 フォトニュース
|
| | |
 |

|
映画「私をみつめて」は、摂食障害とひきこもりに苦しんだ河合由美子さんの格闘の記録だ。画面のシーンは約1年前の河合さん(大阪電気通信大で)
|
 |
摂食障害に苦しみ、約10年間もひきこもりを続けた女性が、ドキュメンタリー映画に主人公として出演した。
『私をみつめて』は、新たな居場所を求めてもがく姿を赤裸々に記録した異色作。「外へ出たいのに、出られない苦しみ」を体験した彼女は、行動することで自らを変え、社会も変えようと決意した。今もひきこもりに苦しむ仲間への「脱出できるんだよ」というメッセージでもある。
河合由美子さん(35)は、20代になってから通算10年余りを大阪府羽曳野市の自宅の部屋で送った。
過食と拒食の繰り返しだった。ケーキやドーナツを買い込み、週に10キロも太ったかと思うと、1か月も何も食べず、口にしても吐き出してしまう。
「やせていれば男性からチヤホヤされる。太っていたらダメ」。10代後半から他人の評価ばかり気になった。太ると周囲の目が不安で外出できない。やせると力が出ない。そして、ひきこもりが長く続くと、そのことをどう見られるか怖くて、よけいに出られない。
うつ状態、家庭内暴力。パソコンだけが外部との接点になり、ネットで入手した向精神薬で自殺を図った。精神病院への入院を経て3年前、やっと外出できるようになったが、摂食障害との闘いは続いた。
そんな時、映画への関心を通じて出会ったのが『ゆきゆきて、神軍』などで知られる原一男監督。日本映画学校(川崎市)の講師でもある原監督の発案で、学生4人が卒業制作として昨年7月から撮影した。
54分の作品の中で彼女は、歳月を奪い返すように自分をさらけ出してパワフルに動く。同じ家に住みながら14年も顔を合わせなかった父親と対面し、かつての体罰を追及する。なぜ生きづらいのか、母親とも語り合う。ネットで知り合った男性を東京へ訪ね、姉の暮らすニューヨークへも飛んだ。撮影開始時に85キロあった体重は、40キロ台まで減った。
「ニューヨークでは外見に誰も関心を向けず、楽だった。脱出を難しくするのは世間の無理解。ひきこもりだった人も再出発しやすい社会にしなければ」と河合さんは言う。今は原監督が教授を務める大阪電気通信大に通い、映像表現の仕事を目指している。
原監督は「生身の人間の持つエネルギー、映像の迫力に満ちた作品。撮影する学生たちの方が押され気味だった。一般上映を実現したい」と話している。
(2004/6/10/14:56 読売新聞 無断転載禁止)