渇望(3)
まだやおいなし(滝汗)
銀色の髪を靡かせ風に揺られる親友の兄、恋人「シグルド・ハーコート」。 「シグルドさん…死んで?」 瞬時に彼の鳩尾を連打し空中へと踊らせる。 「がはぁ…っ…フェイ君…み…んな、君が戻るのを…まってい…た…」 目を見開く彼を俺は見境もなく殴り気功を加え俗に言う瀕死へと導く。 「やめ…ろ…ヒュウガ…が…かなし…む…」 とどめを刺そうとしたとき、背後からあの人が…現れた。 「フェイ……何故…貴方、何を吹き込まれたんです…。」 表情を変えることなく睨みつけ蹴りをいれようとしたその時、彼に…腕を掴まれ …またいつものパターンか。あんたはいつもそうだ。内心、呟かれる言葉に耳を傾け 「…最近、貴方の様子がおかしいと思ったらこういう事ですか。…イドなんでしょう?貴方に声をかけステージから引きずりおろそうとしている者は。」 感情に身をまかせ愛しい人にぶつける。こんな俺…本当は嫌いだ。 「…フェイ。私達は彼…要するにイドを刺激しないよう距離を置いただけです。別に…貴方を嫌った訳ではない…」 もう、何も聞きたくないよ…。こんなの嫌だ。 『全てを否定しろ。そして、お前を壊せ。…もう一度、お前自身を壊せ。…この俺のようにな。』 ――壊す?でも…どうやって…。 『決まっている。廃人だ、廃人。俺もお前も所詮、同じ穴の貉。逃げられないのさ、血の宿命からはな。さ…お前の心を壊せ…』 「…フェイ?まさか…っ!?…彼の言う分を…聞いてはいけない…フェイ!!」 抱き締める腕にさらに力を込める反面、心なしか体が震えていた。 「ねえ…先生…3年間、随分、幸せだったよ。…先生と出会わなきゃ…ずっと、何も知らなくて世界がこんなに広い事すら分からなったんだろうな。俺ね…愛してたんだよ…先生を。」 「これからも傍にいます…2度と、貴方に淋しい想いをさせない…ですから…負けないでください…もう一人の貴方に。」 ――ごめん…楽になりたいんだ…終わらせるよ、俺を。 一筋の涙を零し、己の腕に気功をため胸を幾度も突いた。 ――どう?愛する者が傷つき死んでいく…。悲しい? 迸る血…。 ――先生…バイ…バイ…。
NEXT |