大空寺といっしょ♪




 大晦日。それは一年の最後を締めくくる大事な一日だ。
 俺は上着のポケットに両手を突っ込み。神社の境内に繋がる階段の麓に立ち、そんな記念すべき一日の夜空をぼーっと眺めていた。
 雲ひとつ無い夜空には惚れ惚れするような黄色い月が、そしてそれを称える様に美しい星々が輝いている。この調子なら、今日の目的でもある初日の出も無事見ることが出来るだろう。
 それにしても。
「はぁ〜〜〜っ」
 俺は大きく体を震わせて、口の中から白い息をめいっぱい吐き出した。なんでも今夜は今年一番の冷え込みになるらしい。めいっぱい厚着をしてきてもこんなにも寒いのだ、この上着を脱げは、確実に凍死するに違いない。
 そんな極寒の仲。俺の目の前を通り過ぎていく、仲睦まじいカップル達。
 腕なんか組んで、へらへらと笑顔を浮かべて。寒くないのか? お前らは。
 それ以前にこんな場所に1人立ち尽くしている俺って、きっと傍目から見てもとんでもなく惨めなんだろうな。
 だめだ。なんだか空しくなってきた。
「なに呆けてるのさ。いつものアホ面に磨きかけてるんじゃないわよ」
「それが、待ち合わせに30分も遅れた奴が言う台詞か?」
 もうすっかり耳に馴染んでしまった声に、俺は振り返りざま、思いっきり眉を顰めて見せた。そこには俺の恋人、ちっこいくせにあいもかわらず偉そうに人を見下した態度の大空寺あゆがいた。
「糞虫の分際で偉そうね。来てあげただけでも喜びなさいよ」
「あのなぁ。今晩は絶対に空けておけ、時間に遅れたら絞め殺すって言ったのはどこのどいつだ?」
「さぁ。あんたの耳の中、腐ってるんじゃないの」
「……わかった。これから別行動な」
「あっ、あんですと〜〜〜っ!」
 騒ぎ立てるあゆを残し、俺はさっさと階段に足をかけた。
「ちょ、ちょっとバイトが長引いちゃったのさ。別に悪気があった訳じゃないのさ」
「ごめんなさい、は?」
「……ごめんなさいさ」
 悔しそうに、可愛らしく唇を尖らせるあゆ。そんな姿が堪らなくいとおしくて。
 だいたい、怒る気なんて更々なかった。年末、あゆのバイト先がどれくらい忙しいかはわかっていたから。だから俺は笑った。
「ほら」
「……なにさ」
「寒いだろう。ほら、手をつなごう」
 俺が差し出した手を、暫く眺めていたあゆ。そっと手を取ると、俺の目から目をそらして。頬を染めて。小声で言った。
「ふん。……勝手にするがいいさ」
「ああ、勝手にするよ」
 添えられた小さな手を、ぎゅ、と握り締める。
 あゆは頬を染めたまま、少しだけ体を震わせた。
「……あったかいさ」
「俺もだ。さ、そろそろ行こうか」
「うい」
 そして、2人並んで長い階段を上がる。そうして辿りついた神社の境内には多くの屋台が出ていて、大勢の人間が賑わいを見せていた。俺はあゆと手をつないだまま、その人ごみの中を歩いていく。
「なぁ。何か食べるか?」
「飯は向こうで食ってきたからいい。あんたはどうするのさ」
「じゃあ俺もいいや。それじゃあさっさと奥へ行こう」
 そしてあゆを連れて神社を抜けると、俺はあの場所へと向かった。
 そこは誰もいない、俺達だけの聖域。
 思い出の積もった一本の大木。そこに背中を預ける。山の中腹、ひらけた景色からは、天然のイルミネーションに彩られた美しく輝く街が一望できた。
「あ〜もうっ。糞っ寒いわねぇ」
「なあ。もうちょっとロマンティックな言葉は吐けないのか?」
「柄じゃないさ。ほっとけや」
 そう言いながらも、街の景色を眺めながら嬉しそうに微笑むあゆ。
 そんなあゆの横顔を眺め。俺は思わず苦笑いを浮かべた。
 あれから。あゆと付き合うようになってから、本当に色々なことがあった。遥には本当のことを言って、きっちりとケジメをつけた。同伴したあゆのお陰で病院を巻き込んでえらい騒ぎになった事については、今となっては良い思い出だと思う。
 そして身辺の環境も落ち着き始めた頃。俺はコンビニのバイトを新しく始め、あゆはファミレス(もちろんすかいてんぷるとは別系列の)のバイトを新しく始めた。きっちりと猫を被っておけよ、とさんざか釘をさしておいたのが功を奏したのかは良く分からないが、今ではお互いにそこそこ忙しい日々を送っている。
 そんな折、迎えたクリスマスイヴ。休みが取れなかった俺の仕事場に押し掛け、一緒に仕事していた女の子を無理やり帰宅させ(その女の子はあゆに苛められて泣きながら帰っていった)、強引に俺の手伝いをしたあゆ。客の居なくなった深夜、バックルームであゆの買って来た巨大なホールケーキを仲良く食べたことも良い思い出だ。そのあと店長にしこたま怒られたけれど。
 そして今日、大晦日。初日の出を一緒に見ようと言い出したのもあゆだった。
「今5時30だから。あと一時間くらいかな」
 俺は腕時計を見て、あゆに言った。あゆは街の景色を眺めながら小さくこくんと頷くと、おずおずと、俺の腕にその細い腕を絡めてきた。
 これは。
 ちょっと意地悪がしたくなる瞬間だ。
「なんだよ。寒いのか」
「……あによ。こんなにも可愛い彼女と腕が組めるってのに迷惑なの?」
「だれもそんな事は言っていないだろ、馬鹿」
「あっ、あんですとっ!」
「あ〜〜〜もう。わかったよ。可愛い。あゆは可愛いよ。俺は果報者だよ」
 膨れっ面のあゆの髪をくしゃくしゃと掻き回してやる。
「あっ、あにするのさっ」
「可愛い。本当に可愛い。そんな可愛いあゆが、俺は大好きなんだ」
「……っ!」
 あゆと付き合い始めてから、ひとつ確実にわかった事がある。
 それは、頭を撫でられて可愛いと言われることに、こいつはめちゃくちゃ弱いって事だ。
 案の定あゆは瞬時に顔を真っ赤にすると、ぷい、と顔を背けてしまった。
 そんなあゆが。
 俺は、本当に可愛いと思う。
「なぁ、あゆ。……キスしよっか」
「なっ! このセクハラ王っ、オマエなんか猫のうんこ踏めっ!」
「大丈夫。ここには誰も来ないし、誰も見ていないって」
「ん〜〜〜っ!」
 俺は逃げ出そうとするあゆの手を捕まえると、体を引き寄せ、強引にあゆの唇を奪った。あゆは暫く抵抗していたが、俺の舌があゆの口内に入ると、ようやく諦めたのだろう。
「ん……」
 積極的にあゆも舌を絡めてきた。俺も負けじと激しく舌を動かす。そして互いにたっぷりと口内を味わってから。俺はあゆから体を離した。すると頬を上気させ、息を少しだけ乱し、俺を見上げるあゆ。
「……あにさ」
 その目は酷く潤んでいて、まるでミルクを欲しがっている子猫のようだった。
「もしかして、スイッチ入れちまったか?」
「…………ん」
 うつむき。小さく、本当に小さく頷くあゆ。
「そういや、最近忙しくってご無沙汰だったからなぁ」
 そういえば、最後にあゆとSEXしたのは一週間以上も前だったと思う。
 よほどお互いの体の相性が良かったのも大きな原因だったと思うが、あゆはSEXに対してだけはものすごく素直な奴で、お互いにプーの時は、それこそ毎晩のようにSEXしていた事を思い出す。
 最近はお互い忙しくて(時間帯も合わないことから)縁が無かった。だからすっかり忘れていた。
「なぁ。我慢できないんだろ」
 俺は意地の悪い笑みを浮かべ、言った。
 こうなれば、とことん苛めてやろう。
「此処でしてやるよ」
「だっ、駄目だってばさ。もし人が来たら……」
「だから、ここなら大丈夫だって言ってるだろう?」
「んんっ」
 俺はあゆの小さな体を大木に押し付けると、もう一度、強引に唇を奪った。そして逃げようとするあゆの太ももの間に膝を入れ、動けないようにする。
「んはっ、ほんと、駄目だってばさ!」
「駄目って言っている割に、ここは正直だけどな」
「あっ、あにすんのよっ!!」
「こんなに湿ってるじゃないか」
 俺はあゆのスカートを強引に捲り上げると、すでに湿り気を帯びているショーツを乱暴に弄ってやった。あゆはいやいやと首を振るが、派手に逃げようとはしない。どこかで期待しているのだ、ここで犯されるということに。
「あんまり声を上げるなよ。それこそ人が来ちまうからな」
「んっ!」
 スカートの中に頭を入れショーツを下ろすと、すでにそこはぐっしょりと潤いを帯びていて、俺は遠慮なく舌でそれを舐め取った。ぶるり、と大きく体を震わせるあゆに気を良くして、今度は舌を奥まで差し込んでやる。
「あひゃっ!」
 スカートの中だからあゆの表情はよく分からないが、あゆが両手で俺の顔を股間に押し付けてきたので、きっと激しく感じているのだろう。俺はまず一度イカせてやろうと思い、あゆの小さなクリトリスの皮を剥くと、舌の上に大量の唾液を乗っけてから、それを口に含んだ。
「んんんっ!」
 やや押さえ気味にだが、派手な嬌声が聞こえた。俺は口元に笑みを浮かべ、舌を使い丹念にあゆの一番感じる部分を責めあげてやる。するとあゆは足を大きく震わせ、俺の頭に体重をかぶせてきた。どうやら立っていられなくなったらしい。
 あと少しだ。俺は右手人差し指と中指を使って、あゆの熱い中をたっぷりと蹂躙してやる。その間も舌での愛撫はもちろん続けている。すると一分も立たないうちに、あゆは体をかがめて、俺の頭をきつく押し付け、
「だめっ、あああっ、んんんんっ!!」
 くぐもった声と共に、その小さな体を大きく仰け反らせた。
 くたり、と大木にもたれ掛かり、焦点の定まらない目で荒い息を吐いているあゆ。俺はそんなあゆを後ろに振り向かせると、大木に手をつかせた。そしてスカートを背中まで捲り上げる。露になったあゆの恥ずかしい裸身は寒さのためか時折ぶるりと震え、その姿が酷く淫靡で。
 俺は急いでズボンを下ろすと、いきり立った剛直を取り出した。
「いくぞ、あゆ……」
 微かに頷いたあゆ。俺は勢いをつけ、一気にあゆの中を貫いてやった。
「んんんんんあっ!!」
 あゆは片手で口を塞ぎ、なんとか声を押し殺していた。しかしそれも長くは続かなかった。俺が序盤から勢いよく腰を叩き付け、子宮をえぐると、あゆは声を殺すことも忘れ、激しく喘ぎ声を上げた。
「あんっ、あああっ、だめっ! 声、止めれないっ!」
 しかし俺はそんなあゆの声を無視して腰を激しく動かし続けた。俺もきっと溜まっていたのだ。とにかく快楽が欲しくて。だから一度目の絶頂まではあっという間だった。
「中っ、いいかっ」
「だめっ、んっ、外に、ああっ、出せっ!」
「っっ!!」
 どくん。
 俺が放った濃い精液が、あゆの白い尻にべったりと張り付いた。

 それから俺は3度精液を放ち、あゆは3度絶頂を迎えた。
 いつの間にか空の向こうが僅かに明け始めていて、俺はあゆの尻に付いた精液をティッシュで拭ってやっている間にそれに気づいたのだった。
「おおっ、あゆ。初日の出だぞ」
「はぁ、はぁ……。それどころじゃないわよっ、ぼけっ!」
 まったくもってその通りだった。
 結局。
 あゆの機嫌は、部屋に帰っても直らなかった。
「あ〜も〜〜うがあああ〜〜〜っ! オマエなんか、猫のうんこ踏めっ!!」