FEEL

lucifa作

初の捲×天…。ムードかけてる(涙)一部、修正。

BACK


――あの人を恋う事がこんなに…辛いものとは思わなかった。

下界に堕ち行く宛てなく彷徨う。
人にぶつかる度、謝罪を言い離れよう
とするのに…男達は僕を抱く。欲望のままに。

僕も僕だ。
抵抗すれば良いのに、何もせず受け入れている。
そこにあるのは…欲にまみれた男達と喘ぐ己。
何を求めているんだろう…。
汚れたいんだろうか。
そうすれば…答えがでるとでも思っているのだろうか。
僕がこうして生きている意味を。

そもそも、何故…僕はこんな所にいるんだろう…。
ほんの数時間前までは天界で…上官と他愛もない会話していたのに。
暗雲…とでも呼ぶべきなのだろうか。
僕の部屋に急用と題し突然、李塔天が来て…抗う暇なく抱かれ…泣き喚いた。
体を貫かれた痛みと彼が放った一言。僕の心は底無しの不安に見回れる。
そんな僕を嘲笑ったように奴はこう言った…。

『所詮は体目当ての間に合せ商品なのだよ』

勿論、信じた訳ではない。
…だけど、いつか彼は離れていく。
…第一、“愛している”とはっきり言われたわけではない。
想いを寄せているのはこの僕の方。
本当は煩くて邪魔なだけなのかもしれない。
悪い事ばかり頭を過っていく。
こんなにも僕が不安なのに捲簾は何も言ってくれない…。

下界に逃げたら…少しは心配してくれるだろうか…。
この世界には存在しない死があの場所に、いけば…。

人を愛する事が辛く苦しい事だなんて…貴方とあうまでは知らなかった…。
痛いんです…捲簾…。心が悲鳴を上げている。僕の叫びが…貴方に届きますか?
愛しいと思う事自体、罪だと…そう…思いますか?
常に冷静沈着で人の心など欲しなかった僕が貪欲なまでに
貴方だけを求めている。このままだと、被害妄想が暴れだし
己を嫌悪する事になる…。その前にここから消えよう…。
これを…「逃げ」というのなら…それでもいい…。
これ以上、ここにいると気が狂いそうだ。

――下界に堕ちて…散ってしまいたい…。

薄暗い空の下、おぼろげな意識を起す。
特に何をしようというわけでもなく、
ボロボロに解れた衣服を身に纏い歩き続ける。
目には既に光りもなく、泣いているのかすら
認識できずにいる。

惨めだ、自分を蔑み天界を捨て…こうして僕がしている事はまるで道化。
今頃、捲簾はどうしているのだろう。
天界の人々は少しでも僕を気にかけてくれているだろうか。

もう、疲れた。泣く事も、意味なく笑う事も。何が元帥だ…。
上の者はただ有能な素材がほしいだけであって、僕を欲しているわけではない。
そう僕の代わりなど幾らでもいるんだ。急にいなくなってもどうってことない。
僕がしてきた事…全てに綻びを感じる。
もう、やめよう…この辺でもう、僕を終わらせてやろう。
捲簾だって煩い副官がいなくなって清々しているに違いない。

予め持参していた短刀を片手に胸元を切り裂いていく…。
甘美な痛みが走る。このまま、致命傷になってしまえばいい。
そうすれば少しは彼の心に僕を刻む事が出来るかもしれないから…。

――無惨に散り…心に傷を負わせられたら…それで充分だ。

「…俺より先に逝こうってのか?」
「……ぐっ…」

聞きなれた声に顔を歪ませつつ、声のした方向を見遣る。
息を切らし胸を撫でている捲簾。
安堵しているのか、怒っているのか分からないけど…
僕のことはかなり心配してくれた事は間違いないらしい。
それだけで…充分、幸せを感じる…。

「馬鹿元帥殿…俺の気もしらねぇで…1人で先走ってくれちゃって。この、おとしまえ…どうつけるわけ?」
「……ひっ…。」

怖い…彼が怖いっ…。
…捲簾の力強い瞳に…たたき堕され逃げられなくなる。
もう…解放して…下さい…この苦しみから。

――お願いですから…僕を虐めないで下さいよ…。

再び短刀を掴もうとした時、腕を掴まれ彼の体に引き寄せられた。
余りのことに言葉もでない。

「怪我の手当てしてやっから、大人しくしとけって。」
「……意味もなく…優し…くしな…いで…下さいっ!!」

言い知れぬ恐怖にかられ精一杯、抵抗してみる。
どれだけ抗っても離してくれない彼の腕。
体の震えが止まらない。
それどころか、キスを繰り返し頬を撫ぜる。
とても切なそうな表情を浮かべて…。

――…期待させないでくださいよ…。

「…俺の心、奪っときながらそれはねぇんじゃねぇの?」
「何…いって…っ…ぁう…」

男達に嬲られた部分から紅い雫が流れその場に倒れる。
自分でつけた傷より痛む…。

「…ったく…何やってんだか…俺が綺麗にしてやる…」

下半身の傷が余程、気に障ったのか血を舐めながら敏感な
部分に触れてくる。

「ぁあ…こ…んな…とこ…ろ、で…っ」
「お前は俺の…。よもや忘れてねぇだろうな…」

涙を流しながら嫌だと首を振っても許されるわけもなく彼は
服を脱がせ、首元から胸の突起へと指を転がし吸い付いてくる。

「ふぁっ…あ…それって…」
「……好きなんだよ、お前が。ずっと、照れ臭くていえなかったけど、よ…。」

傷を追っているせいか体が、いつもより熱を帯び快楽の後押しをしている。
捲簾の温もりが心地良くてたまらない…人肌がこんなに良い物だったなんて…。

「んく…はぁ…っ…けん…れん…」
「もしかして…お前、ず〜っと俺の事、ただの遊び人って思ってた?」

少し拗ねたのか、秘所に指いれ力任せに解していく。
他人なら痛いだけなのに…何故…こんなにも…彼だと感じるんだろう…。

「ひゃあっ…んっ…くぅ…そんな…ことぉ…ぁ!」
「俺、好きな奴には一筋なわけ。そんくらい分かってくれねぇとな。」

何度も高みへと誘われ、息をつく間も与えられず体を抱き抱えられ貫かれる。
その間、彼はずっと僕の乱れる顔を見つめていた…。

「うぁっ…ぼ…く…だけ…を…みて…っ…ぁはあっ…!」
「そーいうお前もなっ!」

腰を淫らに振り乱す度、奥深くへと突かれ悲鳴をあげ達する。
熱い…体内の血が沸騰しているみたいだ…。
心が温かくなる…これが…愛する人と交わるという事…。
始めて知った気がする…。
彼の手が自身に伸び掴まれた瞬間、中を締め付け同時に果てた。

――何も…考えられない…。

頭が真っ白になるという事象は、こういう事なのだろうか。
涙を流したまま、見つめ微笑むと彼は優しく抱き寄せキスを繰り返してくる。

「…すいません…勝手な事…して…」
「全くだぜ!でも、ま…今回は俺もわりーわけだし?お相子っつーことにしとくわ。」

まるで小さな子供のように笑い、ブイサインなんかして…。
自然と笑みが零れる。演技するわけでもなく素直に…。

「なんか、漸くお前の笑顔みた気がするわっ、さ、帰ろうぜ!」
「…ええ。僕は貴方の事…が、大好きです…」

僕が顔を紅く染めたのが意外だったのか、捲簾は少々、戸惑いながらも
言ってくれた。“お前以上に俺の方が惚れてる”と。

下界の季節は…春まっさかり。どこまでも、桜並木が続き
さも天界のように咲き誇っている。

命はいつか尽きるものだからこそ、光り輝く。
だが、僕らの世界にはにはそれがない。
仮に死が存在するとしたら、恐らくこう願うだろう。

来世も貴方の傍にいられますように、っと。

酒瓶、片手ににやけている隣人に軽く溜息つきつつも、
心底、幸せそうに微笑む天蓬だった。

FIN