LOVE〜愛しい人〜

rushifa

ありきたりなネタ・・・(爆死)

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目標、アヴェ奪還。長き間シャーカーンにこの国を奪われ、あの方は本来いる場所を遠ざけられてしまった。何もかも、私の不手際。でもいつか必ず、取り戻して見せる。

――あの方の為に。

バルトは碧玉要塞にてマルーが「E・アンドヴァリ」を奇跡的に動かし、シャーカーンの部下を跳ね除け一時的に彼を追い詰めてみせた。

だがその時、不覚にも要塞上部が開いており逃げられもう1歩というところで奴を取り逃がしてしまう。その後、シグルドの報告により、シャーカーンはイグニスゲートにいる事が判明。

今度、会うという事は決着をつける時。バルトに緊張が走る。それを和らげるよう、フェイとシタンは彼を補佐する。その結果、シャーカーンを見事、打倒すに至った。途中グラーフが現れたりしたせいか、予想外に苦戦したが辛くも納めた勝利。

この瞬間、彼を取巻く長き戦いは、終止符を打ったのだ。アヴェを取り戻した数時間。バルトは早速この国の王らしく声明文を読み上げた。そして誰もが思っても見なかった、声明を告白。


「第19代国王、バルトロメイ・ファティマの命により……本日を持って王制を廃止し、アヴェ全土を共和国家とする!」

彼から発せられた、信じられない一言。先代の王が残した遺言を守り、彼自身で決めた事だからそれに従うだけ。私に出来る事、それは、彼についていく。永遠にそれの繰り返し。それが私の定め。その夜ファティマ城のテラスにて夜風に吹かれていると、主こと若が尋ねてきた。そして彼が私に、告げた言葉。私と若が異母兄弟であり、血が繋がっているという事。信じられなかった。何故、彼がそんな事をいうのか。まさか…父は私の存在を知っていたのだろうか?

「だからよう、その…なんだ。これからも宜しく、頼むわぁ!じゃ、おやすみ!」
「あ、あの若!これから、マルー様とはどうなされるおつもりで?」

突拍子もない言葉が私の口から漏れていた。何故、こんなことを発するのか。

「え…あ、ああ。マルーか。あいつ、俺の傍から離れねんだ。仕方ないから、この侭ユグドラシルに乗せるつもりだ。」
「いえ…そういう事ではなくて!私が言っているのは、マルー様とは何時ご成婚なされるかという事です!」
「あ、あぁ!?あいつと結婚!?馬鹿な事、言うなよ!俺はあんな男女みたいな奴とは、結婚しねぇよ!第一、俺…」
「なんですか?マルー様よりも、大事なお方が?」
「五月蝿ぇな…シグには関係ないだろ!兎に角、マルーとは結婚したくねぇよ!じゃあ、又明日!」
「若…」

若はマルー様を、女として見ていない。正直、安心した。安心?何故、そんな感情を?私は心底、若の幸せを願っているのに。私は彼を弟として主として、みていないのだろうか。だから、こんな気持ちに?違う…この気持ちはそんな物ではない。これは…この感じは。私は若に恋を?思えば…最近…彼女に嫉妬を感じたのも事実。やはり、私は…何てことだ。報われない想いを抱くなど、私は…そんな愚かな人間ではない筈なのに。止められない。そうだ。こんな時は、ヒュウガに相談してみよう。あいつなら、何かアドバイスしてくれるかもしれない。彼に相談するべく、医務室に向う。すると女医の姿はなく、幸いな事にシタンだけがその場に居合わせていた。早速、想いの旨をシタンに吐きアドバイスを仰ぐ。それが、そもそも間違いだった。彼から帰ってきた言葉は、シグルドの想像を遥かに越えてのだ。それもそのはず。何と彼は同性の相手を愛し、既に想いを通じ合わせていたのだから。相手は多分、常に傍にいてシタンから離れない少年の事を言っているのだろう。その子が、シタンの最愛の人。どうりで再会した当初、雰囲気が変わっているとおもってみれば。こういう事か。この余りの展開に、思わず目眩した。

「おやおや、そんなに意外でしたか?ですが、貴方は若君が好きなんでしょう?どうなんです?」
「お、俺はそんなんじゃ!」
「では何故、私に相談を持ちかけてきたんです?可笑しいでしょう。シグルド…認めてしまいなさい。その方が、楽ですよ。運良ければ両想いに、なるかもしれないじゃないですか。私とフェイみたいにね。」
「ば、馬鹿な事いうな!若は…若は!!」
「強情ですねぇ、貴方は。まあ今回は、私の出る幕でないので、大人しくしておきます。悪い事はいいません。告白してらっしゃい。大丈夫です。貴方と若君なら。」
シタンの一言に勇気付けられたのか、シグルドは渋々首を縦に振った。

―若は王子…私はその僕−
だがいつしかそれは、建前となり私の心は悲鳴を上げていた。
―彼と兄弟…それでも、消えないこの想い―
私は…彼を…愛している。

(そうだ、私は若を必要としている。…この侭、マルー様に渡すくらいなら…)


シグルドは医務室を後にし、ブリッジに向けて歩いた。目的地に向う為、エレベータに乗ろうとしたその時。バルトの声がした。急いで降り、彼の声がしたその方向に視点を合わす。ギアドックとマルーの部屋の向い側にある、クルー達の休憩場。そこに彼はいた。
「若?ここで、何をなさっているんです?まさか…また、何か悪い事たくらんでいるんじゃないでしょうね?」
どうしても彼を、子供扱いしてしまう自分に苦笑いしながら語りかける。
「違うって!明日の物資調達について、話し合ってたんだよ!」
「そうですか。それはともかく、若…お話ししたい事があるんですが。良いですか?」
「説教じゃないんなら、いいぜ♪」
彼の返事に苦笑いしながらも、真顔でクルー達に席をはずす様に促す。
「申し訳ないのですが、暫くの間、皆…席を外してほしい。」
長年、築き上げてきた信頼。彼の要望に対しクルー達は、1つも嫌な顔をする事無く部屋を後にした。


「シグ…どうかしたのか?やっぱ、説教か?」
「いえ、そういう訳では。只、人に聞かれると…困るので。…すいません。」
「人に言えない事なのか?」


己の意味深な発言で彼が、不審がって居る。シグルドは複雑な心持ちで、次の言葉を紡ぐ。


「ええ、まあ。若…マルー様とは結婚しないんですよね?」
「と、当然だろ!俺…あいつの事、確かに大事だけど…そういう感情、どうしても持てねんだ。」
「それを聞いて安心しました。それでは、私にも未だチャンスがあるって事ですよね。」
「何・・・言ってんだ、シグ?」
「今まで自分の気持ちに、気付いていなかった。ですが、もう…自分の気持ちを誤魔化さない。」
「…自分の…気持ち?」
「はい。私は…若の事をお慕えしております…」
当々、言った。あとは、彼の答をまつばかり。
「!?…嘘…だろ?シグ…俺は男なんだぞ!?それにお前は俺の!」


困惑気味のバルト。シグルドは複雑な心境で、その様子を見ていた。


「そう…兄でもあり、部下でもある。それでも、私は…貴方のことが…」
「シグ…」
「若…他に好きな人がいるんですか?昨晩の会話で、その様に聞こえたんですが。」
「ああ。いるぜ…目の前に、な。」
「!?」
目の前?という事は…自分?
「俺も自分の気持ちに、目を瞑ってた…ずっと好きだったのにな。シグ…ちゃんというぜ。1回しか言わねえからな。俺も、お前の事が…好きだ。」
「若…」


シグルドとバルト。2人は異母兄弟でありながら、お互い求め合い愛してしまった。だが、そんな事は関係ない。2つの魂が惹かれあい、求め合う。ただ、それだけの事。シグルドはここに存在する現実が、夢ではないと確認するかの如くキスを交す。彼の唇は柔らかくて、甘い。我々は現ではなく、今を生きている。それにしても、若と…同じ想いを抱いていたなんて。両想い。それが、こんなに嬉しい物とは知らなかった。初めての、感情。どうして、今まで黙っていたんだろう。こんなに苦しむくらいなら、もっと早く言っておけば良かった。シグルドはバルトを抱く腕に力を込め、更にキスを交した。この2人の様子を伺おうと部屋の外で、聞き耳を立てているあるカップルの姿があった。


「両想いになれたんだね。良かったぁ。」
髪が長い少年は、安堵したらしく明るい表情を浮かべている。
「ええ。そうですね。」
(そりゃ、そうでしょう。何せ、若君も已然、同じ質問をしてきたんですから。この度、面白い物が見れましたねぇ。)
「2人はもう大丈夫ですから、私達は部屋に戻りましょう。」
「うん。」


互いの手を握ると、ガンルームと機関室の中間地点にある2人の自室へと戻って行った。主と僕から、恋人として変化をとげたバルトとシグルドはその晩、クルー達の休憩場を貸しきり、二人っきりの時間を過ごす。只々、甘い情事を刻む時計。シグルドは何度もバルトの唇を奪い、抱きしめた。バルトも拒む事無く、彼を受け入れた。漸く手に入れた愛しい人。マルーになど、渡さない。彼女に我々の関係がばれて引き裂かれそうになった時は、私が彼女を手にかけよう。

――バルトは永遠に、私だけのモノなのだから。