Last Song
                      

ある日バルトが、突拍子もない事を言い始めた。明日カラオケをしようと、皆に切り出してきたのだ。この所フェイ達は、戦いに明け暮れてい為、疲れ果ていた。その事を、察したのかバルトが提案した様だ。始めは皆反対していたが、何とかバルトに言いくるめられ賛成する。…しかしフェイだけは、最後まで反対し続けた。
思わず、バルトは講義する。
「何だよ?皆賛成してるじゃねえか!理由を言え!」
「だって、そうだろ?これから更に忙しくなるっていうのに、カラオケしている暇はないはずだ…」
「別にいいじゃねえか。息抜きだよ、い・き・ぬ・き・!」
「い、息抜きぃ?!……………っ。」
「よ〜し!決まりぃ!…明日の午後、ガンルームにてカラオケ大会を行う!今日は、もう寝ようぜ!」
「…………。」
皆、ガンルームを後にする。フェイは自分の部屋に戻る気になれず、ユグドラシルの甲板で風に当る事にした。
「また呱々にいたんですか、フェイ。」
「先生…」
「今は二人っきりですよ、フェイ。ですから、先生は止めてください。」
「そうだね、ごめん…シタン。」
「…フェイに名前で呼んでもらうと、安心しますよ。悪い癖ですね。今日は、どうしたんです?貴方が反対するなんて、珍しいですね。歌…嫌いなんですか?」
「え?…別に、そうじゃないんだけど…ただ…」
「ただ?」
シタンが心配そう呟くとフェイはペンダントを手に取り、悲しそうな表情で話しはじめる。
「…俺、別に歌が嫌いとかそう言うんじゃないんだ。…俺が…歌を歌った翌日には、必ず嫌な事が起こるんだ。アベルの時も、キムの時も、そしてラカンの時だって!…ずっと…そうだった。だから…」
「…だから、フェイの時もそうだって言うんですか?」
「別に、そうじゃないけど…あの時、決めたんだ。」
「あの時?」
「ああ。確か俺が3歳だった頃いや、4歳なりたての時かな。母さんに歌を進められて頑張って覚えたんだ…漸く覚えて、母さんの前で歌ったら母さん、凄く喜んでくれた…でも翌日、母さんはミァンになって…そしてあの日…死んでしまった…だから、俺は誓ったんだ…もう、歌わないって…」
そう言ったきり、フェイは俯く。
「…フェイ、それは違います!カレンさんがミァンになったのは、貴方のせいではありません!…カレンさんは生前、貴方の歌を聞いて喜んでくれたのでしょう?きっと彼女は、幸せだったと思います…全ては…運命だったんですよ…貴方のせいじゃない…」
「…例えそうだとしても、俺…歌えないよ。…怖いんだ。また歌って、嫌な事が起こりでもしたら!そう思うと、俺…」
「フェイ…貴方の言う嫌な事が起こったとしても、貴方は私が守ります。だから、フェイ安心しなさい。」
「…ほん…とう…?」
漸く顔を上げたフェイの目には、涙が溢れていた。
「ええ。本当です。だから、そんなに泣かないで下さい…」
「シタン…」
「私は貴方だけを、愛しています。例えエリィが…“母“だとしても、貴方を渡さない…フェイ、全て終わったら私と共に暮らしませんか?片時でも離れたくないんです…一生、傍にいたい…」
「俺だって、一生シタンの傍にいたいよ…でも…」
「…ユイとミドリですか?彼女達の事は心配しなくても大丈夫ですよ、フェイ。既にこの話に関しては、了解済みです。」
シタンの思い掛けない発言に、フェイの涙はいつの間にか消えていた。それ所か、気の抜けた表情を浮かばせている。
「て…手際よすぎるね…俺が反対しないって、決め付けてたりして…」
「何か言いましたか、フェイ?貴方が私から離れたくても、離しませんよ?フェイ、返事は?」
「も、もちろん…OKに決まってるだろ!」
フェイは赤面しながら答える。シタンにとって、その仕草は愛しくて堪らない。愛しさの余り、力一杯抱き締めフェイの唇に自分の唇を重ねる。生暖かい感触がお互い、気持ち良かった。
「シタン…ずっと俺だけを見て…誰も愛さないで…」
「…フェイ、貴方意外の人を愛す訳無いでしょう?…貴方こそ、私だけを見ていて下さいね?…場所を変えましょう。今日は、貴方の部屋にしましょうか。」
「俺の部屋の隣、バルトだぜ?不味くない?…やっぱり、シタンの部屋の方が…」
「フェイ、スリルがあった方が楽しいでしょう?そうと決まったら、貴方の部屋へ直行しましょう。いいですね?」
「……明日、カラオケ大会なのにぃ〜!!」
「はい、はい。急ぎましょうね、フェイ?」
フェイの叫びも虚しく、部屋へ直行する羽目になる。そしてバルトの目を気にしながら、朝を迎えた。翌日となり、カラオケ大会の機材がガンルーム持ち運ばれる。セボイム時代に実際使われていた物という意外には、何も分らない代物だ。皆は怪しんでいたが、バルトだけは上機嫌だった。しかしここで、一つ難点が発生する。バルト達はその時代の、曲を知らなかったのだ。只一人、フェイを除いては。フェイ一人知っていてもつまらないという事で、仕方なく練習する事にする。運がいいことにそのカラオケの機材には、曲のサンプルがプログラムされていた。全員各自、気に入った曲を選出し練習してから午後カラオケ大会を、しようと決める。
―午後―
日が暮れ始めた頃、カラオケ大会はスタートした。昼間見た、ガンルームとは違い大人のムードが漂っている。天井にはミラーボール、目の前には大きなテレビが用意された。いかにも、セボイム時代のカラオケって感じだ。すっかり気分よくなったのか、バルトが行き成り選曲し豪快な歌声を、まざまざと皆に披露した。軽いポップ形の曲だったが、何故か曲の通り軽くなくバルトらしい?声を発し歌う。意外とこれが、好評で1時間程バルトにマイクを、取られっぱなしの結果となった。1時間後、流石に疲れたのか次の人が歌う事となる。しかしバルトの歌を聞き疲れた仲間達は、既にそんな気力は残っていない。そこでその時代の曲を、一番良く把握していたフェイが歌えという事になり嫌々歌わされる羽目となる。
「いいだろ?なぁ、歌えよぉ!皆それじゃなくても、歌しらねぇみたいだし!」
「だからって、何で、そうなるんだ!?」
「フェイ、良いじゃありませんか…滅多とない機会ですし今日くらい、歌ってみてはどうです?」
「…せ、先生が…そう言うんなら歌うよ…でも一曲だけ、だからな!!」
「よっしゃぁぁ!!」
フェイが歌う事が余程、嬉しいらしくバルトは喜びの声をあげた。急いでマイクを渡し、仲間一同はフェイが歌うのを待つ。所が曲が始まったと同時に、流れたテレビの画像に皆は首付けとなってしまった。何故ならそのテレビの画像には、フェイそっくりの女性が写っていたからである。漆黒の美しい髪…ほぼ同じ髪の長さ、そして背丈も容姿どれをとってもフェイに良く似ていた。まるでフェイを女性にしたかの様な、そんな錯覚に陥るくらいだ。次に皆が驚いたのは、女性にしか出せないソプラノを歌い上げた事である。普通の男性なら第2次成長のさい声が変わるのが当然なのだが、フェイの歌声は別物であった。フェイの歌声は、透き通っており、誰をも魅了する美しい声をしていた。これは只の偶然だっと、皆は思う事にする。しかし皆の驚きの連続は、其れ位では終わらない。画面に移っている女性の歌う表情、しぐさまでがフェイとうりふたつだった。結局、フェイが女なのだろうか?それとも、只の偶然?という風に仲間内で疑問が急浮上する。…当の本人は、皆の疑問を他所に黙々と歌っていた。

(お、おい…フェイって、男だよな?先生なら、知ってるだろ?)
(若君…行き成り何て質問するんですか?フェイは男です!)
(で、でもよう…あれじゃ…余りにも…)
(…私に聞かないで下さい…)
(……………フェイ…お前、男…だよな?)

フェイの女疑惑が晴れぬまま、カラオケ大会は終了した。大会途中、酒が振舞われた為シグルドが倒れこんでしまう。その結果、1日ほど停泊する事になった。フェイはと言うと、お酒を飲みすぎたのか眠り込んでいる。心配したシタンは自分の部屋に連れて行き、ベッドに寝かせることにした。
「さあ、フェイ。休みましょうね…っていうより、もう寝てしまった…か。それにしても、今日の歌声…フェイ、貴方は男のはず…なのに、何故あの様な歌声が…」
フェイが寝返りを打った時だった。信じられない一言が、シタンを襲う。
「う…ん…母さん…嫌だよう…そんな、イアリングとスカートォ…」
「えっ!?フェイ、今なんて…!!?」
シタンは思わず、声を荒げてしまう。一瞬フェイが目を覚ますかもしれないと、想い慌てて口を塞ぐ。しかしフェイは目を覚ますどころか、熟睡していた。
「ふう。…私とした事が……それにしても、今の寝言まさか…でも貴方は男…そんな事ありえない…」
シタン、バルト達の疑問はそれはこれから起こる、ほんの序曲に過ぎなかった

 

<言い訳>

カラオケってこんな感じで、良かったっけ?管理人は、カラオケにいくのはいいんですが、歌うのは苦手なんです。

ということで、小説もこんな感じになってしまいました。もう少し、華やいだ感じにしたかったな。
                                      

過去へ続く

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