「果て」


 何もかもが閉ざされた世界の中で。
 主の言葉のままに、私は生き続けるしかない。
 例えそれが、絶望という名の狭き檻の中であったとしても……。

 カカロがナルツガイスを部屋に呼ぶのは、これで何度目であろうか。
 それほどまでにナルツガイスの身体は極上品であった。今まで幾多もの女を犯してきたカカロが、その我を忘れるほどに。
 しかし感情の無いナルツガイスを相手に黙々と腰を叩きつける事に、そろそろ飽き始めていたのも事実であった。だからカカロはある事を思いついたのだ。
「お父様……」
「おお、アーヴィ。遅かったな」
 深夜。カカロの秘密の部屋を訪れたのはナルツガイスではなく、カカロの実の娘であるアーヴィであった。開かれた扉に手をかけ、その小さな身体には不釣合いな大きな赤いコートを羽織った彼女の頬はほんのりとピンク色に上気し、父を見るその目は何かを求めるかのように酷く潤んでいる。
「何を突っ立っている。早くこっちへ来い」
「……はい」
 口元に卑しい笑みを貼り付けたカカロがベッドの上で顎を引くと、アーヴィはふらふらとおぼつかない足取りでカカロの元へと足を運ぶ。そしてアーヴィはカカロの目前まで来ると、俯きながらも父に見てもらうためにコートの前をはだけた。瑞々しさを保った美しい白い肌に食い込むように纏われた漆黒のボンテージ。あの夜魔物と交わり、気が狂うほどの快感を父に仕込まれて以来。此処に来る時には、必ず身に纏うように言いつけられていた。
「なんじゃ、もうこんなにも濡らしているのか。わが娘ながらはしたない奴じゃ」
「うう……」
 父の蔑みを含んだ言葉に、アーヴィは恥ずかしさに顔を伏せた。アーヴィの秘裂から滲み出た愛液はふとともを濡らす程であり、それは明らかに欲情の表れであった。そう、アーヴィの身体は既に快楽の虜であり、実の父であるカカロに犯されることも、もはや苦痛では無くなりつつあったのだ。
「ほれ、まずはその口で咥えてみせい」
 言われるがままにカカロの男根に口を寄せる。立ち上る独特の臭いがアーヴィの脳を痺れさせる。震える赤い舌が控えめに竿を舐め上げると、カカロの男根はじわりじわりと硬度を増していく。それは父が感じていることを示すサイン。アーヴィの脳は更に痺れを増していく。
「今日は趣向を変えてみようと思うてな。サブツ」
 娘が自らの男根をしゃぶる姿を満足気に眺めながら、カカロは閉ざされた扉に向かって声を掛けた。
「ナルツガイスを呼べ。くれぐれもナナスには気取られぬな」
「ははっ」
 でっぷりと太ったカカロの召使、サブツは、額に出る脂汗をハンカチで拭うと慌てて部屋を後にした。その間もアーヴィは黙々と奉仕を続けている。その舌技はさんざん仕込まれただけあり、カカロを満足するに足るものであった。
「よし、尻を出せ。今日は尻の穴にたっぷりとくれてやる」
「うう……はい」
 アーヴィは父親の男根から銀色の唾液を垂らしながら、言われたとおり後背位、つまりカカロの男根に向かって腰を突き出した。むせ返る程の性臭、それはアーヴィーの秘部から発せられたものであった。アーヴィはカカロの男根を舐めるだけで発情してしまう体に成り果てていたのである。
 合図は無かった。
「はぁぁぁんっ!」
 ずぶり、と叩き付けられた男根はアーヴィの肛門の最も奥にまで突き刺さり、アーヴィは甘い喘ぎ声で答えた。待ちかねていたのだ、こうされることを。もう戻れない、そんな事とうに分かっていた。
「相変わらず良い締まり具合じゃ。ナルツガイスには及ばぬがな」
「くひぃい!」
「ほれほれ、もっと腰を使わぬか。自分だけ気持ち良くなれるとでも思うなよ」
「はいっ、ああっ、あああああ!」
 腸液のぐっちょぐっちょとはしたない音が接合部から漏れる。アーヴィの顔は快楽に歪み、口からはだらしなく涎を垂れ流していた。もし普段のアーヴィを知っているものがその姿を見たら、恐らく腰を抜かして驚くだろう程に。
「もっと気持ち良くしてやろう。ほれっ」
「ああっ駄目! ああああっ!!」
 カカロは手近に転がっていたバイブを手に取ると、アーヴィの秘裂ひと突き刺したのである。それを激しく前後にゆする。もちろん腰を動くことも止めはしない。
「駄目っ、お父様、わたしっ、わたしぃっ!」
「なんじゃ、もう気をやるのか? ならもう少しだけ我慢しろ」
「んんんっ!」
 必死に絶頂を堪えるアーヴィの尻に男根を叩き付けるカカロ。その動きが次第に切羽詰ってくる。そして1分も経たない内に、アーヴィは限界を迎えた。
「んんんんんんっ、もういくっ駄目ぇ、あはぁぁぁ!」
 アーヴィの身体が魚のように反る。肛門が激しく収縮すると同時に、カカロは一杯の精を直腸に放った。
「よしよし、たっぷりと出してやるからな」
「ああっ……、熱い……」
 直腸が父親の精液に満たされていくのを感じながら、アーヴィは恍惚と呟くのだった。
「カカロ様。ナルツガイススを連れて来ました」
「カカロには気取られなかっただろうな」
「はいっ、それはもちろん。ふぅふぅ」
 サブツに手を引かれ部屋へと入ってきたナルツガイス。その表情はまるで能面の様に色が無かった。
「よし、ナルツガイス」
 カカロはナルツガイスを強引に胸元に寄せると、その豊満な乳房を揉みし抱きながら言った。
「今日はお前に特別なことをしてやろう。期待することじゃ」
 そしてカカロは部屋の隅の道具入れの中から双頭のバイブを取り出すと、それを、身体中が弛緩して動くことのままならないアーヴィに向かって投げてよこした。
「誰が休んで良いと言った。ほれアーヴィ、それを身に着けるのじゃ」
「これを……ですか」
「そうじゃ。早くせい」
「ああ……」
 激しい絶頂の波に流されたままの怠惰な身体に鞭打って、言われるがままに双頭バイブの片側を秘裂に挿入するアーヴィ。
「暫くそこで自慰に耽っていろ。じゃが、決して気をやるなよ」
 そしてカカロはナルツガイスをベッドへと横たえると、その豊満な胸の間に男根を差し込んだ。
「パイズリをするのじゃ。教えただろう」
 こくり、と頷き、無表情に手を胸に添えるナルツガイス。カカロの男根を胸に挟み込むと、全身を使い胸を支点に上下へとゆっくりと動かし始める。その間に亀頭を舌で刺激することも教え込まれたとおりにやった。
「おお、このむず痒い快感もなかなか良いものだのう。よし、口に咥えるのじゃ」
 パイズリをしながら亀頭を口に咥え、口内でしごく。舌を絡ませ、鈴口を刺激すると、カカロは思わず呻き声を上げた。
「おおぅ、その調子じゃ。もっと強くしろ、おおっ」
 カカロの男根をナルツガイスの唾液が淫らに滑り落ちる。ナルツガイスは教え込まれた全ての技法を駆使してパイズリをし、カカロをあっという間に絶頂へと導くのだった。
「出るぞ、全部飲み干すんじゃ。一滴たりともこぼすんじゃない」
 大量の精液がナルツガイスの喉元に叩きつけられる。それを眉根ひとつ動かさずに飲み干すナルツガイスであった。
「さすがは至高のダッチワイフじゃ。ナナスには感謝せんとなぁ」
 カカロはナルツガイスから身体を離すと、
「アーヴィ、準備は整ったか」
「はぁ、はぁ……、はい、お父様」
 床に座り込み、クリトリスを擦りながら欲情に潤んだ目でカカロを見上げるアーヴィ。カカロは満足げに頷くと、アーヴィをベッドへ招き入れた。
「さて、アーヴィ。今日はナルツガイスと共に可愛がってやろう」
 そしてカカロはナルツガイスの潤んだ秘裂へ、双頭ナイブを導くのだった。
「ほれ、ずぶっと入れてやれ。遠慮はいらんぞ」
「はい。くうっ」
 アーヴィの愛液も手伝って、ずぶり、ずぶりとナルツガイスの中に飲み込まれていくバイブ。やがてアーヴィとナルツガイスの股間は一本のバイブによって結ばれた。
「よし、ナルツガイス。アーヴィをたっぷりと可愛がってやれ。嫌と言っても止めるな」
「あひっ!」
 カカロの言葉が終わらないうちに叩きつけられるバイブ。ナルツガイスの腰使いは半端ではなかった。時に優しく、時に激しく。右に円を描いたと思えば左に円を描き、アーヴィはその動きに翻弄され、高められていたことも相まってあっという間に気をやってしまう。
 しかしそれだけではなかった。アーヴィの肛門を、カカロの男根が貫いたのだ。
「うああああああっ!」
 アーヴィは泣き叫んだ。これだけの快楽は生まれて初めてだった。脳がとろける。
「もういくっ、駄目っ、またいっちゃうっ! またっ! あああああああ!」
 アーヴィは成す術も無く、快楽の海へと沈んでいった。

「ひっ、もうらめぇ、ああっ、ああああ……」
 白目を剥いて悶え苦しむアーヴィを横目に、カカロは呟いた。
「まだまだこれしきの事で気絶するとは肉奴隷としては修練が足りぬな」
 そして、足元で男根を舐め上げているナルツガイスの頭を撫でた。
「それにしても本当にこやつは良い人形じゃ。これからも役に立ってもらうぞ」

 絶望という名の狭き檻の中で。
 わたしはただ、言われるがままに生きていくしかないのだ。
 もう誰も。
 わたしを助けてはくれないのだから……。


END