性同一性障害に関する用語集

このページは性同一性障害を始めとするセクシャル・マイノリティに関する用語を、そういう知識の少ない人にご説明するためのものです。よくわからない単語などあれば、これをご参照ください。ある程度、筆者杉浦の考えも入っていますが、それはそれで明記してあります。どうしても杉浦の狭い見聞によりますので、MtF に関する用語・解説が多くなりますが、ご容赦下さい。

目次

アスペルベルガー症候群
アセクシャル
イブ原理
うつ病
FFS
SRS
Xジェンダー
FtM
MtF
おかま
おたく
男ブリっ子
男モード
オネエ
ガイドライン
学歴
カミングアウト
拒食症
クィア派
クロスドレッサー
健康保険
声パス
gid
GID研究会
シーメール
ジェンダー
ジェンダー圧力
ジェンダークリニック
ジェンダー表現
自助グループ
自分バレ
純女
女装サロン
女装スナック
純男
心理検査
性自認
性的指向性
性転換
性別違和
性別二元論
性別欄
セカンドオピニオン
セクシャル・マイノリティ
設定年齢
セーラー服
脱毛
TS原理主義
T's
トイレ
当事者
同性愛
特例法
ドラッグクィーン
トラニィ・チェイサー
トランジション
トランス
トランスジェンダー
トランスセクシュアル
トランスヴェスタイト
トンデモGID
名前の変更
ニューハーフ
ノーホル
ノンカム
ノンパス
パス
パートタイム
半陰陽
フライング
フルタイム
フルパス
プロセス派
ボイトレ
ホルモン異常
ホルモン医療
埋没
ミックス
リアルライフテスト
リード
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アスペルベルガー症候群

自閉症のパターンの一つ。コミュニケーション障害が軽いタイプ。対人コミュニケーションが苦手だが、特定テーマに強い能力を発揮したりする。非常に手先は不器用。2005年度のGID研究会で、MtF に関してのみ合併するケースが報告された。まあ、一種の「オタク質」であり、MtF のオタク傾向から見ると、何となく納得がいくようないかないような...

アセクシャル

性的指向性が男性・女性のどちらへも向かわず、性的なことには一切関心がないこと及びそういう人。性同一性障害の場合、かなりの頻度でアセクシャルであるようである。勿論、性自認とは無関係にアセクシャルな場合もあることは言うまでもない。

イブ原理

発生学の上で、女性の器官をベースにして男性の肉体が形作られ、その逆ではない、という医学的事実。つまり「女性の肉体」+「男性ホルモン」=「男性の肉体」なのである。だから、FtM の場合には男性ホルモンが良く効いて、ほとんど男性にしか見えない外見を比較的たやすく手に入れることができるが、MtF の場合には女性ホルモンを投与しても、そんなに簡単には全体の印象が女性化するわけではない。脂肪分布などはある程度女性化して乳房などが発達するが、骨格が縮むわけではないし、喉仏が縮小するわけでもない。

うつ病

なぜかトランスジェンダーに多い病気。かくいう私も大学生の頃経験あり(それ以降は一応コントロールできてるけど)。「心が望むジェンダー表現が出来ない」から、「トランスしてもなかなか思い通りにいかない」から、「そうなる...」という説明はなかなかもっともらしいのだが、ひょっとしてもっと深い関連があるのではないか、と私なぞは疑っている。たしかに一部の抗うつ薬に、乳房が女性化する副作用があったりもする...

FFS

顔面女性化手術(Facial Feminized Surgery)。MtF 用の究極の手術とされる整形手術。頭部の先天奇形の手術をベースにした、ほとんど「骨格を組み替える」というような強烈な手術のようである。「性転換 ― 53歳で女性になった大学教授」の著者ディアドラ・マクロスキーはこれを受けたようである。確かに顔立ちが完全に変化している。

SRS

Sex Reassignment Surgery(性別適合手術)の略。いわゆる「性転換手術」のこと。1998年に埼玉医科大学で日本で公的医療としては初めて施行された。もちろん、海外では SRS は性同一性障害の治療として合法的に施術されており、それまでの医学界における「タブー視」がまったく不合理なものであることは言うまでもない。それを補うために当事者は海外で SRS を受けたとか、あるいは一部の国内のクリニックでガイドラインに沿わずに施術した(いわゆる「闇の手術」)、という話を聞く。筆者はホルモン治療は受けたいが、SRS は状況を見て判断するつもりです。

Xジェンダー

男性でも女性でもない独自の固有なジェンダーを求めるグループのこと。男性/女性のジェンダー表現のミックスだったり、中性だったり多様である。

FtM

Female to Male。女性から男性に性別を改めたトランスジェンダーのこと。FTMTG という風に使う場合もある。

MtF

Male to Female。男性から女性に性別を改めたトランスジェンダーのこと。MTFTS という風に使う場合もある。

おかま

男性同性愛者・MtFTG女装の男性・男娼・めめしい男性らを区別せずに差別する蔑称。フツーは言っちゃいけないよ。特にトランスジェンダーは今まで「おかま」と呼ばれて傷ついた経験が豊富.... ただし、男性同性愛者が自称として使うケースもある。

おたく

MtF に関してのみ、オタク傾向はかなり強いケースが多い。まあ、子供時代どうしても孤立がちだからね。あと、特にクラシックオタクが多い傾向があり、ブラスバンドなどをやっていた人が多い。中学〜高校の時期は、特に男子は「女と一緒になんかやってられるか!」という過度なマチズム傾向がどうしてもあるので、ブラスバンドのような女子がほとんどを占めるサークルに入るのはほとんどない。しかし MtF は「女子と一緒に出来てうれしい!」ということが多いので、特にこういう傾向が強まるようである。アスペルベルガー症候群も参照のこと。

男ブリっ子

男性同性愛者用語。オネエなゲイが男の気を惹くために、無理に男らしくすること。MtFだって男ブリっ子をしなけりゃならない時もある。

男モード

パートタイマートランスヴェスタイトなど、両性の服装をする人々は、「男モード」「女モード」という言い方をしがちである。筆者の場合、自分はホントは女性だと思っているので「女性で外出」とは言っても「女モード」とは言わないが、「男モード」はよく使う。心理的に男性をする方が抵抗感が強いのかなあ?

オネエ

ゲイ用語。女性的な、あるいは受け身の男性同性愛者を示す言葉。どうやら「男性とSEXしたいのは、自分が女だからではなかろうか?」という疑念に駆られるゲイもかなりいるようである。しかし、私の見るところ、一見して MtF とゲイのオネエとは、印象が異なる。両者はまったく別物である、と思う。筆者の見聞の範囲では、MtF の大きな特徴として、男性の大きな特徴である「肉体の主張感」が、欠けているのを感じる(はなはだ主観的な表現で済まない)。男性の肉体は「ここにいる!」という風な信号を強く出しているのだが、女性と MtF はこのような「肉体の主張感」がないように感じる。勿論ゲイはこの点ではノンケの男と同じである。

ガイドライン

正式には「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」。現在第ニ版である。日本精神神経学会の特別委員会が定めた、性同一性障害に関する医学的コミットメントの基準とプロセス。治療の段階を3段階に分けてチームによる治療方針を原則とする。
  1. 診断:詳細な養育歴・生活史・性行動歴を聴取し、性別違和の実態を明らかにする。また、性染色体・ホルモン検査などを通じて身体的性別に関する半陰陽などの異常を確認する。その結果「二人の精神科医が一致して性同一性障害と診断することによって診断は確定する」。
  2. 第一段階:精神的サポート。カウンセリングを通じて苦痛を和らげ、今後の性別移行に関する相談に乗る。カミングアウトの計画なども立てる。
  3. 第ニ段階:ホルモン治療と乳房の切除手術。及び希望する性別での新しい生活スタイルの確立。これを行うためには診断が確定(「二人の精神科医が一致して性同一性障害と診断する」、いわゆる「セカンド・オピニオン」)していることが条件となる。
  4. 第三段階:第二段階でも苦痛が軽減されない場合、SRSを施術する。これにもセカンド・オピニオンが必要な上、倫理委員会での審査が必要になる。
詳しくは全文を参照のこと。ただし、このガイドラインに沿わない医療を行ってきた医療機関もあり、当事者の独自判断でホルモン剤を輸入し服用するケースもある。このようなガイドラインに沿わない医療を受けてきた当事者を排除するためにガイドラインが制定されたのではない、と明記されていることに注意。

カミングアウト

「カムアウト」とも。一般に差別を受けがちな出身・性的指向性を持った人が、自己に正直であるために、あるいは「差別に負けないぞ!」という気概を示し、差別の不合理性をアピールするために行う、今まで隠していた不当な被差別特性を公にすること。トランスジェンダーの場合には、フルタイム生活を行う時点で、これが必須となるケースが多いが、「埋没」してカミングアウトなしで新しい性別での生活を始めるケースもある。また、トランスジェンダーのカミングアウトは、「性別移行」のプロセスの中でする場合には、「扱いかたを変えてください!」とカミングアウトされた人に要求するわけであり、一般的なカミングアウトの通例、「(在日朝鮮人である/被差別部落の出身である/同性愛である)が、今まで通りのお付き合いを期待しているよ!」というのとは、随分状況と必然性と重大性が異なる。

学歴

MtF は高学歴、という明白な傾向がある。これは子供の頃「女っぽい!」というのでイジメにあいがちな MtF は、イジメ防止という目的のために勉強を頑張る傾向が強い。また、ジェンダーフリーな傾向の強い大学のような環境だと、居心地がいいのでついつい長居をしてしまう、というのもあるだろう。FtM の場合はそういう傾向は見られない。それよりも実際に体を使う肉体労働を好む FtM は多い。

拒食症

若い女性に多い病気。それだけならば、ここで解説する必要はないのだが、実は私は中学生の頃、これになった。また、FtM で拒食症になる人もいるようである。要するに第二次性徴の訪れとともに、肉体が男性化・女性化することを拒むために、「拒食症」の症状が現われるケースがあるのではないか、と私は思うのだが、なかなか拒食症関連の書物にもこのことが書かれているケースがあまりないので、ここで指摘しておこうと思う。

クィア派

性別を移行するのだが、パスを重要な要件であるとは考えないグループのこと。「クィア」とは一般に「変態」という程度の英語であり、「男でも女でもない」ジェンダー表現を追求する、というのがスローガンになることが多い。特に「MtF」「FtM」に倣って「MtX」「FtX」と自称するケースもある。「Xジェンダー」とも自称することがある。

クロスドレッサー

トランスヴェスタイトの自称。医学的な用語であるトランスヴェスタイト(異性装症)に対して、プライドの持てる呼称として一部のトランスヴェスタイトが使う。

健康保険

健康保険は、ガイドラインの第二段階以降は現状では使えない。ホルモン治療SRSは自費であり、経済的負担は大きい。このため、性同一性障害の治療に健康保険が適用されることを求めて、医療関係者を中心に運動がなされている。また、当事者にとっては、保険証の性別欄の記載が原因で、医療機関を受診しにくいという大きな問題があり、病気をこじらせた話がある。それじゃ健康保険って一体何のためにあるの??

声パス

声が希望の性別で通ること。ボイストレーニングをしてくれる先生もいるし、手術で声を高くするというのもあるようである。が、発声の方法に気をつけるだけで、かなり女声になるようにも感じている。コツは声を頭で響かせることにあるようだ。私はフツーに女性で喋れるようである...が、声ばっかりは自分ではよくわからない。定石はテープレコーダーなどに声を録音して、次第にキーを上げていく、というのがよく言われるアドバイス。

gid

Gender Identity Disorder(性同一性障害)の英略号。当事者はこれを良く使う。ただし、特に「gid系」という言い方をする場合には、性同一性障害を「病気」と捉え、「SRSによって病気が治る」と捉える当事者団体のことを指すニュアンスがある。

GID研究会

性同一性障害を専門分野とする、医療関係者などによる研究会。当事者や社会活動家なども多く参加して年一回(春)開催される。2005年は、関西(神戸学院大学)で開催された。「研究会」とはついているが、学会に準じるものである。しかし、共通の目的があるために、典型的なミックスの交流会的側面があり、なかなか有益である。なお当事者のみのトランス全国交流会が、このGID研究会の前夜などに持たれる。

シーメール

風俗産業用語。ニューハーフの中で、SRSを受けていない、「乳房も男性器も両方ある」人のこと。しかし、一般にトランスジェンダーの場合、男性器を触られるのは大変イヤなものなので、ご苦労が偲ばれる...

ジェンダー

社会的性別。これは性器の性別(セックス)や、性的指向性と、社会的性別とを区別して考えるジェンダー論の概念である。トランスジェンダーの場合、ジェンダーを変更することが多く重要であり、性器を変更することはやはり区別して考えるのが現実的だと筆者は思う。

ジェンダー圧力

性器の性別に応じて、性器の性別に対応した社会的性別らしく振る舞うことを強制する、インフォーマルな社会的圧力。このようなジェンダー圧力を通じて、男性は男性らしく、女性は女性らしくなるのだが、性別違和感のある人々にとってはこれが大きな苦痛となる。だから、ジェンダー圧力の弱い環境を選んで身を置けると、都合が良いのだが、筆者などはその典型のようなものである。しかし筆者の場合、大学のようなジェンダー圧力が弱すぎるところに馴れてしまったがために、性別移行が遅れたのかもしれない...

ジェンダークリニック

性同一性障害の医学的サポートの窓口になる、性別違和に関する専門医が常駐している診療科やクリニックのこと。最初の窓口はどうしても精神科になるので、精神科の中に設置されることが多い。「ジェンクリ」と略されることも多い。

ジェンダー表現

ジェンダーを主張する身体的表現のこと。トランスジェンダーでもない限り、ジェンダー表現は性器に相応したジェンダー表現をすることに違和感を持たないが、性同一性障害の最大の苦痛は、「自分の性自認ではないジェンダー表現を強制される」ことにある。だから、希望の性別のジェンダー表現をひそかに勉強して身につける、ということをせざるを得ないのである。しかし、トランスしてしまえば、知識不足あるいはノビノビ性自認に合ったジェンダー表現が出来る喜びのあまりに、行き過ぎたジェンダー表現をするケースもあり、自戒が望まれるところでもある。

自助グループ

当事者が、情報を共有し、自分たちの問題を解決するために、自分たちで社会的活動を行うグループのこと。

自分バレ

パスの反対はリードだが、リードの中でも移行前の性別の自分を知っている人に偶然遭遇し、「あれ、○○さん、女装してる!」と知ってる人に自分であることを見ぬかれることを「自分バレ」と呼ぶ。私はどうやらあまり雰囲気が変らなくて、大変自分バレしやすいようである。知らない人に「あの人男じゃん!」という風にリードされるのを「男バレ」「女バレ」と呼んで区別することがある。

純女

トランスジェンダーではない生まれつき女性の人のこと。トランスジェンダーが使う言葉で「ジュンメ」と読む。生まれつき男性の場合は「純男」で「スミオ」と読むあたり、奥深い。

女装サロン

商業的に男性に女性の服装をさせるスペース。女性の服などを貸し出し、メークも専門のスタッフがいて、初心者でも女装が出来るようになっているが、女装して来店などは禁止の場合が多い。また常連向けにロッカーの貸し出しなどもする。エリザベスが商業的サロンとして有名。料金もそれほど高いわけではない。サロンの常連のほとんどはトランスヴェスタイトであり、性同一性障害の人は雰囲気にどうも馴染めない傾向が強い。

女装スナック

女装サロンと同様に、男性に女性の服装をさせるサービスを行う飲食店。多く別室で着替えやメークをし、店舗の方で飲んだりカラオケをしたりして遊ぶ。女装で訪れても構わない場合が多いのがサロンとの大きな違いでもある。

純男

トランスジェンダーではない生まれつき男性の人のこと。トランスジェンダーが使う言葉で「スミオ」と読む。生まれつき女性の場合は「純女」で「ジュンメ」と読むあたり、奥深い。

心理検査

一応鑑別診断の一環として、心理検査が行われる。とはいえ、これは厳格に性同一性障害の用件を定めて、それに当てはまるか、当てはまらないかを判定するものではなく、あくまで研究用の参考資料に近い印象がある。まあ、実際統合失調症の症状の一つとして「自分の性別を否認する」というようなケースでは、心理検査以前に判ることが多いだろう。実際筆者が受けたのは、ロールシャッハと家と人物と樹木を描かせる描画テストとMMPIだった。


性自認

自分が男性か、女性か、どっちに属すると本人が思っているのか、ということ。「性同一性障害」という言葉に含まれる「性同一性」とは同義語。一般に性器の性別と性自認とは一致するのだが、性同一性障害ではこれが一致せずに、性器の上では男性(女性)でありながら自分を女性(男性)であると考え、女性(男性)として振る舞いたい(ジェンダー表現をしたい)、という強い願望を持つのである。だから、性同一性(=性自認)障害とは、性自認がマイノリティである状態である、という風に言うこともできる。

性的指向性

性的関心が男性と女性のどちらにあるか、あるいは両方(バイセクシャル)か、それともない(アセクシャル)か、ということ。これと性同一性障害で問題になる性自認(自分がどっちの性別に属するか)とはまったく無関係な概念である。

性転換

当事者はあまりこの語を使わない傾向にある。その理由は次の通りで、「トランス」「トランジション」「性別移行」などという言葉や、より具体的に「SRS」などの言葉を使う場合が多い。
  1. マスコミにスレた言葉で、興味本位のニュアンスがある。
  2. 一部の魚などは本当に「性転換」するが、いくら SRS を受けたところで、性染色体が変るわけでも、反対の性別の生殖能力が得られるわけでもない。
  3. 性器(セックス)の手術と、社会的性別(ジェンダー)の変更とをごっちゃにした概念である。すべての当事者が性器手術を求めるわけではなく、社会的性別の変更が重要なケースの方が多いため。

性別違和

性別にまつわる違和感を概略的に示す言葉。同性愛者の場合は性別違和感は本質的問題ではないが、トランスジェンダーの場合にはこれが強すぎるために性別移行をするのである。しかし、「男だったら自由に生きれるのに!」と思春期の女子が思うのも、やはり性別違和であり、性別違和感があるからといって、かならずしもセクシャル・マイノリティであるわけではない。置かれている環境のジェンダー圧力との相互作用によって、性別違和は現象として誰にでもあるものだと言っても良いのではないのだろうか。それこそ「男は男らしく、女は女らしく」という言葉に反発感を憶えるのも、性別違和感に違いないだろう。

性別二元論

世の中には「男」と「女」以外の性はない、として中間的な性別を排除してどちらかに含めようとする考え方。世の中一般の公式イデオロギーはこれであるし、トランスジェンダーでもこの考え方が濃厚な人もいる。トランスジェンダーで性別二元論的であるとは、要するに「SRSを受けて、性同一性障害が治った・完全に男性/女性に性別を変更した」と考えることである。勿論多様なジェンダーのあり方を認めていこうとするジェンダー論の視点からはさまざまな問題があることは言うまでもない。

性別欄

さまざまな身分証明書や、公的書類には「性別欄」がある。特例法による性別の変更を行わない限り、公的書類の性別欄が見かけと食い違った状態であり、本人かどうかを疑われたり、トランスがバレる事態になったりする。だから、不必要な性別欄をさまざまな書類からなくす運動が今さまざまな自治体ベースで取り組まれている。ちなみに性別欄がなくて重宝する身分証明書として運転免許証がある。

セカンドオピニオン

2人目の専門家の鑑定・意見。医療では一般的な用語だが、ガイドラインに沿った医学的サポートを受けたいトランスジェンダーにとっては、重要な問題であるが、多く最初のジェンダークリニックで別な専門医を紹介して貰えるようである。「セカンド」と略されることも多い。

セクシャル・マイノリティ

性的少数派。同性愛トランスジェンダーなど、性的に世の中一般で「フツー」とはされない人々の総称。「セマ」と略されることも多い。

設定年齢

トランスヴェスタイト用語。トランスヴェスタイトの女装は、「イメージの遊び」的な要素が強く、本来の性別を変更するのは勿論、年齢さえも自由に設定して遊んでしまう。だから、いい年のオヤジがセーラー服を着ても良いし、幼児服やビキニの水着を着ても良いのである。このような遊び的要素は、性同一性障害系のトランスジェンダーの女装には希薄である。

セーラー服

トランスヴェスタイト向けの人気商品。女装サロンではいい年コイたオヤジがセーラー服を着ていたりするわけである。おそらく性の目覚めの年頃に刷り込まれた欲望が、セーラー服を人気商品にしているのではなかろうか。男性の女装の場合には、メークが必須だが、セーラー服こそメークが一番似合わない服装でもあるにも関わらず... 筆者はこういう外出不可能な妄想ベースの服装はしたことがない。

脱毛

MtFトランスに多くの場合必要なのが、ヒゲなどの脱毛である。しかし女性用のエステサロンで行う脱毛は、MtF の場合には弱すぎる。そのため、強いレーザー脱毛機のある美容外科でこれを行うのが良い、と薦められる。ちなみに脱毛自体はガイドラインでは触れられておらず、自己責任でどんな段階でも可能である。

TS原理主義

TSTGTVなどの性別違和に関するセクシャル・マイノリティの中で、SRSを要求し完全な性別移行を実現するTSこそが「一番偉いんだ」とする考え方。当然TS原理主義者はTGやTVを「不徹底な奴等」として差別することになる。まあ、そもそも「偉い/偉くない」なぞナンセンスの極みである。強固に性別二元論を主張し、SRSを通じて「本来の性別に戻った」と考える、という特徴がある。

T's

広義のトランスジェンダーを、細かく区分せずに包括的に捉える(やや婉曲的な)語法。異性の身なりをしていても、本人が自分を「T〜」で始まるどのカテゴリー(トランスセクシャル・トランスジェンダー・トランスヴェスタイト)として捉えているのか、ハッキリ言って他人からは良く分らない部分がある(本人もよく判らないケースだって...)。また、他人からカテゴライズされることへの拒否感がある場合もあるので、一番これが当たり障りのない語法のようである。

トイレ

パートタイマートランスヴェスタイトの外出の時、どっちのトイレを使うのか、が深刻な問題になる場合もある。これはパス度(というか自信度)にもよるのだが、どうみてもパスしないのならば、最近では身障者トイレを使う、というのが救済策になっているようである。筆者は男モードであまりに男性度に自信のないときに、身障者トイレを使う場合がある...だって、男モードで「男性のツモリ」の時に、入ってきた男性に「ギョ!」っとされるのはイヤでしょ。

当事者

何かの問題を抱える当の人のこと。特にトランスジェンダー関連では、まさにトランスジェンダーのこと。「患者」などの言葉が使われずに、「当事者」が良く使われる背景は次のような事情がある。
  1. 性同一性障害が「病気」であるとは認めず、同性愛などと同じ性的多様性の一つである、とする考え方がある。
  2. 医療を求める人以外のトランスジェンダーを積極的に含めるため。
  3. 現実にトランスジェンダーの見かけや雰囲気は「病人」ではなく、SRSの手術費を稼ぐために、仕事に一途に取り組む人が多いためでもあり、医療関係者でさえも「患者」というのがややはばかられる雰囲気がある。

同性愛

トランスジェンダーと同性愛とはまったく無関係な概念である。トランスジェンダーの場合、性的指向性(男性と女性とどっちが性的対象になるか)はバラバラである。また性別移行前の性別・移行後の性別のどちらを基準にして「異性愛」「同性愛」と呼ぶのかを考えることはナンセンスである。また、トランスジェンダーの場合には性的な問題にまったく関心がない、「アセクシャル」という類型や、どちらも性的対象になる「バイセクシャル」のケースもある。それゆえ、まったく性的指向性と性自認とは無関係なのである。

特例法

2003年7月10日に国会で成立した「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の略称。「性同一性障害という問題は法制度が取り組むべき人権問題である」という意識改革が、特例法の制定で得られた最大の成果だと筆者は思う。具体的な戸籍の性別の変更の条件は、「とにかく法律として成立させる」ことを優先したために、当事者団体からの批判が強い。たとえば、現状では次のようになっている。

20才以上であること
日本の法制度としては、未成年の権利はかなり制限されているので、法の整合性の面から仕方がないといえば仕方がないし、ガイドラインでは特例法の条件であるSRSの実施が20才以上となっているため難しいのだが、子供のうちに性別を変更できると都合がよいのは事実である。
現に婚姻していないこと
これは戸籍上「同性婚」になることを防ぐという意味がある。同性婚の問題がクリアされれば、「性別移行したが、婚姻関係はそのままで、パートナーの支持もある」というケース(性別逆転夫婦以外では、稀だろうね....)が救済されることにもなる。
現に子がいないこと
逆にかつて子がいたとしても、死んでいればOKである。これは「フツーに結婚すれば性自認の揺れが収まるのでは?」と考えて結婚し、子供を作ってしまった人にとっては、大きな障害になる。制定過程で当事者の反対がもっとも多かったし、改正が望まれる最大の項目である。
生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠くこと
去勢手術が条件となるこれに関する反対はあまり聞かない...しかし、トランスジェンダーの一部グループは、これにも反対しているようである。
その他身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する概観を備えていること
これは「FtMに関して現実的ではない」という批判がある。なぜなら男性器を作り上げる FtM のSRSは大変難しい手術であり、失敗のリスクもかなり高いのが現状で、身体的・経済的ダメージを考えるとSRSに踏み切れない人も多い。


これも全文(PDF版)を参照のこと。

ドラッグクィーン

男性同性愛者が、女性性を諷刺するためにオーバーな女装をすること。男性同性愛者の娯楽であり、性自認に揺るぎはないために、トランスジェンダーとは無関係。

トラニィ・チェイサー

トランスジェンダーが好きな男性のこと。ニューハーフシーメールがいる風俗店で遊ぶのが普通。

トランジション

「性別移行」のこと、およびそのプロセス自体を指して言う。このトランジションの中には「カミングアウト」「希望の性別の服装をし、外出する」「戸籍の変更」「ホルモン治療」「脱毛・脱胸」「SRS」などが含まれる。

トランス

1. トランスジェンダーの略。
2. 性別移行。広く社会的性別(ジェンダー)を変更すること。これにはトランスヴェスタイトのような一時的な社会的性別の変更も含まれる。

トランスジェンダー

よく「TG」と略する。
1. 広義:広く生まれた時の性別から、社会的性別(ジェンダー)を変更している人のこと。変更は恒常的(フルタイム)な場合もあれば、一時的(パートタイム・たとえば仕事の時は男性だが、休日は女性など)の場合もある。当然SRSを受けている/受けていない/希望する/希望しないは無関係で使う。
2. 狭義:特にSRSを受けた/希望する人(トランスセクシャル・TS)以外のトランスジェンダー(トランスヴェスタイトを含まずに)を指していう場合に使われる。だから、「TS/TG系」という言い方をする場合がある。

トランスセクシュアル

TSと略する。特にSRSを受けた/希望するトランスジェンダーのこと。

トランスヴェスタイト

異性装症、クロスドレッサーとも。よくTVと略される。異性の服装をすることで、心理的満足や性的満足を得る人々で、性別違和を強く抱えてはいない人々。多く男性で、そのような男性向けに「女装サロン」や「女装スナック」が営業している。TGの多くは、このような女装サロンなどに足を向けた経験があるが、しかしTGの指向性はTVとはまったく異なる。当事者は「男性を辞めたい」のだが、TVは「男性でも女性でもありたい」のである。だから、一般にTVの人は「生まれ変わったら男性に生まれたい」と考えるし、医学的サポートも要求しない。またTVの異性装は一般に不徹底でパスが難しいケースも多いし、またパスを強く要求しない場合も多い。このような「類型の違い」から多くのTG/TSは、「女装サロンに通ったことがある」だけでそれほどは長続きしない傾向がある。だから、「女装が昂じて性別を変更する」という一般的な意見は、偏見である。そもそも「類型が違う」のである。

トンデモGID

本人は性同一性障害だと主張するにも関わらず、どう見てもただのトランスヴェスタイトに過ぎない人。やたらと理屈っぽいなど、かなり迷惑な属性を備えていると、このように陰で呼ばれる。

名前の変更

特例法の制定後、それまでは日数もかかり、なかなかすんなりとは認めて貰えなかった「性同一性障害を理由とする名の変更」が、すんなりと認めて貰えるようになったという話をよく耳にする。家庭裁判所の判事によって、かなり態度が違ったということも耳にしたりするが....

ニューハーフ

風俗産業用語。元男性であることを公言して、男性相手に女性として営業する風俗産業従事者。ニューハーフの多くが性同一性障害であると考えられるが、実態はほとんど不明。かつては思春期に自分の性自認が女性であることに気づいた少年が、多く「ニューハーフしか職業が出来ない」と思ってニューハーフになっているであろと考えられる。SRSを受けている人(海外かヤミの医療)も、受けていない人もいるらしい。筆者はアセクシャルなので遊んだことはなかったりする...

ノーホル

ホルモン医療を受けていないこと。ホルモン医療なしにパスするのは至難の業だが、ホルモン異常などのケースではこれが可能なことがある。

ノンカム

カミングアウトしないこと。トランスジェンダーの場合、パス度に自信があれば、任意の自分を知らない人に対して、「トランスであること」を完全に伏せてお付き合いすることができる。これが「ノンカム」だが、ゲイや被差別部落出身・在日外国人などの一般的なカミングアウトの通例とは異なり、「ノンカム」するのが偉い/ノンカムでなければ真のトランスとは言えない、という極端な意見(TS原理主義)があるあたり、「ノンカム」に特別な積極的意味がある。

ノンパス

希望の性別で社会的に「通らない」こと。これはパスしたいのだけども、パスできないという不本意な状態のケースと、パスしないことに積極的に性別二元論を解体するなどの意味づけを行い、あえてパスを求めないクィア派的な立場とがある。

パス

希望の性別で社会的に「通る」こと。フルタイムのトランスジェンダーにとっては、実質上サヴァイヴァル能力でもあると筆者は思う。特に声が希望の性別であることを「声パス」と呼ぶこともある。また、パスを重要に考えない「クィア派」というタイプのTGも存在する。パスの反対(つまり元の性別を見抜かれること)を「リード(読まれる)」あるいは「ノンパス」と呼ぶ。

パートタイム

性別移行をするが、それが日常生活のすべてではなく、両方のジェンダーで生活している状態、およびそういう人(パートタイマー)。「仕事を優先する」ことを理由として、パートタイマーであってもSRSを受けているケースもあるのが奥深い。

半陰陽

さまざまな原因によって、肉体的性別が男性・女性の中間的な形態を取っている状態のこと。染色体は男性(女性)なのに、性器の見かけが女性(男性)だったりする新生児が生まれると、医師が勝手に手術をしてしまうことがあるようで、これを告発する当事者団体もある。性同一性障害では、「半陰陽ではないこと」が診断基準ではあるが、半陰陽のケースでもガイドラインに準じて性別移行を出来るように第ニ版からはなっている。

フライング

陸上競技などの「フライング」と同様に、「まだ許可がない」状態で先走って何かをすること。トランスの場合にはホルモン療法ガイドライン第2段階に進む診断書がないのにヤミ or 並行輸入でしてしまうこと。

フルタイム

性別移行をし、希望の性別の方だけで暮らすこと、希望の性別の方だけで暮している人(フルタイマー)のこと。SRSを受けているかどうかはまったく無関係である。

フルパス

ノンカムのままで他人と長時間接触し、それでもトランスジェンダーと見破られないこと。究極のパスである。これなら埋没可能。

プロセス派

性別移行を希望の性別を得るまでの「プロセス(過程)」と捉える人々。だから性別移行のプロセス自体と「中間的な性別である状態」を積極的な価値のあるものとしては捉えない。反対語の「ノンプロセス派」はそのような中間的状態にも積極的な価値を見出そうとする。

ボイトレ

「ボイス・トレーニング」の略。要するに MtF の低い声を訓練で高い女性らしい声に変えること。定石はテープレコーダーに声を吹きこんで、高くなるように確認しながら声を出す練習をする、というもの。これも効果に個人差がかなり大きい。FtM は男性ホルモンの効果で声帯が伸びて、自然と低い声になるので、ボイトレ話は聞かない。あと、ニューハーフはボイトレはせずに、「見かけは派手目の女性、声は男」というのがウリで声パスを業界が要求しないので、普通はボイトレをしないようである。

ホルモン異常

何らかの原因によって、性ホルモンの分泌が少なく、第2次性徴の発現がわずかであること。これでGIDならば、一足飛びに希望の性別でのフルタイム生活が可能になってしまう。ただし、そもそも容姿が中性的なので、今まで強くイジメにあってきたことが多いし、本来の生物学的性別に対する嫌悪感が強いことが多い。なので一種のエリート意識を持ちがちであり、TS原理主義者が多いのではなかろうか:理想は完全埋没であり、いわゆる「古典的症状」を示すケース。また、厳密にはホルモン異常ではないが、ホルモン受容の側になにか問題があって、性ホルモンは充分出ているのに、第2次性徴がないorごくわずか、というケースもある。このようなケースは厳格には「性同一性障害」ではないのだが、ガイドラインの上では「性同一性障害」に準じて性別移行のための医療を受けることができるようになっている。

ホルモン医療

ガイドラインの第二段階で性同一性障害の治療として行われる、希望の性別の性ホルモンを投与して、見かけを希望の性別に近くする医療。効き目の個人差がかなり激しいようでもある。また、ガイドラインに沿わずにホルモン投与をするクリニック、本人が海外から性ホルモン剤を購入して服用するケースもよく耳にする。→フライング
どうやら見聞する範囲では、FtM のケースでは、男性ホルモンがすごく効くようである。逆に MtF では劇的な効果のない人も多い。これは要するにイブ原理によるものであるようだ。つまり、男性化は男性ホルモンがプロモーターとなって「変化」を引き起こすのだが、女性化は「男性化したものを元に戻す」のだから、より難しいようである...(逆に性器の手術は FtM は大変難しいが、MtF は易しい手術である。妙にバランスが取れているのが不思議である)

埋没

1.性別移行のプロセスの中で、ごく親しい知人・家族のみにカミングアウトをするだけで、誰も自分を知らない新しい土地で、新しい生活を一から築いていく性別移行の手法。実際に「埋没」して性別移行をした人もかなりの数に上ると推測されるが、実態はまったく不明である。
2.自助グループなどの活動をしていたトランスジェンダーの活動家が、活動を止めて新しい性別での生活に専念すること。

ミックス

主としてトランスジェンダー関連のグループで、特に参加資格をトランスジェンダーに限らないグループのこと。地方だとどうしてもトランスジェンダーのグループは人数が少なくなりがちであるために、ミックスのところが多い。

リアルライフテスト

治療プロセスの一つとして、「希望の性別」で実際に生活してみること。勿論リアルライフテストで「うまく行かない...」で、トランスを断念するケースもないわけでもなかろう。また、ホルモン医療なしでリアルライフテストに踏み切れない当事者も多数であるため、ガイドラインの上では第一段階では任意(第一段階でも「その検討」は必須・第二段階では明文ではないが実質上必須)とされている。

リード

元の性別を見抜かれること。パスの反対語。自分を知っている人に自分であることを見抜かれるのは「自分バレ」と呼んで区別することが多い。









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