■エイリアンの卵

冬も終わりかけに見る畑の白菜は、どう見ても直線上にきれいに並べられたエイリアンの卵にしか見えないのは今でも変わらないです。

わたしの指すエイリアンとは1986年アメリカ制作『エイリアン2』の映画のことで、主人公であるリプリー(シガニー・ウイーバー)が一人エイリアンの産卵場に足を踏み込み、めきょめきょと音を出し、ねとねとな硫酸系な体液とともに生まれるエイリアンの幼生の場面を言っているだけで、電波により白菜はエイリアンの卵なんだと言ってる訳ではないです。
白菜は白菜。
ただ白菜の状況によって、まるでいつか見たビデオのエイリアンの卵にそっくりだと思ってるだけです。

冬も終わりの畑にある白菜を見たことがない人のために、ちょっと説明させていただきます。
白菜農家なら、収穫日を迎えれば、一気にかりとってしまうでしょうが、わたしが注目したいのは、自家栽培用の小さな畑に、一列だけ白菜を栽培している状況です。
白菜は普通スーパーの2分の1カットや4分の1カットでない限り、一日で使いきってしまう野菜ではないと思います。
なにせ葉っぱ系ですから、まるまる1個を購入の際には、残った白菜を冷蔵庫に放置したとしても、周りの葉っぱだったりもしくは全体的にふにゃふにゃになってしまいます。
自家栽培と言っても、収穫量は10以上は超えると思います。
一気に収穫をして一家6人が毎日鍋をしても、通常20日以上はかかるでしょう。
10日を過ぎた鍋待ちの白菜達は葉っぱがへにょへにょになってしまうでしょうし、その前に一家6人が冬といえど10日以上も鍋が続けば反乱さえ起こることも覚悟したいものです。
鍋以外にももちろん白菜料理は存在しますが、一家の鈍感パパでさえ10日以上も白菜料理の出る食卓が続けば不信感を抱いてしまうのも避けられないと思います。
ということで、わたしの想像ですが、自家栽培の白菜はたとえ収穫を迎えようとも、一気に刈り取ることなどせず、食べる分だけをちまちま収穫していくんだろうなということです。
収穫が遅れれば、まわりの葉も枯れていきます。
しかし食べるメインの部分は新鮮さを保てるわけです。
白菜はまわりから徐々に枯れてしまうというのも、白菜にとっては成長の内にはいると思います。
自家栽培のちょっとした収穫でも、頻度が多くて3日に一回。少なくて2週間に一回くらいでしょう。
畑の白菜でも食され待ちの白菜が存在します。
一番に収穫されるものもあれば、最後の最後に収穫されるものもあると思います。
わたしの注目するべき点は最終段階で収穫されるだろう、もしかしたら畑の肥やしになってしまうかもしれないだろう運命の白菜達です。
そんな白菜はかなり寂しいものがあります。
周りの葉は枯れて茶色に変色し、普通は徐々に開きながら枯れていくものの、朝や夜の寒さにより、葉と葉の間に霜が発生して、徐々に開くことなく、白菜本体を守るように、ぺったりとくっついて、茶色く腐って枯れているような状況です。


資料『エイリアンの卵白菜』

こんな白菜みながら毎年冬も終わりかけになると、エイリアンの卵が群生していると思うのです。

こんな風に思うようになったのはエイリアンを見てからで、幼い頃から腐れかけの白菜を見るたびにかわいそうだと思いつつ、指差して『エイリアンの卵!卵!』と言う様になりました。
しかし親、親戚、友達誰一人として、エイリアンの卵だと認める人はいませんでした。
どうしてだろう。
説明してもあまり伝わらないのも痛いです。
もう白菜をエイリアンの卵だと言うようになって10年以上経ってしまいますが、やはり今でも同志が現れません。
最近は思っても口に出すことはなくなってしまったものの、電車に乗って自家栽培の白菜を見るたびに『エイリアンの卵だなぁ』と人知れづ考えるのみです。
いつかめきょきょと割れはじめて硫酸系の体液を出しつつ、エイリアンの幼生でも生まれれば、信じてくれるのだろうと思います。
白菜は白菜ですよ。たとえ腐ろうが白菜は白菜でエイリアンの卵でもありませんけどね。





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