Passing each other
lucifel作
本に埋もれた一角。とても人が住みそうもない空間に、 その部屋の主は時も忘れ書物に意識を集中していた。 今日は早期に仕事を片し、久々の自由時間を満喫するつもりらしい。 だが、その望みを打ち砕く扉の音。 そうかと思うと、己を目掛け歩み寄ってくる入出者。 良くある日常の一駒。けれど…自分の興味はあくまで、 本に注がれており彼にかまう気はない。 完全に己一人の世界に入り、視線は他者に向けられる事はなく 読書に明け暮れる。その様に苛立つ男は白衣を身に纏う 成年の前に立ち、たやすく書物を奪う。一瞬にして現実世界へと 意識は引き戻され、唖然とし…。 「何、シカトしてんの?せーっかく、天界一の色男が訪ねてきてやったのによ」 誰も来てくれとは言っていないのに彼事、西方軍大将捲簾は 僕に執拗に干渉してくる。一体、何だというのか。 今現在、彼とは躰を重ねるだけの…関係…言うなれば SEXフレンドであり、決して“恋人”という特別な関係ではない。 事実、捲簾は良く女中と良く寝たり、己の前でキスして見せる。 …僕も僕で左程、気にする事もない。 それだけの間柄なのに、この男は人の部屋に押し入っては、 酌や話し相手をねだる。 人がこうして黙り込むと、決まってあの言葉が飛び出す。 「お前って本以外、興味ねぇの?」 思った通り皮肉を穿かれ溜息を数度、刻み漸く僕は顔を上げる。厭味を同時に添えて。 「えぇ、本は良いですよ?貴方にかまわずに済むし、知識は身につきますし。 良ければ捲簾も如何です?調度…今、新しく購入した地上の戦記があるんですけど…。 これ、結構おもしろいんですよ♪あぁ、やはり恋愛絡みが一番ですね。 この物語の内容は一人の女性を二ヶ国の長が愛し、彼女を手に入れたいが為に民に犠牲を強いり、 互いに血で血を洗い流し、骨肉の争いを繰り返すという物なんです。 最後は貴方の眼で確かめて下さいね。今、話すと楽しみが半減しますし…」 淡々と語り相手に割り込む隙を与えず、本を捲簾に手渡す。 己の口調に反論する意欲を無くした彼は受け取る素振りを見せはするが、 天蓬が渡した本を机に置き彼をジッと見つめてくる。…何だというのか。 人の部屋に土足で入るような真似をし、そして今…自分の好意を否定して…。 何を望んでいるのか、検討も付かない… 「ま…本は一先ずおいといて、ちゃーんと俺を見て話せよ! 馬鹿みてぇだろうが!つーか…ぜってぇ…俺、避けてるだろ…」 ぼそっと独り言を並べ何の前触れもなく腰に手を回し抱き寄せる、捲簾。 御機嫌とりのつもりだろうか。僕は眼を細め彼の問いを鼻で笑い飛ばし、 髪を掻き上げ煙草を咥える。極めて冷静であると報しめるかのように。 「…さぁ。気のせいじゃないんですか?まぁ、僕の一日の大半は、 誰かさんの始末書で終わっちゃいますからねぇ…。貴方が大人しく日々、 精進して下さるとその分、ゆとりが生じ捲簾の相手にしてあげられるんですが。 いうなれば、“自業自得”ですよ」 紫煙を天井に目掛け噴き、表情を消す。 何時までこうしているのだろう。己の言動に怯む様子もなく、 床に押し倒され“またか”と、小さく溜息をつく。 「ばーか…、下手な芝居こいてんじゃねぇって…。 俺が気付いてねぇとでも、思ってんのか…何が気にくわねぇんだ。」 捲簾の言葉に怪訝な表情を浮かべ、己の行動を見直して見る。 この数日間の事を…。何時も仕事に追われ、彼に出くわしても話す余裕がなく、 偶のオフ日は本日のように書物や骨董品を集める事が、普通となっていた。 まさか、その行動が捲簾に誤解を与えていたとは…今回は自分の否か。 仮にそうだとしても、…僕には関係ない…。 「あの…、…どいて頂けませんか?」 彼を突き放す言葉。捲簾の抱擁が酷く、不快でたまらない。 彼が抱くその腕は、僕だけに向けられる物ではなく、女中にもそそがれる。 それが堪らなく厭で…。これは嫉妬だろうか。とにかく女を抱いた手で触れないで欲しい…。 勝手だなと思いつつも、目を伏せる。捲簾が言うように、自分は彼に距離を置いているのだろうか…。 「……嫌だね。俺は好きな奴に避けられて平気な程、大人じゃねぇの。 ……何時まで“良い友人”でいりゃ良いんだよ…。好い加減、気付けよな…。」 散々、独白した後、彼の唇が、口に首筋に落とされる。 透き通った裸体に刻まれていく、紅。一瞬の痛みに目を顰め、 捲簾の刻む痕から熱が漏れる。彼の手が肌に触れるだけで、 胸元の突起が硬くなり、下肢の感覚が冴えていく。 まるで何かの魔法を、かけられたかのように…。 「…っ…何いって…何…を気付けと…いうんですか…」 地は床。冷んやりした感覚と、捲簾が織り成す熱。 訳の解らぬ言葉を並べられ、困惑の色を呈す。女好きの戯言だろうか。 「こんだけ言っても、まだ判らねぇか!? お前って本当、鈍ー…。だぁっから!…俺は天蓬…お前を…っ…………………愛してんだって…。」 彼の手が自身に触れ、激しく弄られる。片時も解放される事なく、 繰り返される愛撫。足が震え、先端から線状に漏れる白濁。 淫猥な行為は益々、濃度を増す。 己の雄が膨張し欲を解放したがり、涙を溜めた瞳で彼を見る。 「…ぁ、ぅ…う…っ…嘘…」 …彼の気持ちが…意外すぎて…翡翠の瞳で彼を見る。 まだ疑いを抱いているのか、上手く微笑む事が出来ない。 今まで考えた事もなかった…から。普段、遊んでばかりのこの男。 彼の言動に信憑性等、感じられないが捲簾の切なそうな… 何かを訴えかけようとする瞳に…酷く動揺する自分がいる。 「…お前ねー…人が恥を偲んで告ってんのに、嘘よばわりすんのかよ…」 信じるべきか、それとも…。何故こうも己は、 臆病なのだろうか。知識の量なら僕の方が上なのに…。 己の衝動を打ち消すかのように、安々と抱き上げられ彼の 身を体内に取り込む。まだ馴らされていない、後孔。 激痛が自分の衝動を掻き消し、内壁を捲簾の雄で擦られる度、 痛みは快楽へと姿を変える。 「ぁ、あ…れん…けん…れ、ん…んぁ、あっ!」 粘液と身が摩擦を起こし、内部の収縮に拍車をかけ肉を打ち付けあう。 濃く粘りのある液体が捲簾の腹部にこびりつき二人同時に精を吐く。身を震わせながら。 「くぅ…天蓬…悪ィ…酷くしちまった…」 荒々しい二人の吐息。未だ抜かれぬ彼の身。 意識を繋ぎ止めるので、精一杯…で。捲簾の言葉も頭に入らない… 「もう…気が済んだでしょう?…ぬ、ぃて…下さいっ…」 「ああ、お前の答え聞いてからな」 この男は僕の躰を何だと、思っているのやら…。 何処までも傲慢で、子供っぽい男…。そろそろ折れなければ、 自分の身が危うい…。これだから、強引な者は嫌いだ。 「……。僕も…貴方と同じ気持ちです…。捲簾の言う通り、 確かに僕は貴方を避けていました。 嫌な奴になりたくなかったんです。 …捲簾に会わなければ、女人に嫉妬しなくて済む…。 そう考えて…っ…」 語尾は長い間、流した事のなかった涙で打ち消される。 慌てて顔を片手で隠そうとするも、 捲簾の手がその行為を阻止してしまう…。 「……白状すっとよ、お前を見る度に辛くて… そこら辺の奴で間に合わせて、欝憤はらしてた。 だせぇよな…。躰だけ手に入れても満足できねぇなんてよ。 女とねても、天蓬を重ねちまって…」 必死に単語を並べ、己の意思を告げようとする捲簾に 何処か愛らしさを感じ、今度は自分から彼を抱く。この腕で。 「僕達って…意外と不器用なんですね。 あれ程、躰を重ねたのに… 双方の気持ちは何一つ、伝わっていなくて… そうかといって…離れる事も出来ずに…。」 捲簾の指先が、優しく僕の髪に絡まる。 笑みを交えた安らかな時。 「まー…、そうだけどよ…これからは少し、 違うだろ?こーして、両思いになれたし、繋がってられっし?」 一連の御託を冷ややかな目を向けつつ、 聞き届け“一つ”になった状態の壗、 瞼を閉じ彼をこの腕に抱ける喜びをかみ締め睡魔を受け入れる。 翌朝、立てなくなる程、腰に痛みを覚える羽目に なろうとは夢にも思わずに。 その深紅の瞳で…髪で己の心が騒がし、 |
管理人コーナー
随分、遅い更新です。ソフト…。友人の力を借りないと、楽に作業が進まなそうです。5月まで伸びそうな予感。すみません(お辞儀)
しかも、どことなく支離滅裂しているのは気の所為?(爆)
はふぅ。2人の雰囲気を掴むのはまだまだ先かもしれません。では見放さないで下さいねvv(まてや)