服を脱ぎ去った。そして緩急のついた美しい肢体を露にすると、ヒルドの足元に跪く。
「誓いの言葉を」
 ヒルドの声に、ベルダンディーは頷いた。
「私は、今よりヒルド様のモノになります」
「ならば証明して。そうね、自慰をしてちょうだい。あたしの目の前で。よく見えるようにね」
 ベルダンディーは唇を噛み締め、小さく頷いたのだった。